子どものやる気と自信を育てる褒めかたとは? 息子二人を「ぺたほめ」して現役医学部合格に導いた藤田敦子さんに聞きました。
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子どものやる気と自信を育てる魔法の子育て術で、息子2人を難関大医学部の現役合格へと導いたシングルマザーの藤田敦子さん。自身の経験を活かし子育てアドバイザーとしても活躍されている藤田さんに、子どもの自己肯定感を高める“褒めテクニック”についてお話していただきました。
がんばりを見える化!繰り返し褒めて次のがんばりに
—近年、子どもの自己肯定感を高める教育法が話題です。藤田さんも、褒める子育てで息子さんの自己肯定感を高めたそうですが、なぜそのような教育を行おうと思ったのでしょうか。
藤田:自己肯定感という言葉は、私が子育てをしていたころはそこまで話題になっていませんでした。私が大学で4年間、発達心理学を学んだということもありますが、実は大学卒業後にニットデザイナーの仕事をしていたときの経験がきっかけです。ニットデザイナーをやり始めた当初は絵も描けなくて苦労したのですが、あるとき私がデザインしたセーターが選ばれて、お客さんからすごく褒められたんです。
それが原動力となり、やる気もどんどん出てきた結果、チーフデザイナーにもなれました。その経験があったので、息子たちもいっぱい褒めて、やる気と自信につなげてあげようと思いました。
—お子さんにはまずどのようなことをされたのか教えてください。
藤田:息子たちが2、3歳ごろから、描いた絵などをリビングに貼って褒めるようにしました。
みなさんの中にも、家の中に絵を貼っているかたはいらっしゃると思うのですが、私は貼ってから何回も何回も褒めました。
たとえば、うちはよく動物園や植物園に、画板を持って絵を描きに行きました。まず描いた時に、「すごいね、上手に描けたね」と褒めます。その後、家に帰ってリビングに貼り、お父さんが帰ってきたら「見て見て! 今日この絵をがんばって描いたのよ。すごいでしょ」といってお母さんが2回目の褒め、お父さんも褒めて3回目。後日、遊びに来たおじいちゃんおばあちゃんに見せながら、また褒める。一粒で二度美味しいじゃないけど(笑)、1回絵を描いただけで、5回も6回も褒められるんです。子どもにとって効率がいいと思いませんか?
いっぱいいっぱい褒めることによって、子どもに何が起きたかというと、うれしくてまた描こうという気になったのです。うちは息子たちが小学生のときに離婚して母子家庭になったのですが、おじいちゃんおばあちゃんがよく遊びに来てくれたので、「明日おばあちゃんたちが来るなら絵を描こうかな」と言って描くこともありました。
—褒めることで子どもたちのやる気に火がついたわけですね。
藤田:そうです。これはいいなと思って、頻繁に繰り返したんです。その後、息子たちは絵を習ったことがなかったのに、学校などで絵の賞をいっぱい取るようになりました。繰り返し描いたから上手になったんですよね。
うちは絵だけでなく、賞状もテストもたくさんリビングに貼りました。がんばりって目に見えないけど、がんばったものを貼って、目に見える化すること、褒める材料にすることで、次のがんばりにつながったと思うんです。子どもって、とくにお母さんに褒めてもらいたいから、がんばれるんですよね。私はこの子どものがんばりを「ぺた」っと貼って「ほめ」ることを「ぺたほめ」と呼んでいます。
褒めることで親子のコミュニケーションも増え、自己肯定感も高まる
—貼って褒めるときのルールはありますか。
藤田:大切なことが3つあります。
1つめは、いっぱい褒めてもらうために一番目立つリビングなどに貼ること。
2つめは、自己申告制にすること。
絵が下手だから貼らないとか、100点じゃないから貼らないとか、お母さんが判断するのではなく、子どもが「これがんばったよ」「これ貼って」と言ったものを貼ってあげるんです。ぐるぐる描きの絵でも、80点のテストでもいいんです。そのとき「なんでこれ貼ってほしいの?」って聞いてあげてください。「前のテストは60点だったけど、今回は80点取れたから貼ってほしい」って言うかもしれません。お母さんってどうしてもがんばりを認めるよりも、「あと20点分、なんで見直ししなかったの?」とか、間違ったことに対して指摘しがちなんですけど、子どもががんばったというのならまずはそこを褒めてあげてほしいんです。
3つめは、貼れないがんばりは、シールで代用して貼りましょう。
私は、褒めることを増やそうとしてやっていたので、学校で手をあげたとか、お料理の手伝いをしてくれたとか、なんでも褒めて認めてあげました。それが自己肯定感を高めることにつながります。
