苦手分野や以前間違えた問題をやり直す時間が取れない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:論理的)のお母さま


質問

計算は得意なほうですが、ときどき思いがけないうっかりミスをします。模試などでは見直しをする時間がとれないようなので、最初に間違えてしまうと偏差値に響いてしまいます。塾の宿題が大量にあり、こなすのが大変なので、苦手分野や以前間違えた問題をやり直す時間が取れないのが悩みです。本人は宿題が終わらないとほかのことに手をつける気にならないようです。


小泉先生のアドバイス

「今、自分が何をやるべきなのか?」を自覚しないと、効果的な学習が期待できない

「塾の宿題が大量にある」「苦手分野や以前間違えた問題をやり直す時間が取れない」などは、塾の勉強が忙しくなる5年生の終わりごろから続く悩みです。しかし、6年生の9月以降は、「今、自分が何をやるべきなのか?」を自覚しないと、効果的な学習が期待できないことになります。

まず、お子さまの注意点としては、「思いがけないうっかりミス」の再発防止策がなされていないということです。「うっかりミス」は同じような箇所で繰り返すことが多いので、ミスの原因を突き止め、意識することで改善される場合が多いと思います。ただし、改善するまでに時間がかかることもありますから、本番の試験があまり近くならないうちに、対処する時間を今すぐとって改善すべきでしょう。

すぐに行いたいのは、苦手分野の克服に関しても同じです。この時期は志望校の過去問対策を行うことで、志望校の出題傾向とそれに対する自分の弱点教科・分野・単元が明確になってくると思います。よく勉強している生徒であればあるほど、自分の弱点が明確になってくるのですが、なかなかそれらを克服する時間がとれないのも事実でしょう。なぜなら、塾の授業があり、予習があり、復習があり、そして宿題があります。やっていかないと、塾で叱られたり、文句を言われたりすることもあるかもしれません。本当は国語に力を入れなくてはならないのに、算数の宿題で一日が終わってしまっている場合もあるということです。

このような状態が生じる原因はいくつかあります。まず、塾が個別形式でない限りは、クラスの授業は統一のカリキュラムで動いていますから、一人ひとりの生徒のニーズに対応するにも限界があるということです。また、各教科の担当の先生は、自分の教科の成績を上げることを優先しますから、それぞれの生徒の成績を把握して全体を考えながらさじ加減することはなかなか難しいと思います。
あるいは、生徒自身も先生に遠慮するなどして、先生の指導に無理してでも従おうとする場合があります。塾の先生と生徒の信頼関係が強い場合は、その傾向がさらに強くなると思います。しかし、弱点を改善しなければ、得点が上がっていかないのは当然です。この時期は、一日も早く弱点の克服に注力すべきなのです。

以上のようなジレンマを感じるようであれば、模擬試験や過去問演習の得点などの客観的なデータを基に、「今、一番何をすべきか?」をもう一度考えることが必要です。子どもとよく話し合うことはもちろん、必要であれば、塾の先生に相談して弱点補強のために何をすべきか、どのように時間を使ったら良いかを決めるべきでしょう。お子さまの場合は非常に論理的な性格ですから、データに基づいて説明していけば、何を今なすべきかを納得されると思います。

このように、たとえ子どもが学習において問題点を抱えていても、どの勉強を優先するかを決め、それを実行することは子どもだけではできません。ここはやはり保護者のかたにバックアップしていただき、一日も早く、やるべき勉強ができる体制を組み立てることが大切です。
これから12月末までは、ますます何をすべきか迷うと思います。今は、「何をやって」「何を捨てるか」を悩むのが当然な時期なのです。特に「捨てる」という決断は勇気が必要ですから、保護者の支えが大切です。難しい決断を一緒に考え、実行していっていただければと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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