【回答:若泉 敏】受検するかどうか・志望校選び<その2>

「中学受検は親子の受検」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受検準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

通学の安全な公立通学の安全な公立中高一貫校に行かせたいが、友達と別れたくない子ども

公立中高一貫校の進学実績は?

通学の安全な公立通学の安全な公立中高一貫校に行かせたいが、友達と別れたくない子ども

現在、小学校3年生です。地元の公立中学に行かせたくないので、通学に便利な場所に開校予定の公立中高一貫校に行かせたいと考えています。地元の公立中学に行かせたくない理由は、通学路が危険だからです。自転車で約20分かかり、裏道は川沿いの暗い人通りのない道で、熊が出る可能性もあります。表の通りは、途中まで狭い割に交通量が多く、学校近くは狭くて林に囲まれた人も車も人家も少ない道です。
バス一本で通える公立中高一貫校に行かせたいというのは、動機が不純でしょうか。本人は、地元中学は通学に不安はあるが、友達とは別れたくないと思っているようです。
小学校時代の友達が、人生に影響を与える友達になる可能性は少ない。通学条件も立派な志望動機。親の直感を信じて、公立中高一貫校の受検を後押ししよう

結論から申し上げましょう。子どもを説得し、公立中高一貫校受検に向けて歩み出すべきです。公立中高一貫校と地域の公立中学校と、どちらを選ぶかの判断は、狭い範囲の社会しか知らない、物事を好き嫌いや快不快で決めがちな子どもにはできません。

小学3年生は、それまでの家族とご近所だけを認知する世界から一歩外に出て、地域やその他の身近なかかわりをもつ社会を知る成長過程にあります。
そして友達と群れ、遊び、学ぶ楽しさを知り始めます。この時期、友達は自分の生活でいちばん大切なものですから「友達と別れたくない」と言うのは当たり前です。
しかし、ご自身を振り返ってください。小学校時代の友達で、今でも自分に影響を与え続けている人は何人いるでしょう。たいがいの人は、中高時代ないし大学生の頃に出会った人が親友になっているのではないでしょうか。
質問者の「バス一本で通える公立中高一貫校に行かせたい」という動機は、通学途中の安全を考えているわけですから、不純どころか親の判断基準として妥当です。そして、もっと対象の公立中高一貫校の中身を調査しましょう。学校の理念や教育目標、育てたい生徒像を知り、この学校でわが子を学ばせたいと願うことが第一です。
小学校での友達は、懐かしい友達ではあっても、自分の人生に影響を与える友達になることは少ないものです。友達が大事だと思っている子どもにそんなことを説明する必要はありませんが、親はそのことを踏まえて、もっとすばらしい一生の友人に出会えるチャンスを説くべきでしょう。

公立中高一貫校の進学実績は?

公立中高一貫校は開校してまだ数年しかたっていない学校が多いですが、大学進学実績は期待できるのでしょうか?
すでに実績を出している公立中高一貫校もあります。進学重点校の進学実績は、私立難関校の実績に迫っていく可能性が大きい

公立中高一貫校は、2002年頃から全国に広まって開設されるようになりました。2008年の段階で大学進学実績が出ている学校が数校あります。

2002年、岡山操山中学校が県立操山高校の併設型中学校として開校しました。今年の進学実績では、東大進学者が4名出ています。もっと古い例では、1994年開設の宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校、この学校は日本で最初につくられた公立中高一貫校です。全寮制で1学年1クラスのみ40名の学校です。たった40名しかいないその学校では約半数が国公立大学に進学しているという実績を上げています。

東京都内に開設された最初の学校は、都立白鴎高校附属中学校です。2008年4月現在、高校1年に進学しています。都立(区立)中高一貫校はまだ進学実績を出していませんが、学校のカリキュラムおよび学習進度、内容のレベルなどから予想される進学実績は、私立中高一貫校の難関校の実績に迫っていく可能性があります。

小石川中等教育学校、両国高等学校附属中学校、武蔵高等学校附属中学校などは、都立進学重点校の進学実績相当または、それ以上の結果が予想されます。

一般の公立中学・高校と違って、公立中高一貫校のカリキュラムはかなり速い進度であったり高レベルであったりしますから、入学後、学力向上のために相当な努力が必要であることを認識して受検してください。

※2008年10月現在の情報に基づいた回答です

プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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