「集中しなさい」では、集中できない!子どもの集中力を高めるために必要な段取りとグリーンゾーン

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「集中しなさい!」と口を酸っぱくして言っているのに、いつまでも落ち着きのない子どもたち……。そんな子どもたちの集中力のなさが、多くのご家庭で、おうちのかたのイライラのもとになっているようです。でも、どうしたら落ち着いて学習できるようになるのでしょうか? 発達心理学、学校心理学が専門の渡辺弥生先生(法政大学文学部心理学科教授)に、サポートのコツをうかがいました。

この記事のポイント

「集中しなさい」では伝わらない

子どもに「集中しなさい!」と言ってもできないのは、「どうしたら集中できるのか」「どんな状態が集中できていることなのか」が、具体的にわかっていないせいかもしれません。それなのにガミガミ言われているとしたら、いつも緊張状態を強いられているようなものです。また親が落ち着いていないこの状況は、不安定な心理状態のモデルになっていて、落ち着いて学習する環境が整えられていないともいえます。集中するにはまず、不安がない雰囲気が不可欠です。勉強中にキョロキョロしたり、食事中にぼーっとしたりしたりするのは、何か不安があったり、思いをめぐらせたりしているからかもしれません。ですから、そういう様子を見るたびに「集中しなさい!」と言うのではなく、まずは深呼吸をするなど、ゆったりとした雰囲気を作れるようにサポートしてあげてください。そして不安や疲れがとれたようなら、「夕方〇時から15分間は宿題の時間にしてみようか」などと、《いつ》《どのくらい》《何に集中するか》を具体的に決めて、勉強などを始めるきっかけを作りましょう。

集中のための段取りを身につけよう

ただし、いざ宿題を始めても、「消しゴムがない!」「定規はどこだっけ?」では集中どころではありませんよね。そこで最初のうちは「宿題をするには何が必要かな?」「消しゴムがいるんじゃない?」などと言葉でフォローして、途中で集中が切れないようにするためには、段取りが大事だということを伝えていくといいでしょう。また、バタバタしている時や、切り替えがあまり上手ではないお子さまには、「深呼吸をして息をふーっと3回吐くと、心が落ち着くよ」などと、集中状態に切り替えるための簡単なテクニックを教えるのもおすすめです。
そして、真剣に机に向かえたら、「集中しているね」「真剣にやっているね」とほめるのも大事なことの一つです。そのくり返しから、お子さまは“集中”というものがどういうことなのかがわかるとともに、必要な時にぐっと集中力を発揮できるようになっていくはず。一方、サポートする側のおうちのかたは、少しずつレベルを上げて一丁前になるまで導いてくれるコーチのごとく、お子さまの様子を見ながら少しずつ声かけを減らしていき、自分で集中をコントロールできるようにしてあげてください。

集中のために大事にしたいもう一つのこと

少し見方を変えれば、集中のために大事な要素が、じつは適度なリラックスです。くり返しになりますが、イライラしたりモヤモヤしたりしている時に、集中するのはなかなか難しいものですよね。つまり集中するためには、不安がなく、「よし! がんばるぞ!」という気持ちになれる雰囲気が大切です。必要な時にぐっとエネルギーを放出できるようにするために、まったりと心身を緩める《グリーンゾーン》の時間を大事にして、エネルギーを充電することが必要なのです。
たとえば、学校から帰ったらすぐに「宿題は?」「ダラダラしないの!」などとあおるのではなく、おやつを食べたり、自由な時間をはさんだりして小休止。そうしてエネルギーをチャージできたら、ギアを少しずつ全開にして、いざ勉強!といったリズムを整えるのもいいでしょう。前日のうちに1日のスケジュールを書き出し、「ここからここまでは休憩して、ここからは飛行機がビューンと飛び立つみたいに集中して宿題しよう」などと段取りを一緒に決めておくと、見通しが利いてやることのイメージが持てるので、より切り替えやすくなっておすすめです。

まとめ & 実践 TIPS

子どもがぼーっとしたりキョロキョロしていたりするだけで、「うちの子は集中力が足りない……」「また集中していない!」なんて思いがちですが、そこでおうちのかたがイライラしていることが、じつは仇(あだ)になってしまいます。子どもにだって、くつろぐ時間が必要です。学校での疲れもあります。だからこそ、ちょっと気分を切り替えたり、不安のない時間を作ったり、時間を区切って休憩をはさんだりするなどの工夫を大事にするといいでしょう。一方、お子さまが集中して何かに取り組む際には、テレビをつけたり、頻繁に話しかけたりしないなど、おうちのかたもぜひご協力を! そのうえで、「さ! 切り替えて、昨日決めたようにトライしよう」と楽しくスタートの合図を送ってあげてくださいね。

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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