【幼児英語教育の考え方・2】「家族と」「先生と」。相手があるやりとりから言葉は身につく
引き続き、小中高等学校を中心に英語教育研究を行う、ベネッセ教育総合研究所 主任研究員(グローバル研究室)・加藤由美子氏のお話です。今回は「英語で一緒に遊ぶ・英語を学ぶ相手」にスポットをあててみましょう。
「愛着対象」とのやりとりが大切
英語学習のみならず、赤ちゃんから幼児の学びには「人とのやりとり」が大切です。DVDにももちろん使い方による効果はありますが、「DVDだけを見ていたら英語ができるようになる」といった考えは、大きなまちがいです。ママ、パパ、保育士の先生、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟など、愛着を持って関わってくれる人と、意味のあるやりとりを交えた遊びをする中で、その時の会話は記憶に刻み込まれていきます。そのお手伝いをしてくれるものの一つが「教材」だと考えましょう。ですから、「教材があれば英語を覚えられる」という考え方ではなく、教材をうまく使って英語で遊ぶことが大切です。
なお、「愛着対象」が関わることの大切さは、何歳になっても同じこと。「言葉」が「人と意味をやりとりするもの」である限り、生身の人間が相手であることがベストなのです。そういった意味では、ママと二人でやりとりすることも、体験型の教室で先生やお友達とやりとりすることも、それぞれのメリットがあります。おうちなら赤ちゃんの機嫌のいい時を選べて、いつでも思いついた時にできますし、教室であれば、専門家である先生と一緒に集中的に英語に触れ、言語習得の可能性を高めることができますね。これは、大人になっても同じことです。
ほめる大切さ。ポジティブな感情の中で英語に触れる
それから、ポジティブな感情を持つということも重要です。「ほめられる」という体験を十分にした人は、自己肯定感、つまり自分は大切な存在であると思う気持ちを高め、人生を豊かに過ごせるようになるといわれています。言葉がわからない段階でも、感情は伝わります。かといって、「ほめたらどんどん英語の力があがるのでは?」という「期待」はしないことです。年齢や個別の発達に注意して、無理させすぎず、少しずつできることにチャレンジすることが大切です。他の誰かとの比較でほめるのではなく、「その子の中で新しくやったこと・できたこと」をたっぷりほめてあげましょう。
「英語で遊ぶ」ことで、学習を続けるための「素地」を作る
「英語で遊ぶ」こととはどういうことでしょうか?たとえば、CDで英語の音楽を聴くなら、保護者のかたが「リズムに合わせてお子さまの体を動かす」「全部歌えなくとも、サビだけでも一緒に歌う」ということができます。おもちゃを手に取って遊ぶなど、普段の遊びの中に英語が入ってくればいいわけです。そうやって、英語の音のリズムを「体験」の中に織り込んでいくわけですね。
絵本を読む時(保護者のかたが読めなくても一緒に見るだけでもよいのですが)も、「あ、○○ちゃんの好きなワンちゃんだね。」という気持ちを込めて、お子さんの目を見ながら"Dog"と言って、絵本に載っている犬を指さしてあげましょう。"Dog"という単語を覚えさせようという気持ちで何度も聞かせたりするのではなく、「これは○○ちゃんの好きなワンちゃんだね」という気持ちを共感することが、言葉によるやりとりの意味するところです。気持ちのやりとりは、実は日本語でも英語でも言葉に十分表わすことができない幼い子どもほどできるものです。そして、その経験こそが、のちの言葉の発達に大切な素地となります。