【家計の確認方法】私立高校へ進学して大丈夫!の判断基準とは?
- 教育費
多くの中学生にとって、初めての受験となる高校入試。学校や家庭で、実際にどの高校を受験するのかを話し合い、決める時期になりました。
保護者としては、子ども本人の希望を尊重しつつ、校風や教育環境、そして学費が気になるところです。公立を志望していても、状況によっては私立を視野に入れる必要があるかもしれません。
私立の学費は確かに高いのですが、家計的に対応できるかどうかを知っておけば、急な進路変更にも慌てずにすみます。今回はその判断基準について、考えてみましょう。
ご自身のお子さまの受験サポートを経験されたファイナンシャルプランナーの中上さんに聞きました。
私立進学もあり得る高校受験の土壇場
受験校は、一般的に模擬試験の結果や学校の成績、本人の希望などを総合的にみて、目標校、実力相応校、抑え校などを決めることになります。
でも受験する本人は中学生。視野はまだそれほど広くなく、多感な時期です。情報が多すぎて選びきれない、直近の模試などの結果が、思いのほかよかったりそうでなかったりして決めづらいなど、悩ましい状況も起こり得ます。
実際、過去のわが家の例でも、公立の中では一番気に入った高校のレベルが本人の実力よりも少し高く、「受験だけでもさせてほしい、ダメなら私立に行かせてほしい」と言われたことがあります。
幅広い情報収集がいざという時にも役に立つ
そこでわが家では、折衷案として本人が憧れていた別の私立高校の受験を認め、公立高校は実力相応校に、公立高校の合格発表まで入学金等の納入を待ってくれる、抑え校の私立を受験するという方法を提案しました。
学費をはじめ、校風、カリキュラム、学校生活、卒業後の進路など、候補となる高校の情報を事前に集めておけば、保護者が子どもに寄り添いながら話し合うこともできるでしょう。
私立高校の入学金などの納入期限は学校ごとに異なります。抑え校については、「延納制度」があるかどうかは重要なポイントです。同じ私立高校でもコースによって延納できない場合もあるので、条件や手続き方法、期限などについてよく調べ、漏れがないようにしましょう。
<高校入試情報サイト> 私立高校の「延納制度」について知りたい
https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/article/closeup/00/1368122_13514.html
私立高校の学費を確認しよう
私立高校の学費も学校ごとに異なります。納入金の名目には、主に次のようなものがあります。各高校HPの学費コンテンツや生徒募集要項で確認しましょう。併せて受験料についても調べておくと安心です。ちなみに私立高校の受験料平均額(2020年度 全日制:文部科学省)は、1万6,269円となっています。
- 入学金:入学時のみ
- 授業料:基本的に学期ごとなどの分割納入が可能
- 施設設備費:「入学時のみ」と「毎年必要」の場合あり。空調費などを別途納入するケースも
- その他:諸会費(保護者会費、生徒会費等)、実験実習費など
文部科学省の調査によると、私立高校の初年度学校納付金の全国平均額は、74万8,924円(2020年度)。そのうち授業料は43万3,991円となっています。一方で、地域差・学校差は大きく、東京都内私立高校(全日制)の初年度納付金平均額は、93万4,995円(2021年度)。全国平均よりも18万円以上多くなっています。
その中にあっても朗報なのは、2020年4月より、私立高校生への就学支援金が大幅に拡充されたことです。家族構成と世帯年収等の条件により、39万6,000円(全日制)が高校に支払われます(公立高校に通う場合の支給額は11万8,800円)。
公立高校に比べて入学金や施設設備費などはかかるものの、授業料の大部分が無償になるので、学費面での私立高校へのハードルは、かなり下がったと言えるでしょう。
参考:令和2年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/1412179_00001.htm
「高校までの教育費は日々の家計から」が基本
一般的に子どもの成長に伴い教育費は増えていきます。中でも中学3年次は受験対策のため、模試代・塾代・教材代など、学校外教育費が膨らむ時期です。文部科学省の「平成30年度子どもの教育費調査」から、中学3年次の学習費を算出すると、52万6,403円(給食費除く)。保護者は年間50万円以上の教育費を負担していることがわかります。
参考:平成30年度子どもの教育費調査(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00102.html
中学校時代の教育費は、基本的に月々の家計から捻出されているはずです。
