子どもの心が動くIメッセージ、反発を買うIメッセージ [やる気を引き出すコーチング]

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子どもにかけるプラスの言葉にもいろいろありますが、例えば、次の2種類の言葉を味わってみてください。
【A】「よく、がんばったね」、「作文、上手だね。すごいね」、「お手伝いできて良い子だね」
【B】「見ていて、とても励まされたよ」、「すごく感動したよ」、「手伝ってくれて助かったよ」
どちらがより嬉しいですか?人によって受けとめ方が違いますから、【A】のような言い方が好きな人もいるでしょうし、【B】のほうが好きだと言う人もいるでしょう。
【A】のように「あなたは」が主語となる言い方をYou(ユー)メッセージと言います。一方で、【B】のように、「私は」が主語となる言い方をI(アイ)メッセージと言います。プラスの言葉であれば、Youメッセージも悪くはありませんが、やや「評価」のニュアンスがにじみます。Iメッセージで言われると、案外受けとめやすく、自分の存在価値が感じられるものです。Iメッセージにはより子どもの心を動かす効果があります。
ところが、時折、「Iメッセージを使ってみましたが、かえって反発されました。どうしてでしょうか?」というご質問をいただきます。今回は、気をつけたいIメッセージの使い方についてご紹介します。

「評価」ではなく「気持ち」を伝える

今回、ご質問をいただいたKさんは、小学校5年生のお子さんを持つお母さんです。お子さんの作文について、「すごく工夫して書けていると思うよ」とほめてみたそうです。ところが、返ってきた言葉は、「別に何も工夫してないし・・・」とそっけないものでした。「そう?よく書けているとママは思うけど」と、さらに言葉を重ねると、「わかってないくせに、適当なこと言わないで!」と反発されてしまいました。
「私は」を主語にして伝えたつもりでしたが、お子さんの心には届かなかったようです。Iメッセージは、注意をしないと、こちらの評価や価値観の押し付けとして伝わってしまうことがあります。例えば、典型的な言い方が、「うまくできていると私は思うよ」、「よくがんばったと私は思うよ」などです。「私は思う」と、Iメッセージのような形はしていますが、こちらの「評価」を伝える言い方になっています。Iメッセージは、純粋に、自分の「気持ち」を伝えると効果的です。例えば、「読んでいてワクワクしてきたよ」、「なんか心があたたかくなってきた」、「あなたが書く文章、私は好きだな」など、自分の「気持ち」を表す言葉を使います。「気持ち」を伝えられると、お子さんは、「自分はそんなふうに思っていなかったけど、ママはそんなふうに感じたんだ!」と素直に受けとることができます。

「意見」や「正論」ではやる気になれない

他にも、Iメッセージのような形をしていますが、効果的ではない言い方があります。「遅刻はしないほうがいいと思うよ」、「勉強はしておくべきだと思うよ」など、こちらの「意見」を伝える言い方です。「意見」の押し付け、「正論」による説得と受けとめられ、かえって反発を招きます。
Iメッセージを意識的に使っていると言うAさんは、「勉強はしたほうがいいよ」と言う代わりに、「ねぇねぇ、これってどうやって解くんだっけ?私、教えてほしいんだけど」と声をかけて、勉強に誘ってみたり、「あなたが勉強している姿を見ていたら、私もなんだかやる気になってきた!」と、宿題をしているお子さんの隣に座って、一緒に通信教育講座の勉強を始めたりしているそうです。
「Iメッセージのほうが、正論を言って聞かせるより、よほど自分からやるようになると思います」とおっしゃっていました。

まとめ & 実践 TIPS

Iメッセージという手法は、どんなにその使い方と効果を知っていても、伝える側の「気持ち」が動かなければ、なかなか言葉に出てこないものです。まず、目の前のお子さんをよく観察し、「この子のここがすばらしいなあ!感動するなあ!嬉しいなあ!」と感じるポイントを見つけることが大切です。その気持ちが湧いてきたら、自然と言葉にも表せるでしょう。自分の評価や意見を言おうとすると、どんなに「私は」という言葉を使っても、反発を買うIメッセージになってしまいます。お子さんの心が動くIメッセージをどんどんかけてあげてください。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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