見極めることが難しい志望校の教育方針・校風[中学受験合格言コラム]

従来、≪教育≫は、景気の影響を受けにくいと言われてきたが、今回は100年に一度の深刻な不況である。中学入試にも不況の影響があるかもしれない。今年の首都圏中学入試では、不況の影響で公立中高一貫校の受験者数が増えるのでは、という予測もあったが、公立中高一貫校はそれほどでもなく、むしろ有名大学の系列校が人気となった。不況の影響があるとすれば、受験生・保護者は、確実に難関大学に入学できる≪安定≫を求めたのではないだろうか?

今年は、「系列校」という要素で志望校を決定した受験生・保護者が増えたわけだが、志望校の選定要素で最も重視されるのは学校の教育方針と校風である。もちろん、我が子に合った教育方針と校風の学校に入学させるためである。
ところが、学校案内を読んで志望校の教育方針と校風を理解できる受験生はわずか37%というデータがある。「受験生本人」という条件が付いたせいか、思ったよりも低い数値であった。他のデータから推定すると保護者が学校案内を読んでも約50%しか理解できないのではないかと思われる。
学校案内を見ただけでは教育方針と校風がわかりにくいからこそ、受験生・保護者は学校説明会や文化祭等の学校イベントに参加するということなのだろう。しかし、保護者は、入学前に志望校の教育方針や校風をどのくらい理解できているのだろうか?

そこで、難関校・上位校の私立中高一貫校在籍者(以降、「在籍者」)の保護者にアンケートを行ったところ、入学前に在籍校の教育方針が理解できていなかった保護者は17%。校風では13%の保護者が理解できていなかった。また、入学前には志望校の教育方針や校風を理解したつもりでも、入学してみたら、予想したものとは違うというケースもあると思う。
「在籍者」の保護者に、入学後の感想として、在籍校の教育方針と校風が入学前の予想と、同じか違うかを確認してみた。入学前に予想したとおりの教育方針だったと回答した保護者は42%で、校風については51%であった。教育方針の42%と比べると、校風のほうが少しだけわかりやすかったと言ってもよいだろう。それにしても、2人に1人の保護者は在籍校の教育方針・校風が入学前の予想とは違ったことになる。つまり、半数以上の保護者は、教育方針・校風を理解できないまま、または誤解して入学したことになるのである。

第1志望校に合格するために、お子さんが3年以上の時間をかけて受験勉強をして入学した学校が予想とは違い、しかも「我が子に合った学校」ではなかったとしたら、何のためにがんばったのかわからない。保護者は、志望校の教育方針と校風を入学前に見極めることは難しいということを前提に、子どもの努力が実るように教育方針と校風をよく調査し、「我が子に合った学校」を選定してあげてほしい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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