「説明文」で特にしたほうが良いこと[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子のお母さま


質問

読解問題では、特に「説明文」が苦手なようです。言葉遣いも大人に対しての文章が多く、言葉が難しい文が多いので理解しにくいようです。「説明文」で特にしたほうが良いことなどがありましたらお聞きしたいです。選択肢についても迷うことが多いようです。


小泉先生のアドバイス

三つの問題点をクリアすることで初めて達成できます

説明文あるいは論説文を読む時、中学受験生は克服しなければならない三つの問題点を抱えます。一つ目は、問題文に難しい漢字や抽象的な熟語が出てくるという点。二つ目は、問題文が「何の話かわかりづらい」という点。そして三つ目は、読み手に問題文の話題に関する知識が不足しているという点です。

一つ目の問題の解決方法は、やはり漢字や熟語の練習に時間を費やすということでしょう。また、慣用句やことわざなどに関する知識も必要であり、時間もそれなりにかかりますから、低学年のうちからコツコツと勉強することをおすすめします。

次の問題点ですが、文章中に読めない漢字が特になくても「何の話かわかりづらい」ということは起こり得ます。問題文を漫然と読んでしまうことで、文章を読み終えても結局何のことが書いてあったか明確に答えられないのです。たとえば、次の文をご覧ください。

【例文】二人でも百人でもできますが、遅れてはいけません。鉛筆や紙、時にはハンマーやくぎを使い、二種類、三種類、場合によっては四種類で行います。子どもから大人まで楽しめ、これをすることで、さっぱりした気持ちでケーキを食べたりお風呂に入ったりできるようです。

何について書かれた文章か、おわかりになりますか? この文章では「何の話」であるかをわざと隠していますから、≪勘≫の鋭いかたでないと、内容を推測しづらいのではないかと思います。でも、「ジャンケン」についての話だと言われれば、なるほどと思われることでしょう。
たとえば、二つのグループに分ける時に行う「グー・パージャンケン」なら、たとえ100人でも同時に行えます。ただし、遅れて出すのは(「遅出し」は)ご法度です。子どもから大人まで楽しめ、ケーキを配分する時や嫌いなお風呂に入る順番を決める時でも、ジャンケンならもめることも少ないでしょう。
このように「何の話」であるかを隠されると、まるでクイズを出題されたように感じると思います。そして、中学受験生が難しい説明文や論説文を読む時に感じる不安は、まさにこのようなものであると想像します。

「何の話」であるかをとらえる方法としては、「問題文の最初のほうを特に熟読する」「対立関係に注目する」というところでしょう。
「話題の中心」は問題文の最初のほうに述べられていることが多いので、問題文の10行目くらいまで読んで「何の話」であるかがわからなければ、もう一度最初から読むという姿勢は必要です。
また、評論文では「話題の中心」は≪対比されて論じられる≫ことが多いので、対立している事柄に注目することで「話題の中心」を見つけられる場合が多いということです。

さて、三つ目の問題点は、「文章の内容に関する知識」が不足している場合に生じます。たとえば、「ジャンケン」を知らない人であれば、前述の例文を読んでも何が書いてあるか理解できないでしょう。このような「あることがらに関するひとまとまりの知識」を、認知心理学では「スキーマ」と呼びます。しかし私個人としては、≪ある問題文のテーマ(「何の話」)に関する知識量の多さ≫という意味で、「テーマ力」と呼んでいます。ジャンケンの話を読むのであれば、やはりジャンケンを一回でも経験したことのある読者のほうが理解が早いということです。
そして中学受験の説明的文章であれば、「動植物」「自然環境」「言語・コミュニケーション」「文明・文化」などに絞ることが可能ですから、それらの頻出テーマに関する知識をお子さまが事前に持つことが非常に有効です。「テーマ力」を付ける対策としては、このコラムでも以前ご紹介したと思いますが、頻出テーマに関する解説書である、拙著『中学受験 必ず出てくる国語のテーマ』(ダイヤモンド社)の一読をおすすめします。

以上、説明文や論説文を読む時の問題点とその解決方法を挙げました。「文章を読む」という行為は、下の図に示すように、これらの三つの問題点をクリアすることで初めて達成できます。しかも、中学校入試に出題される問題文は中学生以上の皆さんを対象に書かれたものが多く出題されます。問題文を理解して、問題を解き、合格点を得るためには、相応の準備と演習または慣れが必要だと思います。



【図 文章を読む】

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プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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