「もうすぐ夏休みが終わる」不安な子どもに、保護者はどう声をかければよいのか【不登校との付き合い方(30)】

夏休みが終わります。この時期になると、夏休みの前半には自分のペースで過ごすことができた子どもたちは、「学校が始まる」というあせりを感じ始めます。子どもが夏休みが終わるころ、何か不安な様子が見えたとき、保護者はどのような行動をとったらいいのでしょうか。「不登校新聞」編集長の石井志昂さんと考えました。

この記事のポイント

ほんとは学校に行きたくないと思っていた子どもの緊張感が高まる8月末

夏休み終了カウントダウンにはいると、普通に学校に行っている子どもなら、なかには「そろそろ夏休みも飽きた」と言う子もいるでしょうし、逆に不登校を続けるつもりの子どもは淡々としているかもしれません。でも、夏休み前から「学校に行きたくない」と思いつつ、なんとか学校に通っていたような子どもの場合は、不安でいっぱいになっていくようです。

夏休み明けからまた学校に行かなきゃと思うと、学校でうまくやれるだろうか、教室に入れるだろうか、勉強についていけるだろうか……と、不安で緊張を高めてしまうということがあります。その緊張感は、ジェットコースターが落ちる直前の恐怖と似ています。とてもつらい状況です。

8月下旬に、夏休みのはじめのころとくらべて、子どもの様子が何か違って緊張している感じがしたら、保護者の方から「学校に心配なことはある?」と、聞いてみてほしいです。何か違う感じというのは、「親の勘」でかまいません。そんなことを聞くと、かえって子どもを追い込むのではないかと思われるかもしれませんが、ほとんどの子どもは、自分の親を信頼していますから、親が聞こうとするならば、話してくれるはずです。

子どもが親に相談するきっかけとなる、夏休みの終わり

「学校に心配なことはある?」と聞くのは、いつでもいいはずです。ただ、きっかけとして夏休みの終わりは、子どもも話しやすいと思うのです。子どもがピリピリしているときには、「うるさいな!」といわれることもあるかもしれないし、親としても聞きづらいでしょう。でも、「うるさいな! ほっといて」と返してくるくらいなら、まずはほうっておいて見守ってください。ほんとに苦しければ、子ども自身がSOSを上げるはずです。

子どもにとってSOSを出すことは、恥ずかしいし、親を心配させたくないと思うあまり、なかなかできないでいることもあります。でも、聞こうとしてくれたなら、話すチャンスになると思います。

もしかしたら、その緊張感の原因は、「点数が悪いテストを隠していた」というくらいのことかもしれません。親からすれば「なんだ、そんなことだったの」と思う程度のことでも、子どもにとっては罪の意識があって言い出せない場合もあります。そして、親に言えたら気持ちが楽になる子もいます。

親子どちらも、勇気がいることだとは思いますが、緊張感を高めている様子が見えたら、一声かけてあげてください。

自分の気持ちと事実を分けて考える、気持ちの棚卸しをしてみてほしい

子どもの様子に不安を感じて声をかけるまえに、保護者の方には一度、自分の気持ちの棚卸しをしてみてほしいと思います。講演会などで、保護者の方から質問を受けることがありますが、実は、話を伺っているとお母さんの悩みしか出てこないということがよくあります。子どもの学年以外の情報は、「どうも○○なようだ」と、すべてが推測なのです。子どもの実際の様子が一切わからないので何も答えようがない、ということがよくあります。

保護者が不安に思っていることと、子どもの現実とが違っている場合はよくあります。誰かに話して、気持ちを棚卸しするように話したり、あるいは紙に書き出してみたりすると、今起きている現実がわかってくると思います。気持ちの棚卸しは、子どもを理解するときに、相当な効果があります。

今の不安を棚卸しするときに、親として「こうだったらいいな」と思う理想を、現実の状況や条件は無視して全部書いてみましょう。そのうえであらためて、子どもの事実を書いてみると、今、子どもが何にいちばん悩んでいるかが見えてくるのではないでしょうか。

一緒に暮らしているがゆえのことですが、「親の不安」と「子どもが現実に抱えている困難」が食い違っていることは往々にしてあります。不登校の場合は特に。親の妄想だけで不安になりすぎて、子どもに事実を聞くに聞けなくなる、ということだけは避けてほしいです。

大人は視野が広い分、かえって子どもの現実を見落としてしまうことがあります。子どもの現実に視点を合わせると、実は勉強が苦しかったり、親の期待に答えられなくて残念だと思っていたり、親からすれば「そんなことは気にしなくて大丈夫だよ」と言ってあげられることも多くあるのも事実です。ほとんどの話は、子どもの現実に目を向けることで解消の糸口が見えてきます。夏休みは、時間がある分、そうしたことをするのにいいタイミングなのでしょう。

