海外赴任、子どもの教育については言葉・習慣・学校選択が大きな課題
アンケート期間 2011/08/17~2011/08/23 回答者数:663人
アンケート対象:本サイトメンバー 小1~中3の子どもがいる保護者
※百分比(%)は小数点第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある
今回のテーマは、海外赴任とお子さまの教育について。お子さまをお持ちで、海外在住経験のあるかたに、アンケートにご協力いただきました。今回は赴任にあたって、何に対して不安や疑問を感じたか、またどのような情報を求め、どのような方法で集めたかなどを紹介します。次回、帰国に関しての回答結果をご紹介します。
子どもと一緒に赴任の場合、低学年が多い
まず、子どもが生まれて以降、保護者が日本から海外への赴任を経験したかどうかを伺いました。また赴任の際、お子さまを連れて行ったかどうか、連れて行ったとしたらお子さまは何歳だったかについても、お聞きしています。
【図1 あなたは今までにお子さまのいらっしゃるときに日本→海外赴任を経験されましたか? ※お子さまを帯同するかどうかは別としてお答えください】
【図2 図1で「経験した」と回答したかたにお聞きします。その経験は以下のどれに当てはまりますか? ※一番最近のことについてご回答ください】
【図3 一番最近の日本→海外赴任の際、一番上のお子さまの学年は以下のどれにあてはまりましたか?】
今回のアンケートでは、「子どもが生まれて以降、日本から海外への赴任を経験したことがある」という保護者は約43%(図1参照)。半数弱という結果になりました。
海外赴任経験のある保護者のうち、「最初から子どもを帯同した」という保護者は約68%、「途中から子どもを呼び寄せた」という保護者は約13%でした(図2参照)。つまり、お子さまと一緒に赴任するケースが約80%を占めることになりますね。
一方、最近の海外赴任時のお子さまの年齢を見ると、小学校入学前が過半数であることがわかります(図3参照)。お子さまが小さいことも、お子さまを連れて海外に赴任する保護者が多くなる理由の一つではないでしょうか。
6割以上の保護者が、海外赴任にあたって子どもの教育や生活について不安あり!
続いて保護者が日本から海外に赴任する際、お子さまの教育や生活についてどの程度不安や疑問を感じていたかを伺いました。保護者から見た、海外赴任に対するお子さまの感じ方についてもお聞きしています。
【図4 海外赴任について、お子さまの教育・お子さまの生活についてどの程度不安・疑問がありましたか?】
【図5 海外赴任について、お子さまの感じ方・意思はどのようでしたか?】
「海外赴任にあたって、子どもの教育や生活に対して疑問・不安があった」という保護者は、全体の6割以上(図4参照)。今回の調査では、お子さまの教育や生活に関する疑問や不安を抱きながら海外に赴任する保護者が多い結果になりました。
では、お子さまの教育や生活に対する疑問・不安とは具体的にどのようなものでしょうか。以下にご紹介します。 ※()内のお子さまの年齢は、海外への赴任時現在です。
●赴任期間が終了すれば、子どもは高校生。日本の大学への進学を希望していたので、帰国して日本の高校に編入することになります。受け入れてくれる高校がすぐ見つかるだろうか、受験勉強についていけるだろうか、といった不安がありました。ずいぶん先のことを心配していると自分でも思いましたが、正直なところわたしには、言葉や生活習慣といった直近の問題よりも、海外赴任が子どもの将来にどう影響するかのほうが気がかりだったんです(中3の保護者)
●パートナーの海外赴任のときが、うちの子にとって初めての転校でした。赴任先は英語圏だったのですが、子どもはもちろん英語を話せません。言葉の通じない土地になじめるだろうか、学校で友達はできるだろうかといった不安でいっぱいだったことを覚えています。また、赴任期間の長さがわからなかったため、不安はさらに大きくなりました。子どもは中学受験を希望していたので、その年齢まで赴任が続く場合はどうしようかと悩んだんです。わたしと子どもだけが日本に帰って日本の中学校を受けるか、赴任先の中学校を受けるか……。そもそもパートナーと一緒に赴任するのを見合わせたほうが子どもの将来のためだろうか、と思ったことさえあったほどです(小6の保護者)
●最大の不安は、赴任先で子どもが通う予定だったインターナショナルスクールになじめるか。うちの子は当時、日本語しか話せませんでしたが、言葉の問題だけではありません。日本人とは生活習慣も価値観も異なる先生やクラスメートと良好な人間関係を築くことは、さぞかし大変だろうと感じました。早く現地の学校や生活に慣れてほしいと願う半面、いずれは日本に戻るため、帰国後はあらためて日本の学校や生活に慣れるという負担を子どもに強いることになってしまうと、何だか申し訳ない気持ちになりました(小5の保護者)
