第21回 算数文章題の読み取り方と適性検査(3)
今回は「よくわからない文章題」に出あった場合に、論理的分析的な考察をして過去の学習体験を振り返りながら解く過程をご紹介しましょう。
第19回の【問題2】は以下のような問題でした。
【問題2】小学5年生
18m² の花だんAと、15m² の花だんBがあります。花だんAには2.7kg、花だんBには1.8kgの肥料をまきました。花だんAと花だんBの肥料のまく割合を同じにするには、どちらの花だんに何kgの肥料をまけばよいですか。
この問題で太郎の「わからないところ」は、「花壇Aと花壇Bの肥料のまく割合を同じにする」でした。特に「割合を同じにする」の部分です。
ここで「割合」とは何であったのか、思い出してみましょう。
一般的には、【割合】は比べる量÷もとにする量の答えです。言い替えれば【2つの数量(単位は同じ)を比べる場合に、一方をもとにして(基準量を 1 と定めて)他方が何倍になるかを表した数値】をいいます。割合に単位はつきません。%や割分厘は割合の表し方です。
例えば、6デシリットルは3デシリットルをもとにすると2倍であり、6デシリットルに対する3デシリットルの割合は50%になります。
これに対して【単位量あたりの大きさ】は、【単位が異なる2つの数量の一方を割る数にして、他方がどれくらいの値になるのかを求めるもの】であり、割る数の単位の 1 にあたる数量が求められ、割られる数の単位がつきます。例えば、6kmの距離を3時間で歩く人は、6km÷3時間で時速2km(1時間あたり2km)で歩いたことになります。
【割合】も【単位量あたりの大きさ】も、割る数kmあたりの数値を求める点で共通しています。
さて【問題2】の場合は、同じ単位の数どうしの割り算をして【割合】を求めるのではなく、あくまでも【単位量あたりの大きさ】を比較する問題でした。「割合」の言葉にとらわれると、わけがわからなくなります。「花壇Aと花壇Bの肥料のまく割合を同じにする」とは、「AとBの花壇それぞれにまく肥料を『同じ面積あたり均等に』まけるように」考えなさい、ということです。「肥料のまく割合を同じにする」という表現を「同じ面積あたりにまく肥料の量を同じにする」というところまで読み替えなくてはならないのです。この読み替えは「国語読解」の学習場面では取り扱われません。算数文章題に出てくる特有の「読解」です。私はこの算数特有の読み替えを「算数の言葉に翻訳する」と称しています。この読み替えは、読み取った結果として【算数用語を使用した言葉・数式・グラフ・表・線分図・面積図・絵】などに表されることになります。
上記のように、課題となっている部分を問題に即して具体的に【読み取った場合】は、第20回で示した解答を自信を持って展開できます。
それでは【読み取れなかった場合】はどのように解決するのでしょうか?
それまでの学習体験を紐解いていくことになります。
【問題3】
自動車Aは35リットルのガソリンで420km、自動車Bは40リットルのガソリンで540km走ることができます。ガソリンの使用量のわりに長く走るのは、どちらの自動車ですか。
太郎は教科書レベルの【問題3】は簡単に解けます。【問題2】と【問題3】の類似点と差異を見てみましょう。どちらも単位量あたりの大きさに関する問題であり、「肥料のまく割合」と「使用量のわりに」という「割合・わり」という言葉が使われています。しかし【問題3】は「ガソリン使用量のわりに長く走る」のはどちらかと問うており、「長く走る距離」を比較すればよいことが明瞭です。
太郎は、Aを420÷35=12、Bを540÷40=13.5と計算し、自動車Bが長く走ると答えて正解となっています。計算の結果が小数にはなるものの、きちんと割り切れる数ですし、桁数の大きい数字を小さい数字で割りますから、「単位量あたりの大きさ」の問題を意識しなくても解けてしまいます。
適性検査問題では、この教科書レベルの基本問題は、一部地方の公立中高一貫校で出題される場合もありますが、首都圏や大きな都市の適性検査問題には出題されません。出しても差がつきませんし、あまりにも算数固有の「学力試験問題」とみなされるからです。
【問題2】と【問題4】の類似点と差異の比較、および適性検査問題との関わりは次回に説明しましょう。
【問題4】
350m² の畑から560kgのキャベツがとれました。これと同じ割合でキャベツがとれるとすると、キャベツを2000kgとるには、何m² の畑が必要ですか。