物事を簡潔に説明することが苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子(性格:神経質なタイプ)のお母さま


質問

物事を簡潔に説明することが苦手で、どうしても長い文章で説明しようとします。言っていることは間違ってはいないのですが、どうしたらもっとわかりやすく説明することができるのでしょうか。本は大好きで、読み応えのあるミステリーばかり読んでいますが、しっかりと理解できています。


小泉先生のアドバイス

今、何を説明していて、本当は何を話してほしいかを指摘する。

説明が長い子どもは、何をどのように説明しようとしているのでしょうか。たしかに、まったく関係ない話ではないようですが、なかなかいちばん説明してほしいポイントまで進みません。

よくあるケースとしては、理由を延々と話していることが多いようです。きっちりと話さないと自分のイイタイコトが伝わらないと思えてしまうのかもしれません。性格的に神経質なタイプの子どもに多いようです。

逆に、大ざっぱなタイプの子どもは、言うべきことをズバリと言うのが得意なことが少なくないようです。本質をつかむのが上手なのかもしれません。これは性格的なものですから、どちらがよいというものではありません。国語力を付けるには、本質をズバリつかむ力も必要ですし、細かく読み込んだり考えたりすることも大切だからです。

さて、お子さまへの声かけですが、説明しているポイントがズレているなと感じたら、今、何を説明していて、本当は何を話してほしいかを指摘してあげたらいかがでしょうか?

たとえば、「ボク(Aくん)はひそかにBさんに好意を持っていたが、実はBさんにはCくんという互いに引かれ合っている男の子がいて、しかもAくんとCくんは仲良し。」という物語を読んだとします。そして、「『CくんとBさんの気持ちに気が付いたボク(Aくん)は、心の中に黒いかたまりがわいてきた』と本文にありますが、さて、この『黒いかたまり』とは何か?」という問いがあったとしましょう。答えは「嫉妬」、もう少しやわらかい言葉で言うなら「2人の仲をうらやむ気持ち」になります。

ところが、神経質なお子さまがそれらを正確に説明しようとするあまり、「Bさんはかわいくて、活発で……」とか「Cくんは勉強ができるし、スポーツマンで……」などと説明を始めたとします。そんな時は、「それはボクがBさんを好きな理由」とか、「それはクラスの女の子にCくんが人気のある理由」などと指摘してあげるのです。さらに、「説明してほしいのは『心の中のかたまりが何を意味するか』ということ」などと、少しずつヒントを出してあげましょう。もちろん答えそのものをズバリと言ってはダメです。

このような経験をくり返すと、「問われていることは何か」「何をどのように答えることが望ましいか」がだんだんわかってくると思います。また、可能であれば「嫉妬」のような熟語で答えられるようになるとよいので、そこまでの語彙(ごい)力も少しずつ付けていきましょう。たとえば、「うらやましく思う気持ち」とお子さまが答えられたら、「そうね。難しく表現すると『嫉妬』というんだよ」という具合に、語彙を増やしてあげるのです。

このように、問われていることは何なのか? 今答えたことは問われているものなのか? もしそうでなければ、何を答えたのか?などと考えさせたり、指摘してあげたりすることをくり返し行えば、本が大好きなお子さまは簡潔かつ適切な答えが可能になっていくと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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