ぬまっち先生、子どもが将来お金に困らないために、教えておくべきことはなんですか?

ユニークな教育法で注目を集めているぬまっち先生(東京学芸大学附属世田谷小学校教諭)。新たな試みのひとつとして行っているのが「金融教育」。日本では遅れているお金教育の必要性、子どもが将来お金に困らない大人になるために、何をどのように教えながら育てたらいいか、ぬまっち先生流の金融教育法を教えていただきました。

この記事のポイント

お金が何の対価かわかっていない子どもたち

ボクが最近力を入れてるのは、お金教育です。
日本ではお金の話をすることは、汚い・みっともないと思いがちなところがありますよね。日本の文化でそう思われているのは仕方がないとはいえ、残念なことです。
ボクは子どもにも、人が働いているのはタダじゃないんだよということを知ってほしいと思っています。リスペクトの気持ちっていうんですかね。
値段だけ見て「これ高すぎ」とか言いますが、高いのには理由があります。人の手でお仕事してくれているから、いろいろなところに手数料がのってくるから、高くなるわけですよね。
そういうことも知らずに、「高っ」「安っ」と判断するのは違うということを、少しずつわかっていかないといけないと思います。

親がお金の話をしないようにすると、子どもはお金が何の対価なのかわからないままです。中には、お父さんは会社に行くだけでお金をもらえると思っている子や、主婦のお母さんのことを「うちのお母さん、何もしてない」という子もいますが、そんなわけないじゃないですか。お父さんが働いていることや主婦にも労働があるということをわかっていません。
また、子どもが「ゲーム機買って」と言った時、「勉強とお手伝いをきちんとするならいいよ」と言いながら、3万円以上もするゲーム機を買ったとします。買ってすぐはお皿洗いなどしても、1週間もすればしなくなる。えらい高い皿洗いですよね(笑)。3万円あったら、大人は6回ぐらい飲みに行けますよ。それを我慢して買ってあげているのに、勉強もお手伝いもろくにしないなんて……となりますよね。
そういうことが起こり得るので、子どものうちからお手伝いをしながらお金をもらうシステムを学んでいくべきだと感じています。

繰り返して習慣化、報酬は楽しい思い出に

よく親御さんから「うちの子に勉強する習慣を付けたいけどどうしたらいいですか?」と聞かれますが、「習慣」という言葉の意味を辞書で調べてみるといいと思います。辞書を調べると、「繰り返し行うことによって習わしとなったということ」と書いてあります。1回勉強することすら苦労している人が、繰り返しする方法をいきなり聞きますか? と思います。
実は勉強の習慣づけにも、お金教育が使えると思っています。たとえば、「宿題をした」「勉強した」ことでお金をもらえるようにします。すると、子どもは自ら勉強します。勉強してお金が入ってくることを繰り返すうちに、だんだん習慣づけされていきます。
そのうち、お金がもらえなくても勉強するようになるのです。

こういう話をすると必ず批判がくるのが、なんでもかんでもお金をもらわないとやらない子にならないかという話。ボクは、お金の使い方を思い出や楽しみに変える方法を提案しています。

お手伝いや勉強をして2,000円貯まったら、たとえば回転寿司チケットとか作って売るのはどうでしょうか。もともと月に1回ぐらい回転寿司に行くご家庭だったら、家計はいたまないし、子どもが貯めた2,000円をもらえます。
でも、お店を出る時にひとつだけやることがあります。それは回転寿司チケットを買ってくれた子どもに「ごちそうさまでした!」と言うこと。
子どもはごちそうさまって言われたらなんか嬉しくなって気持ちが満たされるし、次はどこどこに行きたいから働いて稼ごうという気にもなります。
チケットは必ずしも現金に換える必要はありません。「ゲームの時間30分延長券」とか「次の家族旅行の行き先決定権」とか、家の中での楽しいチケット、思い出のための権利に変えていくことができればいいと思います。

