2021年度からの「発展レベル」テスト まだ姿は見えず‐渡辺敦司‐

教育再生実行会議の提言(外部のPDFにリンク)を受けて、高校在学中や大学進学時に受ける基礎レベル・発展レベルの「達成度テスト」(いずれも仮称)の創設が中央教育審議会で検討されています。とりわけ大学入試センター試験に代わる「達成度テスト(発展レベル)」がどのような試験になり、いつから実施されるのかは、保護者にとっても大きな関心事でしょう。8月以降にまとまる予定の答申では、開始時期が「早ければ平成33(2021)年度」と明記される見通しとなりましたが、具体的な姿が見えてくるのはまだまだ先のようです。

発展レベルを検討している中教審の高大接続特別部会では、知識の活用力などを測るため、従来の「教科型」だけでなく「合教科・科目型」「総合型」といったタイプの出題も視野に入れるほか、記述式や「コンピュータによる出題・回答の方式(CBT方式)」も提案しています。ただ、そうした出題形式が実現できるかどうかは実際にやってみなければわからないため、技術的な研究に委ねることにし、答申では具体的なテストの制度設計にまで踏み込まない見通しです。
また、高校版・全国学力テストとでも言うべき「達成度テスト(基礎レベル)」は推薦入試やAO入試などの成績証明にも使えるようにする方向性が実行会議の提言段階から固まっていましたが、検討を行ってきた高等学校教育部会では、具体的な出題科目や実施時期などを固めるのは先送りになりました。

というのも、二つの達成度テストは実施の目的が違うとはいえ、複数回の受験ができるようにすることや活用力を測る出題など、具体的な検討に当たっては共通する課題も多く、一体で研究する必要があるからです。
複数回実施を例に取っても、単に実施時期をいつにするかだけが問題ではありません。センター試験のように全国で同時刻に同じ問題を一回限り出題するなら支障はないのですが、複数回となれば各回の得点を調整する必要が出てきます。そんな中で浮上しているのが、「項目反応理論(IRT)による方法」(外部のPDFにリンク)です。科目当たり2~3万問以上をためておき、その中から随時出題するようにすれば、複数回どころか、いつでも実施することが可能になるといいます。実行会議の提言のように、1点刻みで合否を判定することをやめるテストだからこそできる方式であるともいえます。さらに、コンピューターを使って出題すれば(CBT方式)、技術的にもより容易になります。

IRTやCBTはTOEFLTOEICなどのほか、国内でも「医学部共用試験」で実施されている例がありますが、達成度テストに導入できるかどうかは、慎重な検討が求められます。そのため中教審の部会も、今後の研究に委ねることにしたわけです。文部科学省は、CBTやIRTの導入(外部のPDFにリンク)までには「少なくとも8年程度は必要」と見ています。
なお、中教審の高校部会は6月13日の会合で2年半にわたる審議を終了。接続部会も答申を出した段階で役割を終えることにしています。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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