私立高校に進学する場合でも、教育費は日々の家計から賄うのが原則です。中学3年次の教育費が、受験する私立高校の納付金とほぼ同額であれば、そのままスライドさせることで、支払い見通しは立ちそうです。ここ1年間のお子さまの教育費を集計して、年間の支出額を把握しましょう。
目安となる「貯蓄額の推移」
子どもが中学生以上になると、教育費と養育費、さらに住宅費(ローン)の負担なども相まって、人生の中でも支出の多い時期にさしかかります。この先、子どもの教育費は大学進学時にピークを迎え、卒業まで高止まりの状態が続きます。
家計の収支が赤字になっていないかの判断基準に、貯蓄の推移を確認する方法があります。去年の同じ時期に比べて、貯蓄が増えているかどうか、住宅ローンなどの負債があれば、どの程度減っているかも併せて、そのバランスを見ることです。貯蓄と負債それぞれの金額にもよりますが、貯蓄が一時的に減っても、繰り上げ返済などでローン残額もその分減っているのであれば、現状維持と考えられます。
一方で、貯蓄だけが減っていたり負債だけが増えたり、貯蓄は減ったのに負債が増えた場合には、家計全体を見直す一つのサインと考えましょう。
家計やライフプランのシミュレーションをしよう
普段は日々の家計が気になりがちですが、今後さらに増えていく教育費を賄うためには、家計収支を年単位で把握することが不可欠です。そうすれば、中長期の人生設計(ライフプラン)や軌道修正がしやすくなります。
たとえば、きょうだいのいるお子さまの場合、年齢の間隔によっては教育費の負担が二重、三重になる時期もあります。その時期をあらかじめ把握できれば、貯蓄のピッチを上げたり収入を増やす働き方を模索したり、さまざまな対策を考え、実行する時間ができます。
そこで役に立つのが、家計管理シートやライフプランのシミュレーションができるツールです。以下は、年間の家計収支とライフプランツールの一例です。まずは現状を把握して、家計の将来を見通してみましょう。
参考:家計の収支確認表(日本FP協会)
https://www.jafp.or.jp/know/fp/sheet/
参考:知るぽると ライフプランシミュレーション(金融広報中央委員会)
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/sindan/
転ばぬ先の杖!就学支援金制度や奨学金について調べておこう
高校での授業料の支援については、高等学校等就学支援制度や奨学金制度があります。
高等学校等就学支援金
高校等の授業料を支援する制度で、年収910万円未満の世帯が対象です。590万円未満の世帯はおよそ40万円、590~910万円未満の世帯はおよそ12万円が支給されます。手続きが必要な時期に学校から案内があります。
参考:リーフレット「高等学校等就学支援金」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/20210317-mxt_kouhou02_1.pdf
※教育費の支援については、「子育て支援制度 受けられる助成金7つと貯める方法もご紹介」も併せてご覧ください。
子育て支援制度 受けられる助成金7つと貯める方法もご紹介
https://benesse.jp/kyouiku/202110/20211003-1.html
高校生が利用できる奨学金
学業等に意欲があり学資の援助を必要とする高校生等に貸し付けまたは給付を行う制度です。
貸付型の高等学校奨学金は在住者であることや保護者の年収など、加えて、給付型の奨学金は学業が優秀であることなど、それぞれ条件があります。日本学生支援機構のHPでは、お住まいの自治体等で利用できる高校生向けの奨学金について検索できます。
参考:日本学生支援機構 大学・地方公共団体等が行う奨学金制度
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/dantaiseido/index.html
参考:神奈川県高校奨学金
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/en7/cnt/f324/index.html
参考:福岡県私学協会
https://www.f-sigaku.com/scholarship/
まとめ & 実践 TIPS
私立高校は、校風、勉学や文化・スポーツへの取り組み、行事などさまざまな特色を打ち出しています。
私立高校の学費というハードルがクリアできるなら、お子さまの進路の選択肢は広がります。
受験情報や支援制度などを知っているか知らないかが、さまざまな決断に影響することもあります。情報は早めに調べておきましょう。
わからないことがあれば面談の機会などに担任の先生に相談する、自分で自治体や私立高校などの公式Webサイトなどで調べる、窓口に問い合わせるなど、まずは行動を起こすことが大切です。
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