「1人1台端末」は今後どうなる?どうする!?

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国が進める「GIGAスクール構想」によって、小中学校では子ども1人1台の情報端末が一気に普及しました。ただし、その使い方には、まだまだ課題があります。一方で、そろそろ端末の更新時期を迎える自治体なども出始めます。今後どうなるのでしょうか。

この記事のポイント

交付税措置に国費を加え整備

まず端末整備について、経緯を振り返っておきましょう。
公立学校については、文部科学省と総務省の合意に基づき、2018年度から「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」が進行しています。3クラスに1クラス分程度の端末整備などを目標に、地方交付税で毎年1,805億円を措置するものです。

裏を返せば当時は、1人1台など遠い先の話と思われていました。しかも交付税は、国が使い道を限定できないため、自治体が橋や道路など別の予算を優先しても仕方がないものでした。

そんななかで2019年12月、国が打ち出したのがGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想でした。交付税措置分に加え、同年度の補正予算による国費を投入することで、23年度までに国公私立を問わず、小中学校で1人1台端末と、高校も含めて高速大容量通信などの環境を実現しようというものです。

その矢先に新型コロナウイルス禍が起こったため、計画も前倒しされることになりました。結果として2021年度までに、ほとんどの小中学校で導入されました。

自治体や学校で活用に大きな差

課題もあります。まず整備を急いだため、どれだけ授業で活用できているかは、自治体や学校、さらには先生によっても開きがあることです。

全員が端末を持つことで、自分で学習を進めたり、調べたりする「個別最適な学び」や、教員と子ども、子ども同士などのやり取りも活発になる「協働的な学び」が進むことが期待されます。しかし文部科学省の調査を見ても、都道府県レベルでさえ差が大きく、まだまだ全国に等しく広がっている状況とはいえません。

1人1台端末を持ち帰れば、学校の延長で家庭学習ができることになります。しかし、いまだに持ち帰りを禁止したり限定したりしている学校が少なくありません。

新計画に向け検討開始

端末には更新時期があります。自治体の首長などは、引き続き国の負担を要望しています。国は交付税の5か年計画を2年間延長する一方、2025年度以降の計画は別に検討することにしました。
2023年6月8日、新たな計画を検討する中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)の作業部会が発足しました。24年度中に結論を出し、新たな計画の策定につなげたい考えです。

まとめ & 実践 TIPS

「チャットGPT」など生成AI(人工知能)に代表されるように、今後ますます発展するICT技術に対応する必要性が、社会で高まっています。
学校も例外ではありません。
端末を使えば使うほど蓄積されるデータを、子どもの学習や生活指導、心身の健康に生かす「教育データの利活用」も課題です。
家庭の経済格差が学力格差につながる心配もあるなか、今後の端末整備をどう考えるか、国民的な議論が求められます。

教育の情報化の推進(文部科学省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1369635.htm

中教審「次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ」第1回会議資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00554.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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