●うちの場合、子どもが十分に日本語を話せるようになっていない年齢で、海外に行きました。もちろん永住するわけではなく、赴任期間が終われば日本に帰国します。だから、いかに日本語を覚えさせるかが課題でした。万が一、子どもが日本語をすっかり忘れてしまったらどうしようと、不安になったことも一度や二度ではありません(幼稚園・保育園の年長の保護者)
●うちの子は体が弱く、しょっちゅう熱を出したり、お腹をこわしたりしていました。夫の赴任先は、日本に比べると医療機関が少なく、衛生面にも課題がある地域。おまけに赴任する少し前には、空気感染する伝染病が現地で流行していたんです! そんな地域で育児ができるだろうかという不安はもちろんありました。でもわたしは、子どもの健康管理にとにかく細心の注意を払うことに必死になろうと、できるだけ前向きに考えました(幼稚園・保育園の年中の保護者)
●気がかりだったのは、子どもの治療面。赴任先は、日本ほど病院が多くなく、医療設備も整っていなかったんです。母親であるわたしが、その地域の公用語を思うように話せないため、子どもの病気やケガの際に症状を説明できるのだろうかという気がかりもあり、不安で胸がいっぱいでした。またその地域は、日本に比べると治安も良くなく、何か事件や事故に巻き込まれたらどうしようと、ずいぶん心配しました(乳幼児の保護者)
●初めての子どもが1歳になったばかりのとき、パートナーが海外に赴任することになり、家族で引っ越しました。言葉がわからず、親類も知り合いもいない土地で子育てをすることは、とても心細かったです。日本に比べて、医療設備が多くない点、自宅や周辺の治安と衛生環境が良くない点を考えると、ますます不安になりました(乳幼児の保護者)
お子さまの年齢によって、保護者が不安に感じる点は大きく異なりました。
小学生以上のお子さまをお持ちの保護者は、「子どもが現地の言葉や生活習慣、新たな学校生活になじめるか」、また受験や編入といった「帰国後のこと」を考えて不安になるケースが目立ちました。
小学校に上がる前のお子さまをお持ちの保護者は、赴任先の治安や医療設備、衛生環境などの課題から、お子さまの健康を心配しています。「日本語を忘れてしまうのではないか」という不安も寄せられています。
また、保護者から見て、お子さま自身は海外赴任に対してどう感じていたと思われるかを伺った図5では、「海外赴任に前向きだった」は約3割、「後ろ向きだった」は1割強でした。最も多かったのは、4割以上を占めた「幼すぎて海外に赴任するという事態がわからなかった」でした。図3で見たように、今回のアンケートでは「小学校入学前」に海外赴任を経験するお子さまが6割近くに達します。これを考えると、自分の状況を判断して反応を示せないのも無理はありませんね。
赴任先の「生活全般」と「子どもの学校・進学」についての情報を求む!
では保護者は、海外赴任にあたってどのような情報を得たいと思っていたでしょうか。どのように情報を入手したかと合わせて伺っています。
【図6 海外赴任にあたって、主にどのような情報を得たいと思っていましたか? あてはまるものをすべてお選びください】
【図7 海外赴任にあたっての主な情報入手先は以下のどれにあてはまりますか? あてはまるものをすべてお選びください】
【図8 海外赴任にあたって、子育てや教育についての情報は事前にどの程度得られましたか?】
最も多かったのは、「衣食住など子どもの生活全般についての情報がほしかった」という保護者(図6参照)。そして、わずかの差で「子どもの学校・進学についての情報がほしかった」という保護者が続きました。こうした情報を必要とする気持ちは、図4でご紹介した保護者からの不安からもわかりますよね。
また図2で見たように今回の調査では、お子さまと一緒に赴任するケースが大半でした。それを考えれば、赴任先でのお子さまの生活全般についての情報、学校生活や進学についての情報を求める保護者が多いことは自然です。
一方、情報の入手先は、「保護者の勤務先」と「インターネット」とがほぼ同じ割合でトップ(図7参照)。次いで「友人・知人」でした。そして、半数近くの保護者が「子育てや教育についての情報を得られた」と感じていました(図8参照)。情報が得られれば、ある程度は不安や疑問も解消されるのではないでしょうか。
もっとも、「子育てや教育についての情報が不足していた」と感じる保護者も4割以上。今回のアンケートでは、思うように情報を得られず、不安を抱きながら海外に赴任する保護者も少なくないことがわかりました。
現地の学校になかなか慣れることができないお子さまも!
