自信がないと解答欄に記入することを躊躇[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子(性格:弱気/やや論理的)のお母さま


質問

どの分野も理解しているはずなのに、いつも自信がないようで解答欄に記入することを躊躇(ちゅうちょ)しているようです。「基本問題だったらできるけど応用はダメ」と自分で線引きしている節があります。


小泉先生のアドバイス

学習内容をチェックし、足りないようであれば、応用レベルの問題演習量を増やす

各単元の内容は十分に理解できていて、基本問題も解けるのに、応用問題になると途端に手が付けられない。このような悩みを持つ生徒は、少なくないでしょう。対策はいくつかありますが、お子さまのような「弱気タイプ」の生徒さんには、やはり「精神的バックアップ」が一番効果的だと思います。

「弱気タイプ」の生徒がテストの時に応用問題にチャレンジするには、他のタイプの生徒以上に応用レベルの問題数をこなし、十分な自信を持つことが必要です。しかし、弱気な性格が災いして、普段の勉強でもなかなか応用問題に取り組まない傾向があります。基本問題を解くことのみに時間を費やし、それで勉強したつもりになってしまうのです。このような勉強方法は、「量」的には良いでしょうが、「質」的には問題のある勉強方法であると言えるでしょう。
有効な学習には、常に「質」と「量」が求められます。問題には基礎・基本・応用・入試レベルがありますから、基礎から始めて、各レベルを順番にマスターして行く必要があります。「弱気タイプ」の生徒のように、基本をマスターしても応用や入試レベルの問題を演習しようとしなければ、実際の試験の時に難しい問題が解けるはずはありません。お子さまも基礎や基本ばかりで、応用問題を演習する時間が少ない可能性があります。まずは学習内容をチェックし、足りないようであれば、応用レベルの問題演習量を増やすと良いでしょう。そしてなかなかやりたがらない場合は、「基礎・基本がしっかりしているから、応用問題も一つひとつこなしていけば必ずできるよ」と励ましてあげてください。

さて、「弱気タイプ」の生徒に対しては、もう一つ注意すべきポイントがあります。それは、良い結果が短期間で出てこないと、すぐに不安になってしまうということです。成果がすぐに表れれば、勉強も楽しいものです。しかし、現実にはいくら勉強してもなかなか目に見えての成果は出てこない場合もあります。生徒によっていろいろですが、一般的には3か月程度経過しないと成果は出てこないと思って良いでしょう。たとえば夏休み明けのテストが良かったとしたら、それは5月~6月ごろのがんばりの成果と言えるのです。逆に言えば、夏休みにしっかり勉強したから、夏休みのまとめのテストで成果が出たという生徒は、かなりラッキーな生徒であると言えるでしょう。そのくらい時間がかかると考えて良いのです。たとえば、今日、漢字を10個覚えたとしても、それがテストに出なければ点数にならないのですから、3か月程度のタイムラグは当たり前と言えます。
しかし、特に「弱気タイプ」の場合、この3か月という期間が耐えられない可能性があります。すなわち、一生懸命に勉強しているのに1か月たっても結果が出ないと、「自分の勉強方法が間違っているのではないか」と不安になってきてしまうのです。そして、結果が出る前に、意欲をなくしてしまったり、あるいは他の勉強方法に変えてしまったりするのです。そしてその新しい方法も、結果が出る前にやめてしまうという繰り返しが続きます。成果が出にくい、まさに不毛の学習方法と言ってよいでしょう。
算数の場合、自分がマスターしたレベルのひとつ上の問題を十分に演習すれば、必ず成績は向上していきます。解けない問題は模範解答をよく読んで、解法の手順をしっかり理解し、10日ほどたったらもう一度解けるかどうか試してみます。十分に理解していれば、スラスラと解けるようになっているでしょう。もし、解けなければ、もう一度模範解答をよく読んで理解します。そして、さらに10日ほどたったらできなかった問題だけを解きます。これの繰り返しです。
そして、この時のお母さんの役割は、お子さまが不安になった時に励ましてあげることです。不安からまた基本問題をやりたがっても、応用問題を続けさせることです。そして、少しでも改善の兆候が見えてきたら、すかさずほめてあげてください。偏差値が5、10と伸びれば、お子さまはもちろん喜び、自信も持ちます。指導者である先生も、賞賛してくれるでしょう。しかし、本当に大切なのは、「改善の兆候」をほめてその努力を続けさせることです。
これはなかなか難しいことではあります。お子さまを本当に見ていないと、なかなか「改善の兆候」がわからないからです。また、下手にほめても、生徒は賢いので「お世辞」であることをすぐ見抜きます。お子さまのような「論理的なタイプ」であるなら、なおさらでしょう。「難しい計算がなんとかできるようになった」とか、「苦手な図形の解き方が少しわかるようになった」など、点数にはまだまだ反映しないが、改善点が確かに出てきたら大いにほめてあげる。お子さまのようなタイプには、特におすすめの方法です。そして、しばらくこの努力を続けられれば、グンと伸びる時がきっとやってくると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A