これら3つで丸ごと100%認めてあげる、ということになります。子どもが褒めてほしいことを、「すごいね」「がんばったね」と丸ごと認めてあげてください。
—子どもが褒めてほしいものをどんどん持ってきて、お母さんたちが褒める、という繰り返しになるわけですね。
藤田:うちも息子たちが「これ、ぺたほめして~」っていっぱい持ってきてくれました。褒めてほしいことを自己申告してくるから、褒められモレがないんですよ。いま、コミュニケーション不足の親子も増えていると言われていますが、これならコミュニケーションがたくさん取れるというメリットもあります。
失敗したときこそ、子どもの心が軽くなるような声かけを
—あまり褒めることがないときどうしたらいいですか。
藤田:絵やテストの出来で褒めるのは簡単ですが、子どもが失敗したとき、思うようにいかないときにどうすればいいか。
たとえば、テストの点数が悪かったときに、「昨日勉強しないで遅くまでゲームしたからでしょ!」って言ってしまうお母さんも多いと思いますが、失敗した事実はもう変えられないのだから、そこを責めるのではなく、子どもの気持ちになって、心が軽くなるような声かけをしてあげてください。
うちの息子たちだって100点じゃないときもありました。そんなときは、「仕方ないよね。人間はロボットじゃないから毎回100点なんて取れないよね」「がんばっているの知ってるから、次はできると思うよ」「大丈夫よ。ノーベル賞取った人でも、失敗を重ねたうえでの成功なんだから」と声をかけてあげました。
—ネガティブな声かけはしないということですね。
藤田:失敗したときこそ、声かけが大切です。ネガティブなことを言うのではなく、がんばっているの知ってるから大丈夫だよって、言い換えてあげるんです。よく、がんばらない子、「がんばっても無理」って言う子いるじゃないですか。それってもしかしたら親が作ってしまっているんじゃないかなって思うんです。がんばったらできるよって声をかけ続けることで、根拠のない自信が持ててがんばれる子になると思います。
うちの息子たちは、なんでそこまで自信あるのかっていうぐらい根拠のない自信を持っているんですけど(笑)、それは声かけのおかげかなと思っています。
なので、お母さんのOKのハードルを低くすれば褒めることは増えると思います。
人に迷惑をかけること、命の危険があることをしなければOK、というぐらいにお母さんには思ってほしいですね。子どもの気持ちを楽にする声かけができれば、親子の絆も深まり、100%お母さんのことを信じられて、受験でもなんでもがんばれるはずです。
女優力(男優力)を磨いて、大げさに褒める
—子どもが自信を持てるように、どのような褒め方をすればいいのでしょうか。
藤田:私は、お母さんには女優力(お父さんなら男優力)で大げさに褒めてあげてほしいと思います。たとえば、宿題をがんばったなって思ったら、「やっぱりすごいよね。学校で疲れてるのにむちゃくちゃがんばって偉いよね」とか。
絵を描いたときも、「うわ、すごい! ここの色がすごいわ!」「こうやって描いたところがむちゃくちゃすごいと思うわ、やっぱ才能あるわ~天才やな~」って。関西人なのもあるけど、いつもこんな感じで言っています(笑)。
こういう話をすると、とくに関東のお母さんから「藤田さんは関西人だからできるけど、私にはそんな褒め方できません」って言われるのですが、子どもは関東も関西も関係なく、面白いことが好きで、大げさに褒められることを喜ぶんですよ。恥ずかしいのは親だけなので、そこは子どものレベルに下がって、大げさに褒めてください。
—「お母さん、そんな風に褒めて僕に勉強やらせようとしてるでしょう」って見透かされそうですが……。
藤田:それはお母さんの女優力が足りない、大根役者です(笑)。女優力をもっと磨かないといけませんね。
あと、「すごいね」っていう形容詞だけで褒めるのではなく、きちんと子どもを見つめて褒めないと、子どもの心にも響きません。
「昨日はできなかったことが今日はできてたね。〇〇ちゃんががんばったからだね」とか、漢字の書き取りを見ながら「この漢字のここ、最後までしっかりハネができててかっこいいわ」とか、具体的に褒めるんです。お母さんの恥ずかしいというプライドを捨てて、女優力を磨いてぜひいっぱい褒めてください。お父さんでもお母さんでも、演技力次第で、子どもは確実に変わっていきますよ。
まとめ & 実践 TIPS
OKのハードルを低くしてがんばりをたくさん見つけて褒め続けることが自己肯定感を高め、親子の絆も深まるという藤田さん。子どものできないところばかり目についてしまう親御さんも多いかもしれませんが、藤田さんのような女優力(男優力)を身に付け褒めて育ててあげましょう。
取材&文/井上加織
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