子どもが感じている事実に即した事柄

一例として、こんなケースがありました。小学生から不登校だった子どもが、学校に行きたくない理由を「動画を見ていたほうが楽しいから」と言いました。どんな親でも、それはダメだという理由で、なんとか学校に行かせようとします。そして、無理して学校に行き続けたら持病のぜんそくが悪化して入院してしまったのです。子どもはいろいろ苦しいことがあったようだけれど、うまく言語化できないから、「動画を見ていたいから学校を休みたい」と言っていたのです。

このケースでハッキリしている事実は、①本人は学校に行きたくないこと、②むりをさせたら持病が悪化して入院したこと。でも、その間に③「動画を見ていたい」という本人の声があるために、よくわからなくなってしまう。3つある事象のうち2つがあきらかなら、その2つに即した環境調整をすることが必要で、この場合は学校に行かなくてもいいようにしてあげることです。

起きた事実だけを見ることによって、今からどうしたらいいかが見えやすくなるのです。

「気になっていることある?」「つらいことある?」と聞くと、聞かれた子どもがネガティブになってしまうんじゃないかと思う方もいるようですが、それは違います。一人で抱えていることで、どんどん悪い方に発展していってしまうし、自分の気持ちを吐き出して整理できれば、多くの子どもは、自分で対策を考え始めます。それを親と一緒に考えるということがいい支援の方法だと、私も専門家から聞いています。

とにかく、異変に気づいたら声をかけて、学校に行きたくないと言ったら、理由を聞くことが、子どもの事実を把握するための最大の方法でしょう。ケースにも寄りますが、それでかなり、悪い方向へ行ってしまうリスクは軽減されるはずです。

子どもの現実がわからなくなったら、まずは保護者が第三者に相談する

子どもの様子が気になるけれども、どう声をかけていいかわからない、どういうアクションをしていいのかわからない、と感じた時には、保護者自身が、相談できるところを見つけてほしいです。

夫婦で話し合うのもいいとは思いますが、第三者に相談したほうがいいでしょう。それは、先ほど話したように、自分の気持ちと事実を分けて考えやすくなるからです。親だからこそかえって見えない、我が子のことだから見落とすこともあります。第三者に相談すると、違う視点から見ることで、自分たちには見えないことが見えてきます。

フリースクールや不登校の親の会には、気兼ねなく相談してみていいと思います。あるいは、スクールカウンセラーや学校のソーシャルワーカーに話をするのも、もちろんいいし、メンタルクリニックのカウンセラーも相談できる場所になります。

一般的なメンタルクリニックなどで、子どものことでカウンセリングを受けるというと、子どもを連れて行かなくてはと思われるかもしれませんが、まずは保護者だけが話をしにいくのでいいのです。大人だって、自分だけで抱え込まないことが大切です。

子どものことを相談できるメンタルクリニック、心療内科、カウンセラーなど心の専門家に話してみてください。そのうえで、子どもにどう話しかけたらいいか、何をどう伝えるかということも相談できるでしょう。

「こんなことで相談していいのかな」と思ったり、逆に、思ったよりも深刻だって言われたらどうしようと不安だったり、いろいろ思うことはあると思いますが、まずは気兼ねなく聞いてみることです。

万全な親なんていませんし、ひとつずつ、心配なことがあるたびに学びながら、進んでいけばいいのでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

夏休みが終わるころになると、夏休み前から「学校に行きたくない」と思いつつ頑張ってきた子どもほど緊張感を高めます。子どもの様子が気になったら「心配なことはある?」と声をかけることが保護者にできる大事なこと。そのときに、子どもの事実を子どもの目線で見るようにしたいものです。また、それでもどうしたらいいかわからないと思ったら、まずは保護者自身がカウンセリングを受けるとよいでしょう。ひとりで抱え込まないことは、子どもだけでなく保護者も同様です。

『「学校に行きたくない」とこどもが言ったとき親ができること』石井志昂著/ポプラ社

「不登校新聞」で20年以上にわたって取材をしてきた石井志昂さんの新著が8月12日に発売されました。ご自身の不登校の経験、取材を通じて出会った様々な大人たちの言葉、講演会での保護者の方との交流などから、多角的な視点で「不登校」を見つめます。不登校で苦しい思いをする親子にとって、たくさんのヒントが詰まった1冊です。

プロフィール

石井志昂

石井志昂

『不登校新聞』編集長。1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。現在までに不登校や引きこもりの当事者、親、識者など、400名以上の取材を行っている。

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