第19回 算数文章題の読み取り方と適性検査(1)
今回からは、算数文章題の読み取り方と適性検査問題の読み取り方の関係を明らかにしていきます。第18回コラムで取り上げた問題は以下の文章題でした。
【問題2】小学5年生
18m² の花だんAと、15m² の花だんBがあります。花だんAには2.7kg、花だんBには1.8kgの肥料をまきました。花だんAと花だんBの肥料のまく割合を同じにするには、どちらの花だんに何kgの肥料をまけばよいですか。
この問題を読んだ子ども(太郎くんとします)が、「わからない」と言ってきました。
私(T)はすぐには説明をしません。
T 「太郎くん、この問題のどこの部分がわからないの? もう一度読んで、何がわかって何がわからないのか先生に教えて」と言います。
太郎くんは読み返して「全部。何を聞いているのかわからない」と答えます。
(このように漠然と答える子どもが増えているのです)
そこで、 T 「この問題文は、いくつの文で書かれているの?」と聞きます。
太郎 「3つ」
T 「それでは、何を求める問題なのかな? 書いてあるとおりに読んでごらん」
太郎 「何kgの肥料をまけばよいですか」
T 「それだけかな?」
太郎 「どちらの花だんに」
T 「そうだね、『どちらの花だん』と聞いているから『こちらの花だんに何kgの肥料をまく』と答えればいいんだね」
「それでは『どちらの花だん』て、何を指しているの?」
太郎 「花だんAと花だんB」
T 「そうだね、『AとBの花だんのどちらに肥料を何kgまけばよいか』と聞いているんだね。他にわかっていることを言ってごらん」
太郎 「18m² の花だんAと、15m² の花だんBがあります」
T 「18m² と15m² の意味を言ってごらん」
太郎 「Aの花だんとBの花だん」
T 「Aの花だんとBの花だんの何?」
太郎 「広さ」
T 「改めて、18m² は?」
太郎 「Aの花だんの広さ」
T 「15m² は?」
太郎 「Bの花だんの広さ」
T 「そうだね。あと、わかることない?」
太郎 「花だんAには2.7kg、花だんBには1.8kgの肥料をまきました」
T 「2.7kgと1.8kgは何ですか?」
太郎 「2.7kgはAにまいた肥料、1.8kgはBにまいた肥料」
T 「肥料の何?」
太郎 「肥料の重さ」
T 「もう一度聞こう、2.7kgって何? 上手にまとめてわかるように言って」
太郎 「2.7kgは花だんAにまいた肥料の重さ」
T 「そうだね、1.8kgは?」
太郎 「花だんBにまいた肥料の重さ」
T 「他に、わかることない?」
太郎 「ない」
T 「それでは、わからないところはどこ? そこを読んでごらん」
太郎 「花だんAと花だんBの肥料のまく割合を同じにするには」
T 「なるほど、きみがわからなかったところは『肥料のまく割合を同じにする』というところだったんだ。なぁ~んだ、先生は何にも教えていないのにきみがわかっているところ、たくさんあったじゃないか」
ここまでくると子どもの顔はずいぶん明るい表情になっています。
算数文章題の読み取る力をつけるには、問題分析の一連の流れを子どもが自力で行えるようにすることです。この流れを体得させないでやみくもに問題量を増やしトレーニングさせても、結局は問題一つひとつの覚え込みに入ります。それまで見たこともない新しいタイプの問題については『習っていないからわからない』と投げ出してしまうことになります。
適性検査問題は、子どもにとって初めて目にする課題が多いものです。『習っていないからわからない』と言わせたら、もうそれで合格から遠ざかってしまいます。
次回は、「わからない部分」をどのように明らかにしていくのかを説明しましょう。