【回答:若泉 敏】受検するかどうか・志望校選び<その1>

「中学受検は親子の受検」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受検準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

公立中高一貫校の良い点・悪い点は?

公立中高一貫校の学費などの詳細を知る方法は?

千葉県立千葉中学校について知りたいのですが

公立中高一貫校の良い点・悪い点は?

自宅から通える距離に公立中高一貫校があるのですが、「中学から入学した子よりも高校から入学した子のほうがレベルが高いから、高校を受験したほうがいい」というようなことを聞きました。
初歩的な質問ですが、中高一貫校の良い点、悪い点は何でしょうか。
6年間に中だるみの心配はあるが、それ以上にメリットが大きい

公立中高一貫校の良い点と悪い点は、次のようなところにあるといわれています。

良い点は、
(1)高校受験をしないのでゆとりある生活が送れる。ただし東京都の一貫校はどの学校も、ゆとりある生活とはほど遠い、忙しい学校生活のようです。
一般の公立中学校に進学した場合には、高校受験のために中学3年生の1月から3月まではほぼ学校の授業はストップをして、高校受験のための勉強に入るわけですが、公立中高一貫校に進学した場合には、その3か月間高校で学習する内容を先取りしたり、あるいは高校と関連する内容で中学校の内容を深める学習をしたりします。高校受験生が学習面でブランクとなる期間を、実際の学習ができるという点でのゆとりはあるものの、非常に盛りだくさんの学習や生活課題で埋め尽くされています。

(2)公立中高一貫校には学校教育法の特例で中学校と高校の学習課程を相互に入れ替えたり、整理整頓(せいとん)をして効率良く学べるという利点があります。この点は私立中高一貫校と同じようなカリキュラムを組むことができますから、大学進学に向けて有利になります。
また現指導要領では特に数学の習得において、一般公立中学校では平易かつゆったりと学習が進むのに対して、進学系の高校に進むと、急に難しい内容を急ぎ足で消化するため予習復習に追われる生活になりますし、部活との両立が難しくなりますので、理系進学の面で不利といえるでしょう。

(3)6年間一貫の教育の中で、個性に応じた教育が施されますし、中学生の段階から高校生の力量のある活動ぶりをじかに学んで、生かしていける、これも利点だといわれています。

一方、悪い点は、中学から入学した場合に6年間という長い期間の途中で中だるみが生じるとか、生活や学力面で問題があった生徒が解消されないで6年間引きずるなどの課題も指摘されています。

公立中高一貫校の学費などの詳細を知る方法は?

公立中高一貫校の受検を考えていますが、いま一つ詳しい学費、授業料などがわかりません。中学と高校ではどうなのか、高校(後期)の入学金や受検料などなど…詳しく知る方法はありませんか?
直接学校に問い合わせするのが、いちばん確実

中学と高校の学費、授業料、その他諸経費の詳細を知るためには、志望する公立中高一貫校に直接問い合わせることが確実です。
電話をかける場合には、問い合わせたい事柄や情報について、あらかじめ箇条書きに書き出しておきます。電話で答えてもらう範囲で十分な場合はそれでよいのですが、詳細にわたり情報が欲しい場合は、諸費用の明細を郵送してもらう方法があります。
この場合には、まず学校に手順を確認しますが、基本的には、資料請求の内容を便せんに書き、A4判の書類が入る大きめの封筒を返信用封筒として準備し、返送先を記入し切手をはって、二つ折りにして同封したうえで、志望校に郵送しましょう。返送用切手の料金は志望校に電話で聞いておきます。
雑誌や塾が紹介する資料は年度が古いものであったり、変更されていたりすることもありますから、正確な情報は直接学校に問い合わせることが必要です。

千葉県立千葉中学校について知りたいのですが

千葉県柏市に住んでいます。私自身の体験から、中学受験を子どもにもさせてあげたいと考えていました。ところが、私学の学費のことなど考えると受験をちゅうちょしていましたが、公立中高一貫校という選択肢があることを知り、リサーチし始めています。
柏からですと県立千葉中学が、受検可能な学校になると思います。どういう学校なのか、まだまだ中学部の情報は少ないかと思うのですが、大学進学などの詳しい状況も教えていただけますでしょうか?
進学実績は、学校のホームページで確認はしていますが、どんな指導があり、高校時代に予備校に通う場合の話など、もしおわかりになる先生がいらっしゃればと、思っております。よろしくお願いします。
県立千葉中学校は、日本のリーダーとなる人材を育成する全人教育を行う学校。難関大学合格を目標にするなら、私学の進学校を選択したほうがいい

県立千葉中学は、東京大学をはじめとした一流大学合格実績を上げるために開設した学校ではありません。結果として進学実績が出たとしても、教員たちは生徒一人ひとりが、それぞれの進路においてリーダーになることを目標に置き、日本にとどまることなく世界を舞台にして活躍する人材育成を考えている学校です。
 
次代を担うリーダーを中学1年から6年間じっくり育てたい、一人ひとりの個性を見てその能力を最大限に引き出したい、と考えています。日本のリーダーを千葉から出すために、適性検査では「磨けば光る素質」を見ようとしています。暗記した知識が豊富だから解けるというものでは全くありません。答えは一つではなく、どのような考え方をしたかを重点的に見る問題になっています。

学校の指導や生活の全体のコンセプトは「学びの協同」です。学校全体が、教師同士も含めてお互いに知恵を出し合いながら、協同的に学習したり活動したりし、そのあとは必ず「振り返り」「どんなことを学んだのか」を自分一人で考えて書かせるのです。そして教員は教科間の交流を図り、教科を超えた「スパイラル教育」をする、また生徒をより理解するために、「生徒はどう学んでいるか」教科を超えた校内研究をします。中学校では、かなり手厚い指導が行われているようです。
これまでの千葉高校では、進路の選択に関して「本人が進路を考えていく」ように、やや突き放した対応をしてきましたが、2007年度から積極的に進路情報を伝えたり、外部の大学教授などを招いて模擬授業を行ったりと、物心両面で進学意欲の向上を図ろうとしています。
ただし私立高校と異なり、一流大学合格一直線の指導ではなく、大学に進学したあとも伸びていく教養教育・全人教育を施しています。
親の関心の中心が「大学進学の状況」や「高校時代に予備校に通う」ことにあるのなら、県立千葉中学校を進学先に考えるのはやめて、渋谷教育学園幕張中や市川中、東邦大学付属東邦中などの私立進学校を念頭に置いて、学費を支払える経済力があるかどうかをご主人と相談して準備したほうがいいでしょう。

プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

子育て・教育Q&A