公立中学校とは 【親子で考える 12歳の学校選択】

私立であろうが公立であろうが、義務教育は公教育として行われなければなりません。私立学校は建学の精神に基づきながら独自の教育を行いますが、一部の要素を除いて学習指導要領に基づいた教育が実施されるなど、同様の教育を行うことが求められています。

公立中学校とは 【親子で考える 12歳の学校選択】


一番大きな違いは、私立学校が入学者の選抜などを行い、学校の教育理念に賛同して方針や規則を守ることが求められ、入学金や授業料を支払う、ということでしょうか。一方、公立学校は地域のすべての子どもに対して、教育の場を保証しなければならない役割があります。教科や指導内容・方法は別にして、ここでは両者の大きな違いを二つの面から考えてみたいと思います。

第一には地域の学校か、特別な理念をもった教育が行われるかの違いにあります。学校選択制などの方針によって、公立学校の指定枠はゆるめられる傾向になってきましたが、居住する市区町村内の学校に通うことを特別な例外を除いて求められます。地域との結びつきが強いことが公立学校の特色の一つだと思います。これは地域がいろいろな面で学校教育に力添えをしてくれることのほかに、地域の中で子どもが育っていくという大切な側面があるということです。公立学校にはいろいろな立場の、そして特色をもった子どもたちが集まってきます。同じクラスには、成績のよい子、運動能力の優れた子、お金持ちの子、貧しい子、経営者の子などいろいろな子どもがいます。学校では知識を得ることのほかに、一緒になって楽しいクラスをつくり、力を合わせてより幸せな生活を作り上げる訓練をしているところだと考えるのです。学校という安全を確保された場で、先生の保護の下、自分たちの手でよりよい生活を作り上げる練習は、将来の生活に大きく役立ちます。地域生活のミニチュアとしての機能を持ち、将来の自分たちの幸せな地域を創るためのトレーニングをする、これが公立学校のもっている大きな役割の一つだと思います。

「新たな自分探しの旅に出たい」。先日引退を表明したときの、中田英寿選手の言葉です。これは彼が初めて言った言葉ではなく、1996年に発表された中央教育審議会の第一次答申で述べられた言葉です。これが公立学校の特色として考えなければならない第二の観点です。最近、優秀な高校や大学に進学した生徒が、成績が思うように上がらないことが理由になって、母親や幼い弟妹を殺してしまった事件が続いて起こりました。子どもの将来に親の期待や希望を押しつけられた悲劇だと報道されています。子どもの希望を親の考えで抑えつけ、洗脳して早めに将来の生き方を親が決めつけてしまうことは、やはり問題だと考えます。子どもたちの資質や特性を、いつ見つけ出してどう育てるのか、公立学校は子どもと先生と保護者が一緒になって考え、悩み、取り組む場所だと思うのです。

プロフィール



21年の教員生活後、杉並区及び多摩市教育委員会指導主事、中野区立第二中学校・港区立青山中学校校長、全日本中学校長会長、第15期中央教育審議会専門委員を歴任。現東京都多摩市教育委員会教育委員長、平成16、17年度東京都市町村教育委員会連合会会長。

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