小学校入学に向けて、感情をコントロールできる子になる【基礎知識編】

すぐカッとなってしまう、すぐ泣いてしまう……。就学を控えるお子さまの様子を見ていて、もう少し感情を上手にコントロールできたらよいのにと思う保護者のかたもいるのではないでしょうか。そこで、感情をコントロールする力を育むために必要なことを、発達心理学がご専門の聖徳大学准教授の佐伯素子先生に伺いました。



0歳児でも感情をコントロールしている!?

「喜び」「怒り」「悲しみ」「恐れ」といった基本的な感情がそろうのは、生後6~7か月ころと言われています。このごろは、おなかがすいたり、おむつがぬれたりしたら、泣いて保護者に訴え、不快な気分を調整してもらいます。ただ、指しゃぶりは寂しさや不快な気分を感じているに、自分をなだめる行為だと言われ、0歳児でも感情をコントロールしようとしていることがうかがえます。
1歳ぐらいになると、不安や恐怖を感じるに、保護者の表情から事態を判断して、安心したり、警戒したりします。また、保護者は子どもにとって安心の基地になっています。不安や恐怖を感じるに保護者のところに戻って、安心感を得たら、再び世界を探索しはじめます。

2~3歳ごろから徐々に感情をコントロールすることを学んでいきます。このころのお子さまは、悲しい・楽しいといった自分の気持ちと、原因となった出来事を結びつけて考えられるようになってくるからです。たとえば、公園でお兄ちゃんがブランコに乗っていて、自分も乗りたいけれど、一つしかなくて乗れない場合、泣いて騒いで保護者に訴えて、感情をなだめてもらい、問題を解決してもらいます。この行為は、自分がブランコに乗りたいのにお兄ちゃんがなかなか代わってくれないからだと原因がわかるようになったからです。
また、この時期のお子さまの特徴として、「なんで?」「どうして?」という質問を多くするようになります。これは、ものごとには原因があると知るようになるからなのです。

4・5歳児になると、相手の気持ちを理解できるようになります。言語が発達することによって、自分の気持ちを保護者や友達に言葉で伝えられることが増えてきます。また、幼稚園や保育園で集団生活をするようになり、お友達とのけんかや葛藤を経験するようになります。お友達と仲良く遊ぶには、自分の気持ちを抑えることも必要であることを経験の中で学んでいきます。
小学校低学年になると、集団生活でよりもまれていくことに加え、徐々に論理的な思考ができるようになります。中・高学年になると、自分の感情に流されることなく、相手の立場で考えられることも増えてくるので、感情をコントロールする力は増していくと言えます。
このように、感情コントロールは、思考能力の発達、言語の発達、周囲の人との関わりが、相互に影響し合って、徐々に発達していくのです。



周囲との関わりによって感情をコントロールする力は発達

ただ、感情のコントロールをする力には個人差があります。けんかをして衝動的に手を出してしまう子と、がまんして言葉で気持ちを伝えられる子は、何が違うのでしょうか。
まず、お子さまの気質が関係していると言えます。気質というのは、体質的なもので、生まれながらに見られる行動特徴です。それは、パーソナリティー(性格)の基盤になると言われています。たとえば、明るくいつもにこにこしているタイプもいれば、引っ込み思案で神経質といったタイプもいます。好奇心旺盛でなんにでも飛び込んでいってしまう衝動的なタイプもあって、そういうお子さまの中には、感情をコントロールするのが苦手な子がいます。

ただ、お子さまの気質だけが感情コントロールを難しくしているわけではありません。周囲の人の関わりによって、感情をコントロールする力は発達していきます。たとえば、衝動性が高いお子さまと神経質な保護者の組み合わせだと、保護者がお子さまのさまざまな行動をストレスに感じやすくなります。お子さまがかんしゃくを起こした時、強く叱る回数が多くなってしまうこともあります。感情のコントロールがうまくいかない時に、怒ったりしてもあまり効果はありませんし、いつもそうした対応では、お子さまは、どのように感情をコントロールすべきか学習することが難しくなります。

「うちの子、感情のコントロールが苦手かも」と感じたら、お子さまの気持ちをくみ取って言葉にしながら、一緒になってどうしたらよいのか考えるなど接し方を工夫するとよいと思います。



お子さまの気質を知ろう!

感情をコントロールする力を育むためには、まずは子どもの発達段階を理解したうえで、お子さまの特徴を知ることが大切だと言えます。お子さまがどんな時に感情をコントロールするのが難しいのか、そのような時保育園や幼稚園の先生はどのように対応しているのか、相談してみるとよいでしょう。保育のプロの先生方は大勢のお子さまを見ていますから、お子さまにあったサポートの仕方をアドバイスしてくれるはずです。

次回は、幼児からできる感情をコントロールする力の育み方を伺います。


プロフィール


佐伯素子

聖徳大学心理・福祉学部心理学科准教授。博士(心理学)、臨床心理士。専門分野は、発達心理学・発達臨床心理学。主に感情と心身健康・子どもの発達と可塑(かそ)性について研究している。著書に『きほんの発達心理学』(おうふう、共著)など

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