本を読むことが嫌い[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小4男子のお母さま

質問
漢字が覚えられません。学校のテストでも毎回30~40点です。書き取りをしても覚えられないから、書き取りをすることすら嫌がります。宿題とテストで間違えた漢字の書き取り以外は、自分からやろうとはしません。本を読むことも嫌いです。このままでは読解力も付きそうにないので心配です。良い方法はないでしょうか?

小泉先生のアドバイス
漫画からゲームからと、読書習慣への入口はいくつもあります。

読書の習慣があるお子さまは、高度な読解力や思考力が身に付いている場合が多いようです。そして、成績も国語だけではなく、他の科目も良いことが多いと思います。やはり国語力、あるいは読解力は学習の基礎であり、ぜひとも低学年から中学年にかけて付けておきたい力であると思います。しかし、なかなか読書の習慣が身に付かない子どもがいることも確かです。

さて、「読書習慣を付けるためにはどうしたら良いか」、というご質問をよく受けます。そんな場合は、初めに「読書習慣を付けるために、してはいけないこと」からお話しします。たとえば、
(1) 本を読むことを無理強いしてはいけない。
(2) 興味のない内容の本を無理に押し付けてはいけない。
(3) 本を読んだあとに無理に感想文を書かせてはいけない。
などです。いずれも「無理」という言葉が入っていますが、これが入ると、本当に本を読みたくなくなります。

たとえば、こんな例があります。お兄さんががんばって、第1志望の難関中学校に見事合格しました。ご両親はもちろん親せき一同おおいに喜び、伯父さんはお祝いに文学全集を買ってくれました。全50冊で、世界の名作が揃っている堂々たるものです。
結果はどうなったかと言うと、お兄さんは大の読書嫌いになりました。一冊がかなり厚いために、50冊ともなると大きな本棚にぎっしり詰まっています。伯父さんがせっかく買ってくれたということで、お母さんも「早く読みなさい」ということを何度も言ったと思います。しかしそうなると逆に、プレッシャーがかかり、「時間がない」「読みたくない」ということになってしまうのです。
哀れ50冊の文学全集は、本棚の肥やしになったのでしょうか? いいえ、そうでもありません。実は弟が、2年ほどですべて読破してしまったとのことです。なぜか? 「読みなさい」という圧力がないため、非常に気楽だったということがあるでしょう。もちろん読書後の感想文もありません。また、いろいろなジャンルの作品が揃っているので、おもしろそうなものから読めたと思います。
このような例は、案外多くのご家庭で起きているのではないでしょうか? 読書は本当に楽しいものです。読書の世界に一歩踏み込んで行けば、その魅力にきっと気が付くと思います。

さて、今度は「読書習慣を付けるためにはどうしたら良いか」のお話をします。たとえば、
(1) 読書の習慣を家庭に持ち込む。
(2) お子さんが読みそうな本を身近に置いておく。
(3) 興味のある内容から入っていく。
などでしょう。

「読書の習慣を持ち込む」とは、ご両親やお兄さん(またはお姉さん)に読書の習慣があると、お子さまや弟(または妹)に読書の習慣が付きやすいということです。やはり環境は非常に大切だと思います。
また、「本を身近に置いておく」とは、先に紹介した「文学全集」が良い例だと思います。「ちっとも読まないから買い与えるのは無駄」と思ってしまいがちですが、手近になければ読み始めることはできません。何冊か、読みそうなものを買い与え、読み始めるのを待つことも一つの方法です。
さらに、「興味のある内容から入っていく」ことも大切です。たとえば本が嫌いでも、マンガやゲームなら好きな子どもはいます。そんな場合には、好きなマンガやゲームに関連した本を選んで読ませるのも方法です。それらの本はおそらく、絵が多く、お母さんがイメージしている名作とはかけ離れているかもしれません。しかし文字があれば当然読む習慣が付きます。そして興味があれば、読み続けるでしょう。内容は、徐々に高度化していけば良いのです。漫画からゲームからと、読書習慣への入口はいくつもあります。その子にあった入口を探してあげると、案外かんたんに読書習慣は身に付くものだと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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