夏休みの宿題に取りかからない子ども 始めたと思っても集中できず…叱っても全然改善しない![教えて!親野先生]
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夏休みの宿題になかなか取り組まないお子さまにヤキモキしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。何度も注意してようやく取りかかったと思いきや、そわそわと集中していない様子で途方に暮れてしまうこともあるかもしれません。やる気と集中力を持って、夏休みの宿題に取り組めるようにするにはどうすればよいのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
【質問】夏休みの宿題に取りかからず、集中もできていない……どうすれば取り組める?
毎年、夏休みの宿題で苦労します。朝食後とか午前中の比較的涼しい時間帯に宿題を終わらせたいのですが、とにかく取りかかるまで時間が掛かります。また、始めたと思っても集中できずダラダラと時間が過ぎます。集中すれば1時間も掛からないはずなのに…。
ココナッツさん(小学5年男子)
親野先生からのアドバイス
拝読しました。
同様のお悩みを持っている親御さんは非常に多いと思います。
叱っているだけでは改善しませんので、具体的かつ合理的な方法を工夫することが大事だと思います。
例えば次のような方法がありますので、試してみてください。
方法1:「取り敢えず準備方式」でハードルを下げる
朝食前に、その日の勉強に必要な物を机やテーブルの上に並べておきます。
例えば、夏休みの友、算数プリント、書き取り帳、筆記用具、下敷き、などです。
それによって、「今日はこれだけやればいいんだ」というちょっとした見通しがつきます。
さらに一歩進めて、その日やるページを開いて伏せておくとか、下敷きを敷いておいたりするのもいいでしょう。
これで、さらに見通しがつきます。
私はこれを「取り敢えず準備方式」と呼んでいます。
さらにもう一歩進めるとしたら、子どもに「書き取り、1字だけ書いたら朝ご飯を食べよう」とか「理科プリント1問と計算ドリル1問ずつやったら朝ご飯を食べよう」などと言ってみましょう。
プリント類でしたら名前を書くだけでもいいと思います。
つまり、「取り敢えず1問方式」あるいは「取り敢えず1問ずつ方式」です。
1問、あるいは1問ずつだけなら、取り掛かりのハードルがかなり下がります。
そして、それをやるときに自然に全体が目に入るので、「だいたいこれくらいでできるな」という見通しがつきます。
このように見通しがついていると、朝食後本格的に取り掛かるときの心理的ハードルが大いに下がります。
また、取り敢えず一問ということでやり始めたらエンジンがかかり、そのまま一気にやってしまうということも起こりえます。
ただし、期待してはいけませんが。
方法2:「ウォーミングアップ方式」でやる気スイッチを入れる
まず最初に一分以内でできる単純計算をやることで、やる気スイッチを入れることができます。
つまり、ウォーミングアップ方式です。
例えば、ある家庭ではお父さんが作った「8+7 14ー8 8×9」などの簡単な計算問題を10問やります。
「用意、ドン」で始めて、お母さんがストップウォッチで時間を計り、新記録を目指します。
記録を意識するので集中力が上がり、あっという間に終わります。
1問10点で丸つけをしてあげて、ほぼ毎日100点です。
そこで、すかさず親がほめて一緒に喜び、その勢いで宿題に取りかかります。
脳の研究によると、このような単純計算をやっているときは脳全体の血流がよくなるそうなので、脳のウォーミングアップに最適なのです。
また、あっという間に1つ勉強ができて100点を取ることで、ちょっとした達成感「リトル・サクセス」を味わえます。
このリトル・サクセスによって、脳の中の線条体という部位が活性化するそうです。
この線条体という部位は人間の意欲に大きく関わっていて、これが活性化することでやる気スイッチ入ると言われています。
方法3:時間を意識するアイテムを活用し、集中力を高める
学校の授業は1時間目2時間目など時間の区切りがありますが、家庭学習ではそれがありません。
時間を意識せず漫然とやっているだけだと、ついダラダラしてしまいます。
そこで、先ほどのようにストップウォッチで時間を計ったり、タイマーによる締め切り効果を活用したりして、集中力をあげる工夫が必要です。
例えばMさんの家庭では、子どもが朝食、歯磨き、排便など一連の朝のルーティンが終わった段階で、「何秒で勉強始められるかな?用意ドン」と言ってストップウォッチを押すそうです。
そして、勉強に取り掛かるまでの時間を計って、今日は何秒というように記録を取っています。
これ自体がほとんどゲームのようになっているそうです。
また、3分、5分、10分、15分、30分、45分、60分などの砂時計を使い分けて子どもの集中力を高めている家庭もあります。
ちなみに、その家庭では歯磨き、入浴、着替え、ゲームなどの時間管理にもその砂時計を使っているそうです。
おしゃれなデザインなので子どもも気に入って、自主的に使い分けているとのことです。
方法4:ご褒美を上手に活用し、やる気を高める
ご褒美でやる気が高まることもあります。
例えば、Tさん一家の長男は、「30分宿題をしたら30分遊ぶ。また30分宿題をしたら30分遊ぶ」というサンドイッチ方式で勉強しています。
次男はそれとは違って、「先に宿題が全部終わったら遊ぶ」というニンジン方式です。
いろいろと試行錯誤させて自分に合ったやり方を選ばせた結果、今はこれに落ち着いているとのことです。
Tさんは、「自分が選んだ方式なのでちょっとした責任のようなものを感じているようです」と言っています。
また、ある家では、アニメとゲームが大好きな子がいて、勉強を始めるときテレビとゲーム機に布を掛けて隠すそうです。
そして、勉強が終わったら「がんばったね。おめでとう。パンパカパーン」と言いながら布を取ってあげます。
つまり、「やった!テレビで録画したアニメが見られる」「ゲームができる」というワクワク感を演出しているのです。
ときには、おやつを隠してご褒美にすることもあるそうです。
OKなご褒美とNGなご褒美の違いに注意する
ところで、ご褒美にはOKな褒美とNGなご褒美がありますので、気をつけてください。
例えば、「勉強したら百円」とか「勉強したら欲しいものを買ってもらえる」などのご褒美は弊害が大きいのでNGです。
これだと、ご褒美がないと勉強しなくなったり、もっとよいご褒美を用意しないとやらなくなったり、「勉強したら何くれる?」などと言い出したりする可能性があります。
でも、いつもやっていることを順番を変えて後に持ってくることで”ご褒美化”するのは弊害がありませんのでOKです。
つまり、テレビを見るのもゲームをやるのもおやつを食べるのも、いつもやっていることであり、あらたに用意したものではありません。
どうせやることを順番を変えてご褒美化しているだけなので、先ほどのような弊害はなくなります。
以上、4つほど紹介しました。
我が子にあうように調整したり、これらを参考にしてオリジナルな工夫もしてみてください。
大事なことなので繰り返しますが、叱っているだけでは改善しませんので、我が子に合う具体的かつ合理的な方法を工夫して欲しいと思います。
私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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