埼玉県立伊奈学園中学校・総合高等学校の進路指導の秘密に迫る!<後編>

首都圏で最初に設立された公立中高一貫校である埼玉県立伊奈学園中学校では今年、第1期生が初めての大学受験に挑みました。
注目されていたその進学結果は、多くの生徒たちの志望を実現させ、生徒や保護者からも高い満足度を得るというすばらしいものとなりました。
ここでは、その高い実績をもたらした同校の、特色ある取り組みや進路指導をご紹介します。
進路指導やキャリア教育についてご紹介した前編に続き、今回は同校の教育プログラムや今後の展望などをお伝えしていきます。


<後編>生徒たちの学びへの意欲を引き出す多彩な教育カリキュラム
志望進路実現をサポートする伊奈学園ならではの取り組み

生徒の個性や才能を伸ばす、多彩な授業スタイル

「生徒一人ひとりの個性や才能を伸ばす教育を行う」こと。それは同校の教育のテーマでもあります。そのため、伊奈学園中学校では高校に進学した際、また大学進学や就職までをも視野に入れた、さまざまな授業スタイルが用意されています。なかでも国語と英語を融合させた「表現」、社会と英語の「国際」、数学と理科の「科学」という3つの融合授業は同校の特色あるカリキュラムのひとつです。
生徒たちはこの中から1つを選択し、各講座では教科横断的な学習をしながら、探究心や知的好奇心を高める学習を行っていきます。
「意識してやっているのは表現力やプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力の育成です。将来、どういう進路を選択するにせよ、社会のリーダーとなるには欠かせない能力ですからね」(坂井修義教頭先生)
また、科学者や救命救急士、研究職員、伝統芸能の継承者など、各界の第一線で活躍されているかたを招き、年に4回ほど特別講義も行われています。これらは学習への意欲を高めると共に、世界観を広げ、職業理解を深めるのに役立っているようです。
さらに、学力の定着を図るためのさまざまな補習講座も設けられています。
総合選択制を取り入れている高校では、大学のように必修科目にプラスして自分で好きな講座を選択でき、900通り以上もの時間割が組めるという多彩なカリキュラム構成が特徴です。これもまた、将来を見越した伊奈学園ならではの取り組みのひとつです。
以下で詳しくご説明します。


中学での取り組み
─さまざまな補習で学力定着をサポート─

中学では、英語は1クラスを2つに分け、数学は3年で習熟度別の2クラス3展開で授業を行い、先取り学習も行われています。ですが、ただ習熟度別に行って終わりではなく、個々の生徒の学力をフォローするために各種補習も行われているそうです。
そのひとつが毎週水曜日の放課後に設けられている「たゆまぬ勉学コーナー」。「相談コーナー」とも呼ばれ、この日は会議や職員集会をせず、各教科の先生がたがこのスペースに控え、生徒が各教科担当に気軽に相談できる日として積極的に活用されています。
また、夏休み中に行われる特別講習に加え、3年生になると隔週土曜日に「サタデーセミナー」という補習も行われます。これは学力の定着を図るために行っているもので、高校進学レベルの学力がしっかり身につくように指導されているそうです。
さらに高校受験がなく、中だるみしやすい中高一貫対策として、3年生の3学期には卒業試験を行い、その結果により高校進学前の春休み中に特別補習も行われます。このような多彩な補習授業に加え、さらに各種検定を積極的に受けるなど、さまざまな指導がなされているそうです。


中学での取り組み
─勉強合宿やオーストラリア研修─

英語学習に力を入れている同校では、NHKラジオ講座『基礎英語』の聴取を義務づけ、毎時行われる「音読リレー」の材料とするなど授業にも積極的に取り入れています。その英語力をさらに向上させ、学ぶための意欲増進に役立っているのがオーストラリア研修です。これは希望者の中で選抜を行い、13日間ホームステイをしながら語学研修を行うというもので、中学では30人が参加します。高校ではそれをさらに進化させた形で3週間もの語学留学が行われています。
また、中学2・3年時には2泊3日で勉強合宿も行われています。
「3日間で20時間の勉強をめざし、問題テキストをやり終えるなどの目標を掲げて行いました。それをきっかけに勉強のコツをつかむ生徒も多く、実りのある合宿になっていると思います」(坂井教頭先生)


高校での取り組み
─将来の進路に直結した総合選択制システム─

伊奈学園中学校の設置母体校である伊奈学園総合高等学校は、全国で初めての普通科・男女共学の総合選択制高等学校として創立されました。高等学校では人文系や理数系をはじめ、芸術系や体育系、語学系など7つの学系から、生徒が自分の能力・適性、興味・関心、進路希望などに応じていずれかの学系を選択し、その中でさらに約190種類もの選択科目(講座)から自ら学びたい教科を選択することができます。そのため、同校では専門性が高く将来に直結した勉強や指導が行えるのです。これは同校の大きな特色といえます。
この全国でも珍しいカリキュラム構成は、中高一貫校となっても受け継がれ、中学から進学した内進生も一定の必修科目に加え、これらの専門分野の講座を受講することができます。
それぞれの講座では専門講師や特別講師が授業を担当し、専門性の高い授業が行われています。このように将来の進路志望に直結した学習をすることができることも、今回の高い進学実績につながっているのだと思われます。
約190講座から内進生が選択できるものをいくつか、下記にご紹介します。

自由選択科目(抜粋)
国語科目「現代文a・b」「古典講読A・B」「現代文基礎演習」「古典演習」「近代の文学」「国語表現 I 」「日本語」など
社会科目「世界史B」「日本史A・B」「地理A・B」「政治・経済」「世界文化史」「日本文化史」「国際政治」「ビジネス論」など
数学科目「数学 II a・b」「数学 III 」「数学A・B・C」「総合数学文系2年・3年」「総合数学理系2年・3年」など
理科科目「物理 I ・ II 」「化学 II 」「生物 I a・b」「生物 II 」「地学 I・II 」「総合科学」「理数物理」「理数化学」「理数生物」
芸術科目「音楽」─器楽、音楽理論、ソルフェージュなど
「美術」「工芸」─金工、木工、陶芸、ビジュアルデザイン、図法・製図など
「書道」─書道史、篆刻(てんこく)・刻字、仮名の書、漢字の書など
語学科目「総合英語」「英語表現」「英語理解A・B」「ドイツ語 I・II・III 」「ドイツ語表現」「フランス語 I・II・III 」「フランス語表現」「中国語 I・II・III 」「中国語表現」「オーラル・コミュニケーション I・II 」「ライティング」など
専門科目「体育」─体育理論、スポーツ、ダンス、レクリエーション、野外活動
「家庭」─栄養、調理、服飾文化、家庭看護、児童文化など
「工業」─機械設計、電気基礎、自動車工学、自動車整備
「商業」─簿記、会計、ビジネス基礎、情報処理、法律入門など
「農業」─野菜・草花
教養科目「彩の国アカデミー」─教養人文、教養理数、教養語学、教養芸術など

プロフィール



「進研ゼミ小学講座」は2020年新課程に対応して、リニューアル。基礎から応用までの学力向上はもちろん、自ら学ぶ姿勢を身につける。
学んだ知識を使って、自分なりの答えを導き出す。そんな体験を繰り返すことで、「自ら考え表現する力」を育んでいきます。

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