【回答:若泉 敏】適性検査・受検対策<その4>
「中学受検は親子の受検」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受検準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
子どもが自分で決めた受検。やめたいと言いだしたが、やり抜いてほしい…
理解したと思うとそれ以上深く調べたりしない息子。どんな受検対策をすればいい?
公立中高一貫校の適性検査を解くスピードをつけるには?
子どもが自分で決めた受検。やめたいと言いだしたが、やり抜いてほしい…
Q | 今まで、公立中高一貫校を受検する意識をもっていた娘が、クラス内に受検を考える友達が少ないためか、「受検したくない」と言いだしています。それだけが、原因ではないようにも思えます。自己学習が負担なのかとも思います。 娘にしたら、難しくなる勉強をやらなくてはいけないことや、もっと遊びたいのかもしれません。親としては今まで、一つのことをやり抜いたことがないため、自分で決めた受検に対してはそのまま貫いてほしいところなのですが…どうやって対応していけばよいか悩んでおります。よいアドバイスがあればと思い一筆させていただきました。 |
A | 親としての考えを明らかにしてから、お子さんがなぜ公立中高一貫校を受検したいと言いだしたのか、その動機から振り返り、問題点を明確につかみとることから始めてみよう 子どもが「自分で決めた受検」と書いてありますが、お子さまはどのような経緯で受検を決めたのでしょうか。この機会に、改めて公立中高一貫校の受検を決めた動機を振り返えってみましょう。ただし、お子さまの考えを聞く前に親がしておくことがあります。 (1) 公立中高一貫校とは何なのか。 (2) 一般の公立中学から高校へ進学するのと何が違うのか。 (3) どのような入学者選抜が行われるのか。 (4) 入学後、どのような生活が待っているのか。 などをあらかじめ親が調べておき、子どもに公立中高一貫校を受検させるか否か、父と母が共にどこまでかかわれるのか、ということの意思統一をしておかなければいけません。 お子さまが現在も受検する意思をもっているならば、「受検したくない」と言った原因をもっと明確につかみましょう。そして、その原因を取り除くことができるように、親が解決策を示し、合格に向けて何をどうすべきか説明するのです。そのうえで、改めて志望校の過去問を詳しく調べて、子どもの学習課題をはっきりさせましょう。 お子さまが受検に向けて進む気持ちがない場合、親がどうしても受検させたいなら、子どもを説得しなければいけません。そのうえで学習を子どもに任せておくのではなく、適性検査にかなうあらゆる「学習」に親子が共同で取り組んでください。 「難しい勉強をやるより、もっと遊びたい」と子どもが言った場合は、「遊びもやれ、勉強もせよ、それがキミのやるべきことだ」と答えてください。そして目的を達成するために、遊びと勉強のバランスを考えることです。 |
理解したと思うと、それ以上深く調べたりしない息子。どんな受検対策をすればいい?
Q | 2009年春開校予定の公立中高一貫校を受検する予定の親です。私たちのいる県には公立中高一貫校が現在1校しかなく、情報が不足しています。学校の先生にも相談しましたが、どのような対策をしておけばよいのか全くわかりません。 現在5年生の息子は、どちらかというと理数系が得意なのですが、興味のある小説や伝記など本も読みます。ただ、一度理解したと自分で思い込むとそれ以上を深く調べるとか、関連ある分野にふれてみるという傾向は少なく、体系的なものの理解が十分ではないように思います。そのような息子にどんな準備をさせればよいのでしょうか? |
A | 新設校も設置主体が同じなら、傾向も似ていることが多いので、先行している学校の過去問を徹底的に分析すること。お子さまを伸ばすには、親の姿勢が大事。子どもをよく見て、課題があれば解決策を示し導くことが必要 県立の中高一貫校は、設置主体が同じ県教育委員会ですから、適性検査も傾向のよく似た問題になることが多いものです。したがって対策の第一は、先行している学校の過去問を徹底的に分析することから始めます。 もし質問者のかたが茨城県在住であれば、並木中等教育学校が先行校になります。並木中の検査問題は、緻密(ちみつ)な論理思考と慎重かつ大胆な判断力、的確でスピーディーな処理能力が問われる、本格的な適性検査です。小学校の各教科の学習はもちろん、「総合的な学習の時間」や行事、その他の活動にも、熱心に取り組んでいく必要があります。 ところで、準備のさせ方についてですが、文面からは、お子さまが自分で取り組んでいる様子を、親のほうでハラハラ心配している傾向が読み取れます。問題はお子さまではなく、親御さんの姿勢にあるようです。親は子どもをもっとよく見つめて、課題を発見し解決策を示すべきです。 お子さまは自分で理解したと思うと、それ以上深く追究したり関連することを調べたりする必要性を感じていない。または探る方法を知らないのかもしれません。 ここは親の出番です。まず、新設校を受検する意志を親子で確認し、合格のためには何をすべきか、お子さまと話し合って決めていきましょう。方法を知らない子どもや必要性を感じない子どもには、親がそれを伝え導くことが必要です。そうして成功体験を積み上げていく中で、子どもは一人で動き出すものです。 なお、具体的な対策方法として、拙書『公立中高一貫校 合格への最短ルール 適性検査で問われる「これからの学力」』(WAVE出版)がありますので、ご活用ください。 ※2009年3月現在の情報に基づいた回答です。 |
公立中高一貫校の適性検査を解くスピードをつけるには?
Q | 公立中高一貫校を受検予定の6年生の男子です。10月までスポーツクラブに所属しており、進研ゼミの「作文表現力講座 公立中高一貫校受検対策コース」は4月から受講しましたが、本格的に勉強を始めたのは秋からです。模試も2回受けましたが時間が足りませんでした。内容はわからないわけではないようです。問題を解くスピードをつけるには、どのような方法が効率的ですか。 |
A | 時間が足りなくなる場合には、対処法としてすべての問題を解ききろうとせず、できる問題をていねいに解くことで得点を稼ごう 適性検査問題を時間内に解ききるスピードをつけるための要件は3つあります。 (1) 「すらすら読み」をして要旨や主題を素早くつかむこと。 (2) 問いの文や資料を「こま切れ読み」して条件を的確に拾い上げること。 (3) 論理的思考をして課題解決の筋道を見つけること。 いずれも親子のかかわり方と読書の質量や日常の学習の積み重ねが問われますから、一朝一夕にできるものではありません。 一つひとつの問題では、例えばけた数の大きい整数の割り算が正確に素早くできるかということと、計算力のスピードが必要になります。そして余白を活用して、計算や条件をどのように整理して書いていくかによって、解答につながる処理速度も変わります。また資料のどこに着目して何を読み取るのか、複数の資料から比較的容易に解答を導き出せる資料を見つけ出すなど、判断力、考察力、記述力の各点についてスピードアップも大事です。 時間が足りなくなることに対しての対処法としては、すべての問題を解ききろうとしないことです。 時間がかかりそうな問題や自分の手に負えない難しい問題は思いきり捨てて、そのかわり、解けそうな問題は丁寧に解答して得点を稼ぐことです。 今からできる適性検査対策法をこちらに記載していますから、参考になさって、試験直前まで親子で一緒に取り組んでください。 ※「すらすら読み」や「こま切れ読み」については、拙著「公立中高一貫校 合格への最短ルール 適性検査で問われる『これからの学力』」(WAVE出版)をご覧ください。 |