ビジネスを学ぶ家庭内居酒屋

うちの学校(東京学芸大学附属世田谷小学校)ではラボ活動というものがあり、ボクはビジネスラボという研究室の担当をしています。今年の夏休みは子どもたちに家庭内居酒屋をやってもらいました。お小遣いで親の好きなお酒を買ってきて、そこに軽いおつまみを付けてセット販売すればいいよ、と。
親がお客さんになり、しっかりとクレームも付けてくれています。「柿ピー付けただけでこの値段は高いよ」とか。あと、「お母さんがツケ払いばかりで仕入れるお金がなくなったので、お店休みました」っていう子もいましたね(笑)。そういうのも学びのひとつだと思います。

勉強もお金も、自分ごと化できれば大人になった時も困らない

勉強もお金も同じですが、一つひとつやるべきことを自分ごと化できていれば、大人になったときに困らないと思います。
子ども時代は親に養ってもらっているので生活費はかかりませんが、いつかひとり立ちしますよね。その時に、何にいくらお金がかかるのか、自分のこととして考えられなければ対応できません。お金のありがたみや、自分には何が必要だからお金を使うとか、考える力を付ける必要があるのです。
そのためには、子どものうちから、家の中で少しずつ肌感覚で学んでいくことが大切です。子どもに親の収入を正直に伝えなくてもいいですが、生活費に使えるお金はこれぐらい、食費はこれぐらいと教えるのはいいのではないでしょうか。

お金に限らず、なにごとも他人任せでは、これからの時代はさらに辛くなります
昔は敷かれたレールに乗ればなんとかなりましたが、いまは敷かれたレールが次々と崩壊していく時代。自分で走れないと厳しいと思います。
10年前はYouTuberになりたいという人はほとんどいなかったはずですが、いまや子どもが将来なりたい人気職業のひとつです。これからどういう職業がでてくるかなんて、ボクらも読めません。
だからこそ、子どもたちが自分で考えて動けるようになっておく必要があると思います。

お金の使い方や価値を学ぶアプリ「PIGUCHI(ピグっち)」とは

ボクは最近、「PIGUCHI(ピグっち)」というアプリを監修しました。小学校低学年からお金の使い方や価値が学べるアプリです。ご家庭ごとに手伝う内容を考え、1円~500円の間で報酬金額を決めます。お手伝いが終わったら、その報酬が貯まります。いわば家庭内仮想通貨ですね。お手伝いだけでなく、先ほどお話した勉強の習慣づけにも活用できます。

バンク機能もあり、貯まったお金を預けて利息を得たり、ローンも申請したりできます。たとえば、「ゲーム機が欲しい」となったら、3万円のローンを組む。ローンなので、返済が滞ると利子が付きますし、働かないと返せないのでしっかり働くことになります。
よく若者が金融会社から簡単にお金を借りて返せなくなるパターンとかあるじゃないですか。大人になってそういう失敗をするのなら、子どものうちにおうち銀行で借りた3万円が返せなくて破産するという経験を積んでもいいと思って、この機能を付けました。こういったアプリをとおした経験や、家庭での経験で、お金にまつわることを少しずつ経験させていくことが、自分ごと化となり、また将来お金に困らないことにつながっていくと思っています。

まとめ & 実践 TIPS

勉強のことばかりに意識がいき、お金の話はあまりしていないというご家庭もあるかもしれませんが、大人になった時を考えるとお金の勉強は必要なこと。 お手伝いや勉強の習慣づけと絡めながら、お金の対価を知り自分ごととして学んでいく金融教育は将来きっと役に立つことでしょう。お金の話をタブーとせず、まずはご家庭で話題にしていくところからスタートしてみるのはいかがでしょうか。

ぬまっち先生、「自分からやる子」になるには、どうすればいいですか

取材・文/井上加織

プロフィール

沼田晶弘

沼田晶弘 (ぬまっち先生)

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。1975年東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学ぶ。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が話題となり、テレビをはじめとしたメディアへの出演や講演も行う。著書に、『「やる気」を引き出す黄金ルール』(幻冬社)『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)『「変」なクラスが世界を変える! 』(中央公論新社)『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)『自由研究できたえる!! ホンモノの考察力』(イースト・プレス、監修) 、『One and Only〜自分史上最高になる』(東洋館出版)『自分で伸びる小学生の育て方』(KADOKAWA)など多数。

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