受験に向く・受験に向かないタイプ その4[中学受験合格言コラム]

「受験に向く・受験に向かないタイプ その3」
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。

※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育発見隊通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。

質問者
相談者:小5女子のお母様
志望校:慶応義塾中等部・立教女学院中学校などを検討中

質問
来年受験予定の小学5年生の女の子の母親です。

志望校:慶応義塾中等部・立教女学院中学校などを検討中

2年生の2月から大手進学塾に通い、現在週3回の塾に加え、補習で週1回家庭教師の先生に来て頂いています。
これだけがんばっていても成績はまったく伸びず、志望校には程遠い状態です。
実は、妹が小学校から慶応幼稚舎に行っており、また家族に慶応が多いことから自然に慶応を、と考えてきましたが、現状を受けとめ、ほかの学校にも目を向けているところです。
本人に何度となく受験をやめようかと言ったものの、やめたくないの一点張り。
親としても、ここまでがんばっても何の成果もなく、これまでやってきたことは何だったのかと自問する毎日で、今後どうするか日々悩んでおります。

まずは、本人にまったくやる気がないのに、とりあえず受験をさせるぞと進学塾に入れてしまったことが間違いだったのか、本人のやる気をうまく引き出せないままでいる私たちがいけないのか、とにかく勉強から逃れようとする娘にイライラしています。
このままの状態ですと、親子関係がうまくいかなくなるのではという不安も大きく、それならば、一切受験をやめて今まで我慢していたことをやらせてあげるか、本当に悩みます。

中学受験をするかしないかは、本当にその家庭の考えによるとは思いますが、その家庭のなかでも向いている子、向いていない子がいると思うのです。
向いていないと思われる子に受験を強いるのはやめるべきでしょうか?

小泉先生のアドバイス
【「頑固タイプ」と「優柔不断タイプ」】

保護者がやるべきこと、考えるべきことは、お子さまがどのタイプなのかにかなり左右されます。今回は、「頑固タイプ」と「優柔不断タイプ」だった場合についてお話しましょう。

大人っぽいのに、妙に頑固なお子さまがいます。大人っぽいのですから、理論的に考えることもできるはずなのに、自分のやり方を変えようとしません。これは成熟度というよりも、その人の資質なのかもしれません。こういった「頑固タイプ」は、「わがままタイプ」とように、受験に向いていないと言えます。しかも「わがままタイプ」は成熟することで人間の幅が広がる可能は十分ありますので、「頑固タイプ」のほうが受験という面では厄介かもしれません。

「頑固タイプ」が受験に不向きな理由は、たとえ間違った勉強方法をしていても、なかなかそれを正そうとはしないところにあります。受験勉強というのは、試行錯誤の繰り返しと言えます。だれもが最初からベストな方法論を持てるとは限りません。あるいはA君にはベストでも、B君にとってはそうではないかもしれません。常に改善の可能性を考えながら、勉強する必要があるということです。
たとえば、「国語の解法」をA君とB君に教えたとします。A君は「なるほど!」と思い、早速自分で国語の問題を解く時に取り入れます。すでに次の授業の時には、十年来の方法のように使いこなして、みるみるうちに成果を出します。一方B君は頑固なお子さまだとします。授業で教えられて、「なるほど」と思ってはみても、実際には自分のやり方を変えようとしません。何度言っても変えようとしませんから、成績も相変わらず低迷しています。理論的に頭でわかっても、従来の方法を変える勇気が持てないのでしょう。以前に得た成功体験が、従来の方法との決別をためらわせているのかもしれません。
これとはまったく逆の、「優柔不断タイプ」も受験には向いていないかもしれません。すなわち、「いいな!」と思うと、次から次へと方法論や問題集、あるいは塾さえも変えるお子さまです。すばらしい方法論でも、成果が表れるまで時間がかかる場合があります。その時間に耐えることなく、あたかも「青い鳥」を探すように理想の(あるいは楽そうな)学習法を探すのは、かえって徒労に終わる可能性が高いでしょう。

「頑固タイプ」と「優柔不断タイプ」は両極端なタイプでありますが、いずれにしても「変える勇気」や「続ける勇気」を持つ必要があるということです。保護者としては、基準を決め(成績が向上しているかどうか)、期日を決め(成果が出るまで3カ月程度はかかる)、そして適切に判断してあげることが大切です。

以上、4週にわたり「受験に向く・受験に向かない」タイプについて説明してきました。お子さまがそれぞれのタイプに明確にわかれる場合もあれば、いくつかのタイプが混じっている場合もあると思います。そんな場合は、それぞれのタイプの注意点と接し方を上手に使い分けることで対応していただければ良いと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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