「失敗して用紙が足りない!」毎年大変な子どもの書き初め。なんのためにあるの?
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「お手本を見てもうまく書けない」「ふざけて服がスミだらけに……」と毎年大変な思いをするご家庭も多い、子どもの書き初めの宿題。ふだん書道に親しんでいるお家ならともかく、突然リビングで墨と筆を使うとなっては準備も大変です。そもそも何のためにあるのでしょうか。
書き初めは、平安時代の宮中行事にルーツを持つといわれる日本の正月行事。せっかくなら子どもが一年の目標を考え、文字について興味を持てる機会にしたいものです。「今年も大変だった!」という体験談と、オンライン書道教室も行っている書家・福田房仙先生のメッセージを紹介します。
失敗談その一:用紙・墨が足りない!
(子どもが小学5年生・11歳)「コツがわからなくて、墨と書き初め用紙が大量に必要に」
(子どもが中学1年生・13歳)「書き初めの宿題を思い出して、墨汁がないことに気付いた息子。冬休み最後の日の深夜に言われても……」
書き初めは1月2日に行うのが一般的ですが、実際には宿題提出期限ギリギリにとりかかる子どもも。小中学校から支給される用紙は数枚のことが多く、「失敗して足りなくなった」「紛失した」事態になると困ってしまいます。いきなり提出する用紙には書かず、本番用ではない半紙などで練習しましょう。書き初め用紙はホームセンターや通販でも購入できますが、用紙サイズは地域によって多少異なるので注意が必要です。
これでOK
名前を書くときにも半紙が便利
せっかく上手にかけても、名前を書くときに手で汚してしまってはがっかりしてしまいます。題字の上にきれいな半紙を置くと汚れ防止になり、まっすぐに書く目安にもなります。
失敗談その二:服や家具が墨だらけに……
(子どもが小学1年生・7歳)「白い服ではじめてしまい、墨が飛んで黒くなってしまった」
墨がボタボタたれる状態で筆を使ったり、筆を持ったままふざけたりすると、服や家具が汚れてしまうことがあります。ヒラヒラした部分がなく汚れてもかまわない服装に着替え、道具を広げる前に新聞紙などで広めにカバーしておきます。硯の近くには雑巾も準備しておきましょう。汚したくないからといって筆に墨を少ししか付けないのはNG。しっかりと含ませてから余分な墨は硯の縁で取り、筆を整えます。
これでOK
使った筆はしっかり洗おう
服や部屋を墨で汚さないためにも、まずは筆や硯から片付けます。筆はシンクなどで水を流しながらしっかり内側まで洗います。容器に水を貯めて洗うと墨が飛び散りにくく。子どもが学校で使った後洗い忘れてカチカチになってしまった場合はぬるま湯で洗ってみてください。洗ったあとの筆は吊るして乾かします。
失敗談その三:うるさく言い過ぎて、子どものやる気がゼロに
(子どもが小学3年生・9歳)「ひらがなのバランスがとりづらく、指摘したらやりたがらなくなってしまった」
(子どもが小学2年生・8歳)「書道を習っているので張り切りすぎてしまい、思い通りに書けず癇癪を起してしまった」
書き初めの宿題はお手本を見て書くことが基本ですが、不慣れな太筆で見本に似せて書くのは大変です。まずは練習用紙に好きに書かせてみて、お手本と見比べてみましょう。保護者が細かく指摘すると、子どもが楽しんで書くことができません。メリハリがついている、伸び伸びと書けている部分など良いところを見つけてほめてあげましょう。子ども自身が文字の配置や横棒の長さなど、「こうするとかっこよくなる」ところを見つけられると良いですね。
これでOK
姿勢を正し、集中して
学校での書道の時間は机で書きますが、書き初めは床で書いたほうが全体のバランスがとりやすくなります。書きたい字形をイメージしたら、姿勢を正し、集中して一気に書くと勢いが出ます。ただし、急いで書いて線が細くなってしまっている場合は、落ち着いて書くよう声をかけてあげてください。
これでOK
左利きの場合は?
実は漢字もひらがなも右手のほうが書きやすくなっており、ペンは左手、筆は右手で持つという人も多いです。とはいえ、書道家には左利きのかたも。本人が書きにくいと感じなければ無理に矯正する必要はないでしょう。右上がりの横棒などに書きにくさがあるようなら、右手で試してみるのもおすすめです。
「文字に興味が持てる」書き初めの効果って?
(子どもが小学2年生・8歳)「子どもが一年の目標について真剣に考えるようになって良かった」
(子どもが小学5年生・11歳)「書き初めに《優勝》という文字を書いたら、それまで優勝したことがなかった剣道の大会で優勝することができました」
準備や片づけなどが必要になる書き初めですが、「集中力を養える」「文字について興味が持てる」といったメリットも。「ふだんから文字をていねいに書くようになった」という声も聞きました。また、家族で子どもの書き初めを見守ることもいい思い出になります。毎年写真を撮っておくと成長も感じられますね。
最後に、書家・福田房仙先生からいただいた子どもたちへのメッセージを紹介します。
「書き初めは、昔から新しい年の初めに自分のこれからの目標やこうなりたいという願望や抱負を書くものと言われています。学校から宿題として与えられると、《やらなくてはいけないもの》のように感じてしまう子もいるでしょう。書道を習っている子ばかりではありませんから、苦痛に感じ、どうでも良いから書けばいいと考えているご家庭もあるかもしれません。
学校から与えられた宿題であっても、気分を新たにして書き初めを書くことで、1年間気持ち良く過ごせるようになることが期待できます。高学年になると、抽象的に思考する能力も養えていることでしょう。高学年の書写指導では、手本を見たうえで、今まで体系的に教わった技法を使い自分で考えて書けると思います。この文言で1年間をどう過ごしたらいいのか? 賞を目指すのでなくご家庭で会話しながら書くだけで、書き初めを書く意義があると思います」(福田房仙先生)
まとめ & 実践 TIPS
「宿題だから」と片付けてしまいがちな書き初めですが、子どもが落ち着いて取り組むことができれば、集中力も伸ばせるイベントに。題字以外にも、親子で夢や目標を書いてみてもいいですね。
執筆/樋口かおる
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