文章を読むのが遅い[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小6女子のお母様

質問
文章を読むのが遅いので、時間内に解き終えようと焦るあまり、最後のほうに選択問題がある場合は勘に頼って解答を書いていたりします。長い記述はすべてあとでやろうと取っておいて、結局解答する時間もなくて空欄のままになります。過去問や模試の直しの時に、時間を決めずにじっくりやらせると、それなりの解答ができる場合も多いので、読むスピードが要だとは思います。ただ、時間をかけても間違う時に本文の内容を言わせてみると、モゴモゴしているばかりで、実はちゃんと読めていなかったということもあります。ちょっと難しい言葉、方言、昔の言い回しなどが読解を困難にしているようです。読書はあまりしません。「全国中学入試センター模試」と「合不合判定テスト」で国語は偏差値が38~50で、足を引っ張っています。

小泉先生のアドバイス
「読み慣れる」ことで一つひとつの原因を取り除くことが大切

文章を読むのが遅いために、問題を解く時間が足りずに成績が伸び悩んでいる生徒は案外多いようです。原因はいくつかあると思いますが、代表的なものとしては「知識不足」「集中力不足」、そして「語彙(ごい)不足」です。解決法としては、「読み慣れる」ことだと思います。ただし原因によって「読み慣れる」ための手法が違うので以下で説明します。

まず「知識不足」ですが、たとえば好きなテーマの物語や論説文ならある程度の速さで読めるのに、自分の嫌いなものだと最初の3行を読んだだけで拒絶反応を起こしてしまう子どもがいます。明らかにそのテーマに関する知識が不足していることが原因です。それでも渋々読み進めるのですが、当然読むスピードはかなり遅くなり、なかなか内容が頭に入ってきません。特に女の子の場合は、「文化・習慣」「言語・コミュニケーション」「芸術論」などのテーマの論説文が苦手なようです。しかし最近の中学校入試では、いずれも頻出テーマですから、「嫌いだ!」とばかり言ってはいられません。
これらの文章を速く読めるようになるためには、それらのテーマの問題文を多く読み、「慣れてしまう」ことです。何度も同じテーマの文章を読むと、そのテーマに関する知識が増えていきます。知識が増えれば、文章は飛躍的に読みやすくなります。特にお子さまの志望校に頻出するテーマについては必ず事前にチェックして、苦手であれば必ず読み慣れておいてください。なお、最近の頻出テーマやどの学校でどんなテーマが出るかなどをまとめたものに、拙著『中学受験 必ず出てくる国語のテーマ』(ダイヤモンド社)があります。興味のあるかたは書店でチェックしてみてください。

次は「集中力不足」です。文章の内容や言葉はそれほど難しくないのに、それでも読むのが遅い場合があります。読むのを急がせると読み飛ばしなどして集中力がなくなり、内容を十分に理解することができなくなります。こんな場合は、「集中しながらしかも速く読むことに慣れる」必要があります。そのための方法としては、読む時間を測り、タイムを縮めるように意識させると良いでしょう。
たとえば目標を1分間に600字とし、お子さまが読もうとしている文章が1800字であれば、「これを3分で読むようにしよう」ということで目標時間を事前に設定します。そして3分経過した時点で「どこまで読めていたのか?」とか、「文章全体を3分で読むためにはどのくらいのスピードが必要なのか?」を、お子さまに体感させるわけです。
もちろん読むだけではなく、文章の内容もしっかり理解する必要がありますから、読んだあとは必ず内容についてチェックしておく必要があります。物語ならあらすじを、説明文なら何について書かれた文章であるかを聞いておきましょう。スピードを意識させ、集中力をアップさせることで、徐々に目標に近づくと思います。
ところで、速く読むことを意識させすぎると、どうしても読み飛ばしてしまう子どもが出てきます。それを防止するには、「音読」しかも「速音読」をおすすめします。「音読」は読解力を伸ばすために有効だと言われていますが、特に「読み飛ばし防止」に最適です。しかし読む速さはどうしても落ちてしまいますので、そこで音読に速さを加えた「速音読」が有効になります。私の国語塾に通っている子どもで、やはり読むのが遅い子何人かにこの「速音読」を家庭で練習してもらったところ、皆かなり正確にしかも速く読めるようになったと記憶しています。

さて最後の「語彙不足」ですが、一つの問題文を読む時に、知らない言葉はせいぜい三つが限界と思います。それ以上になると、文章の前後関係から知らない言葉を推測することはかなり困難になるということです。
ということで、わからない言葉が多く出てくるのであれば、熟語や慣用句の練習を強化する必要があるでしょう。漢字や慣用句の練習を行うことで、言葉に「慣れる」ということです。

以上、文章を読むのが遅い原因として、「知識不足」「集中力不足」「語彙不足」の三つを挙げました。原因の一つひとつが単独で影響しているのではなく、二つ三つと重なり合っている場合もあると思われます。そんな場合でも、それぞれにあった手法で「読み慣れる」ことで、一つひとつの原因を取り除くことが大切だと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A