イヤな気持ちを持つのはあたりまえ。脳科学者が、不安や怒りなどを感じた時に試してほしいこと
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「どうせ無理」「○○ちゃんはいいなあ」。子どもからネガティブな言葉を聞いて、ドキッとすることはありませんか?
「イヤな気持ち」は、脳が引き起こしている感情。脳がまだ成長途中にある子どもたちにとって、感情をコントロールするのは難しいことです。そして、「イヤな気持ち」にも大事な意味があるのだそう。脳科学者による書籍『中野信子のこども脳科学』から生きづらさを感じる全ての子どもたちへ、ヒントとなる言葉を紹介します。
「イヤな気持ち」は誰でも持っている?
脳科学者・中野信子先生。撮影:川しまゆうこ
できることなら、イヤな気持ちになんてなりたくありませんよね。
ただ、あなたにぜひお伝えしたいのは、そんなイヤな気持ちこそ、「あなたを大きく成長させてくれる大事なもの」だということです。
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より引用
「いつも前向きでいたいのに、イヤな気持ちに振り回されてしまう」。こんな悩みを持つかたは多いです。誰かをねたんだり自分がダメな人間だと思い込んだりしてしまうと、挑戦する勇気を持てない、緊張しすぎて失敗するといった悪影響があるかもしれません。そんなイヤな気持ちが、なぜ子どもたちを成長させてくれるのでしょうか。
「自分は頭が悪い」「運動オンチだから……」などのイヤな気持ちは、「子どもたちの能力が足りないからではなく、成長している途中だから感じるもの」と中野先生は言います。
体と同じように、体の一部である脳もまた成長します。今うまくいかないことがあっても、時間とともにできることは増えていきます。子どもたちが「思ったようにできない」と感じるのはあたりまえのことで、ゆっくり成長していけば良いのです。イヤな気持ちがなければ、成長したいことに気付くこともできません。そのため、脳はわざわざイヤな気持ちをつくっている面があります。また、脳の成長が早すぎると、伸び幅が小さくなる場合もあるのだそう。
「イヤな気持ち」はなぜ生まれるの?
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より
イヤな気持ちは、じつは人間にとって消すことができない性質のものです。ほかの生物にも見られますが、みずからの生存にとってじゃまになるものを避けるための、基本的な「防衛反応」のひとつなのです。
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より引用
はっきりした理由がなく、誰かに対して「イヤだな……」と感じた経験を持つ人は多いと思います。そんなイヤな気持ちも、人間にとって大切な感情。
たとえば腐った食べ物を見ると私たちはイヤな気持ちになり、目をそむけたくなります。イヤな気持ちによって、腐った食べ物を食べる危険から身を守ることができるのです。イヤな気持ちのままに行動することは問題ですが、イヤな気持ちを持っているからといって「自分はダメだ」と落ち込む必要はありません。
子どもたちはまだ、理性を担当する「前頭前野」(前頭葉の前側にある部分)の発達が十分ではありません。そのため、怒りを感じた時に衝動を抑えるのはむずかしいこと。怒りにまかせて取り返しがつかない行動をとってしまわないために、怒りを抑える方法や怒りの伝え方を身に付けることが必要です。
「まずは自分にとって何がプラスになり何がマイナスになるのかを、冷静に考えるトレーニングをしてください」と中野先生。怒りは放っておけば自然と消えるものだと知っておくことも大切です。
ストレスやイヤな気持ちを感じた時にできること
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より
イヤな気持ちを感じたら、まず「深く息を吸って、ゆっくりはく」ことをくり返してみましょう。みだれていた気持ちがゆっくりと落ち着いていくはずです。
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より引用
苦手な人に出会ったり、たくさんの人の前で発表したりする時、心臓がドキドキして逃げ出したくなることがありますよね。これは、「自律神経」(意志に関係なく内臓器官の働きをコントロールする神経)の反応によるもの。この自律神経に自分の意志でアクセスできる方法が「呼吸」です。
呼吸を整えると、活発になりすぎた自律神経を落ち着かせることができます。緊張している時に「落ち着いて」と言われてもどうしたらいいかわからないですが、「まずは呼吸を整える」と覚えておくと良いでしょう。怒りを感じた時にも役に立ちます。
悩みは分解して、エネルギーに変えていこう
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より
なんとなく悩み続けるのではなく、「自分ができること」と「できないこと」に問題を分けて、自分ができることだけをやればいいのです。
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)より引用
誰にでも苦手な人はいるし、楽しくないこともあります。イヤな気持ちを持つことはしかたがありませんが、そこに大切な時間やエネルギーを使ってしまってはもったいない。悩みがある時は、その悩みを分解して自分が対処できる問題に変えましょう。メタ認知(自分のことを客観的に見ること)を使って「自分はどんなことがイヤなんだろう?」「他のことでイライラしていたのかもしれない」など考えてみると、解決できる部分が見つかるかもしれません。
気持ちがおさまらない時は「SNSにはあげず、秘密のノートに書きだして誰にも見られない場所にしまっておく」ことが中野先生からのアドバイス。紙に書きだすことは気持ちの整理に有効な手段です。悩みは無理に解決しなくてもいい。イヤな気持ちは、自分を成長させるエネルギーに変えていきましょう。
まとめ & 実践 TIPS
SNSで「いいね」の数が気になったり、子どもの成績に一喜一憂したり。大人にとっても「イヤな気持ち」はいつもそばにあり、やっかいなものです。『中野信子のこども脳科学』ではイヤな気持ちを持ってしまう脳のしくみも解説され、悩みに関係する脳の部分も紹介されています。リビングに置いて、子どもと一緒にページをめくってみてはいかがでしょうか。
執筆/樋口かおる
『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(中野信子著、フレーベル館刊)
脳科学者・中野信子先生による初の子ども向け書籍。勉強や将来への不安、承認欲求の苦しさなどから生きづらさを感じる子どもたちへ、やさしく寄り添うアドバイスが満載。脳のしくみもよくわかる一冊です。
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