早く終わったことを誇示したいのか?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小5男子のお母さま

質問
簡単な計算の間違いをします。文章題から正しい計算式をたてることはできますが、掛け算や足し算での思い込みによる間違いをします。空欄に筆算を書くように話していますが、早く終わったことを誇示したいのか、しないことが多いです。宿題のプリントも見直しているはずですが、親がチェックして間違いを指摘すると直す感じです。

小泉先生のアドバイス
筆算をするように、最初は自宅で見ていてあげてください

子どもでも大人でも、人にはそれぞれだいじに思っていることがあります。他の人から見ると、「なんでそんなこと?」と思えることも、当人にとってはとてもだいじなのです。ですから、何回注意されてもなかなか直そうとしません。それを直すことで、より良い結果が出ると言われてもです。
たとえば、国語で長文の記述問題には絶対に手を付けない子どもがいます。短い記述問題ならば十分に書けるのですが、長文になると少しも書きません。書けば1点でも2点でももらえるかもしれないと説得しても言うことを聞きません。あるいは、問題文を読む時に大切な箇所に線を引きながら読みなさいと指導しても、やろうとしない子どももいます。どんなところに線を引くかを教え、最初は間違えてもよいからと条件を付けてもダメなのです。
そして今回の質問者の子どもは、算数で空欄に筆算を書くように話してもしないことが多いとのこと。これらの原因は、おそらく子どもの自尊心、つまりプライドのせいだと思います。

まだ大人になっていない、小さな子どもにもプライドがあります。子どもは大人より理論的な行動をとらないことが多く、プライドのほうを優先する場合が多いかもしれません。しかもこの場合のプライドとは、≪恥をかきたくない≫とか、≪狭い意味での自尊心や誇り≫というものです。今恥をかいても、実力が上がれば良いとか、より高い点数をとれば良いとは考えないのです。
先ほど例にあげた長文の記述問題に手を出さない、あるいは問題文に線を引いて読まない子どもは、「恥ずかしいから」という理由だと考えます。すなわち、ヘタな文を書いたり、変なところに線を引いたりして笑われたくないという思いから、それらを行うことを拒否するのです。またご質問者のお子さまの場合は、ご指摘のとおり、早く終わったことを誇りたいのでしょう。

このような子どもに対しては、コミュニケーションを十分にとり、何が恥ずかしいのか、あるいは何を誇りにすべきかを理解させると良いでしょう。もちろん言葉だけで、「問題文の変なところに線を引いても大丈夫」と言っても、なかなか実行しないとは思います。おそらく塾や学校など友達の前ではやれないでしょう。
まずは、ご自宅での学習からスタートしてください。もちろんそこでは、仮に妙なところに線を引いたとしても決して笑わずに、ていねいに誤りを指摘してあげることです。
そしてある程度子どもに自信が付けば、今度は他の友達がいるところでも堂々と問題文に線を引き、長文の記述問題にも手を付けるようになると思います。

これは筆算の場合でも同じで、筆算をするように、最初は自宅で見ていてあげてください。しぶしぶかもしれませんが、そばで見ていれば筆算をすると思います。しばらくして慣れてくれば、筆算でも速く計算できるようになってきます。そうなればしめたもので、おそらく学校や塾でもきちんと計算するようになると思います。
ここまでくれば、もう傍にいて見ている必要はありません。算数では計算力は非常に重要な基礎力ですから、これだけの労力をかけても、きちんと計算できるようにする価値はあると思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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