日本で英語をどう習得しましたか? 元国連職員の著述家めいろまさんに聞きました

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日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験があり、現在はイギリス人の夫と小学1年生の息子さんとイギリスに在住している著述家、谷本真由美さん。子どものころ父の働く姿から「英語はできたほうがいいのだな」と実感したとのこと。自身が英語を習得したいと思ったきっかけ、実際にどのように行動したのか、また息子さんが日本語を習得していく過程で感じたことなどについて、話を伺いました。

この記事のポイント

父や父の同僚が英語に苦労していた姿を目の当たりに

——谷本さんが英語を勉強したいと思ったきっかけについて教えてください。

私の父は自動車会社のエンジニアだったのですが、当時の自動車のエンジンはドイツやアメリカが進んでいて、最新のデータや情報を解読しないことには仕事が進められないという現状がありました。「英語を読むことはできるけれど、話せない」「相手が何を言っているかわからない」という状況で海外出張に行かなければならず、父も父の同僚もよく「英語ができないと困るよ」と言っていて、父自身も英語を勉強している姿を見て、子どもながらに「ああ、英語はできたほうがいいのだな」と感じていました

また、私の実家が米軍基地の近くにあり、英語が周りにある環境だったということも大きかったと思います。幼稚園ではネイティブの先生から英語を教えてもらいましたし、英会話教室にも通っていたので、自然と「自分も英語を勉強して、外国に行ってみたいな」と思うようになりました。

「好きなことを極めたい」が英語習得への意欲に火を付けた

——小さいころから英語を勉強していても、身に付けるにはたくさんの努力が必要だと思います。どうやって習得していったのでしょうか。

私の場合は、小学校2年生のころ、アメリカの映画と音楽にハマり始めたのが大きかったです。もっと歌詞の内容や映画の内容を理解できるようになれればいいなと思い、そこから本格的に勉強を始めました。

小学校高学年になると、自分で外国の人とやりとりをしてみたくなり、自分でペンパル(文通相手)を探してきました。図書館で借りた外国の人に手紙を書く方法が書かれた本を参考にして英語で手紙を書いてみたはいいけれど、本当に書けているかどうかわからない。そこで、父の友人で海外駐在の経験のあるかたに、無理やり添削をお願いして、アメリカ人やドイツ人の子どもと手紙でやりとりをするようになりましたね。

そして中学生になると、ヘビーメタルとハードロックにハマってしまい、趣味を極めるために、アメリカのヘビーメタル雑誌のペンパルコーナーで同じバンドが好きな人を探して、手紙やデモテープの交換を始めました。
インターネットがない時代なので、海外のデビューしたてのバンドやマイナーなバンドの音源は日本では手に入らなかったのです。
高校生になると、台湾人のペンパルが、「アメリカでバンドの追っかけをしていた友人がいるから、話を聞きに遊びに来ないか」と誘ってくれたので、一人で台湾に行き、2週間居候をしたりもしました。

それがきっかけで、その後さまざまな国を訪問したり、滞在したりするようになっていったのですが、もともとは「趣味を極めるために込み入った話をしたい」「ハリウッドに住むにはどうしたらいいか知りたい」「バンドの追っかけになるにはどうすればいいか教えてほしい」など、趣味を追求するために英語ができるようになりたい、というモチベーションでしたね。

——そんな谷本さんに対してご両親はどんな反応でしたか?

私の両親は放任主義で、好きなようにすればいいという感じだったので、何も言われませんでした。勉強に関してもテストの点も見なければ、成績もまったく見ないし、塾に行きたければ行けばいい、というスタンスで、だんだん自分が不安になってしまい「自分で何でもやらなければ」となったのが、結果的にはよかったのかもしれません。

——子どもが海外に行ってみたいと言ったら、親はどのようなサポートをするといいのでしょうか?

子どもが将来海外に行ってみたいと言い出したら、親が始めから何でもお膳立てするのではなく自分でやらせたほうがいいです。海外旅行で学ぶところが多いのは自分で飛行機のチケット予約をして、宿を探して知り合いを探して、地図を見ながらいろんな所に行く、というところです。語学に限らず、興味・関心が高いこと、好きなことは放っておいても子どもが勝手に極めていくのではないでしょうか。

日本のアニメがきっかけで、息子は日本語に興味が

写真は息子のみにろまくん(愛称)0歳のころの様子。

——現在、イギリス在住とのことで、息子さんは普段英語で生活されているのだと思いますが、息子さんが日本語を習得するためにしていることを教えてください。

息子は現在小学1年生です。日本語を聞くのは得意なのですが、日本語の文字を認識することや書くのが苦手なので、毎日ひらがなとカタカナと漢字の書き取りをしています。また、私が日本語で話したことを頭では理解できていても、日本語で返せないことが多いため、日本語のフレーズを一緒に言ったり、息子が英語で話した言葉を日本語に言い換えて「日本語で言ってみてください」と練習したりもしています。実は息子は日本のテレビやアニメが大好きなんです。さまざまな日本の番組や作品を、自分でアプリを使って探し出して見ているので、そこから日本語が上達してくれるといいな、と思っています。

——谷本さんが映画や音楽が好きなことがきっかけで、もっと現地の言葉で理解したい、話せるようになりたいとなったように、息子さんにもその傾向があるのでしょうか。

完全にその傾向がありますね。最初は日本語を勉強するのは難しいし、書くのはわからないから嫌だと言っていたのですが、アニメを見始めたらハマっちゃって「『進撃の巨人』を日本語でちゃんと理解できるようになるために日本語をやりたい」「次に日本に行く時には、ぜひ秋葉原というところに行って、メイド喫茶でメイドの人とトークをしたい」とか言っています(笑)。日常系アニメの世界観にもあこがれていて、いわゆるアニ研に入るためにはどこの学校に行けばいいのかと聞いてくるし、日本に住んでみたいようですね。

——そういう息子さんの姿を見て、谷本さんはどう感じていますか。

コロナが収まったら、ぜひ日本の学校に通わせてみたいですね。特にお行儀のよさをみてほしいと思いますし、公立の学校に行って給食の配膳や掃除、全校集会、運動会、文化祭などを体験してほしいです。イギリスにはそういうものがないですし、本人もアニメを見てあこがれがあるので、体験してほしいなと思います。趣味に関しては、自分の親と同様放任です。がんばってください! という感じですね(笑)。

まとめ & 実践 TIPS

親が英語に苦労している姿を見せたり経験を話したりすることは「英語はできたほうがいい」と子どもながらに理解しやすいのかもしれません。語学に限らず、趣味のために何かをできるようになりたいというモチベーション、行動は大きな糧となります。親が何でもお膳立てするのではなく本人の好きにさせ、自分でやらせてみるといいのではないでしょうか。

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取材・文/本間勇気

プロフィール

谷本真由美

谷本真由美

1975年神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院国際関係論修士、情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関情報専門官、外資系金融機関などを経て、現在はロンドンに住む。Twitterで@May_Roma(めいろま)として知られる。近著に『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス)、『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)、『みにろま君とサバイバル 世界の子どもと教育の実態を日本人は何も知らない』(集英社)など。

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