次に、保護者から見た、お子さまが現地の学校に慣れる大変さについて伺いました。
【図9 お子さまにとって、海外赴任先の学校に慣れるのはどの程度困難でしたでしょうか? 近いものをお選びください】
※もともとの質問では「現地」でしたが、前出の「現地(海外)の学校」と区別するため、「海外赴任先の学校」に変えています。
「子どもが海外赴任先の学校に慣れるのは困難ではなかったと感じる」という保護者は約35%、一方「困難だったと感じる」という保護者は約30%。今回のアンケートでは、両者に大きな差はありませんでした。
お子さまが通ったのが現地の日本人学校だった場合、「先生も友達も日本人だから、それまで通りコミュニケーションができた」(小4の保護者)、「日本にいるときとほぼ同じ環境だったため、スムーズにクラスの雰囲気に溶け込めた」(幼稚園・保育園の年少の保護者)といった声が目立ちます。 ※()内のお子さまの年齢は、海外への赴任時現在です。
現地の子どもと一緒に、現地の言葉で授業をする学校に通った場合でも、必ずしも意思の疎通が困難だったわけではないようです。「子どもは、赴任先の公用語、英語で授業をする学校に通ったんですが、その学校にはスペイン語圏やドイツ語圏など、母語が英語でない地域からの子どもも多く、英語を話せない子どもをいかに柔軟に受け入れるかというノウハウが蓄積されていたようです。現地の子どもから積極的にコミュニケーションを図ってくれて、うちの子が活発な性格だったこともあり、すぐにうち解けました」(小2の保護者)、「日本人がほとんどいなかったため、先生も生徒もうちの子に興味津々。あっと言う間に友達ができました」(小1の保護者)といった声が少なくありません。
では、「子どもが海外赴任先の学校に慣れるのは困難だった」という保護者からはどのような声が寄せられているでしょうか。
●言葉がわからないうえに、生活習慣も価値観も違う現地の子どもたちに対して、うちの子はなかなか心を開けませんでした。「学校に行きたくない」と口にしたこともあったほどです。異文化コミュニケーションの難しさを感じました(小6の保護者)
●いろいろな国籍の友達がいること、日本とは学校や授業の雰囲気がずいぶん違うことなどについて、子どもは「楽しい」と言って通っていました。ところが、最大の壁は言葉です。現地の言葉を話せなかったうちの子は、思うように意思の疎通ができず、ストレスを溜めてしまいました。授業中に泣き出してしまったことも一度あったようです。ただ、それも最初の1か月くらいのこと。少しずつ、でも確実に言葉を覚えていくにつれて、友達も増えていきました(小2の保護者)
●言葉がわからず、半年ほどは学校でほとんど口をきかなかったそうです(小1の保護者)
●うちの場合、現地の子どもと同じ幼稚園に通わせました。小さな子ども同士、言葉は通じなくても身振りや手振りでコミュニケーションをとるうちに、すぐに仲良くなり、その点では問題はありませんでした。困ったのは、食事。うちの子は、幼稚園の給食をまったく受けつけなかったんです。家庭でも食事に現地の調味料を使うなど少しずつ慣らしていき、ようやく少し食べられるようになってきたところです(幼稚園・保育園の年少の保護者)
言葉をはじめ、食文化、価値観など生活のさまざまな面で違和感を覚えてしまったという声が多数でした。
日本から海外への赴任、保護者自身も知識が少ないことから「言葉の問題」や「文化・習慣の違い」「学校選び」に対する不安が多く寄せられました。お子さまが少しでも早く日常生活や学校生活になじめるよう準備をするうえで、多くの保護者が事前の情報収集を重要視していました。ただ今回の調査では、「なかなか情報が集まらずに苦労した」という保護者が目立ち、不安を抱きながら現地に入らざるを得ない様子が伝わってきます。
情報源としては、「現地での生活が長い人の意見を参考にした」という声が多数。「友人・知人や保護者の勤務先の人に尋ねる」ケースに加えて、「インターネットなどを活用して先輩保護者に相談する」ケースも多く見られました。
特に学校は、お子さまの日常に大きく影響します。だからこそ、「新たな学校生活になじめるだろうか」「すぐに友達ができるだろうか」と心配する保護者が多かったのではないでしょうか。そして赴任前は気がかりでも、「実際に赴任してみると、子どもは割とスムーズに現地の学校の雰囲気に溶け込めた」というケースが少なくないようです。
海外赴任は、保護者にとってもお子さまにとっても大きな環境の変化です。それでも多くの保護者が、「確かに大変ではあるものの、貴重な経験だった」と前向きに受け止めていました。経験者のアドバイスやメッセージをぜひ参考にしてください。