どこが間違い?「藤原頼道」「大久保利道」?間違えやすい社会科の漢字、間違えないためのコツとは?
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社会科の教材を編集するなかで、編集者が必ず注意している漢字があります。そんな社会科で間違えやすい漢字と間違えないためのコツをご紹介します。
どこが間違い?「藤原頼道」「大久保利道」?
見出しは「藤原頼【通】(ふじわらのよりみち)」「大久保利【通】(おおくぼとしみち)」が正しい表記となります。お恥ずかしい話ですが、これは筆者自身が編集を担当して間もないころに他の校閲者から指摘された誤りです。いずれも「みち」と読む漢字なので、「道」と思い込んでいた誤りでした。
このように誤って思い込んでいても編集者であれば他の校閲者からの指摘で誤りに気づけますが、中学・高校生がテストや入試で同じような誤りをすると手痛い失点となります。
今回は、中学・高校生の学習にも役立つ、社会の編集者が注意してみている漢字と、間違えないためのコツをご紹介します。
「諭吉」と「紙幣」、読みが同じで形の似た漢字に注意!
編集の現場では、正しい文字を入力したデータを使用して原稿の修正指示をしますが、ちょっとした修正などは手書きで伝えることが多いです。しかし手書きの修正指示は、編集者が誤って書いたりすることもあるため、あらかじめ誤りやすい漢字をリスト化して注意しています。
特に注意しているのは「読みが同じで形の似た漢字」です。たとえば社会でよく出てくる「福沢【ゆ】吉」「車の【ゆ】出」の【ゆ】、「紙【へい】」「【へい】害」の【へい】などは、間違えやすい漢字です。このような「読みが同じで形の似た漢字」を間違えないコツが2つあります。
<形の違う部分を「こじつけ」>
【諭】吉→名【言】あ【り】の福沢【諭】吉
【輸】出→【車】をアメ【リ】カに【輸】出
「福沢【ゆ】吉」「車の【ゆ】出」の【ゆ】は、部首が異なるのでその部首を思い出せるようにこじつけています。また漢字の読みは違うものの形の似ている「論」「輪」とも取り違えやすいので、【諭】吉と【輸】出の漢字に、【リ(り)】のような字形が含まれていることがわかるようにこじつけています。このように「読みが同じで形の似た漢字」は、形の異なる部分をこじつけることで、見分けられるようになります。
<複数の熟語から意味を連想>
【弊】害、悪【弊】、疲【弊】→悪事を働くと【足】がつく
紙【幣】、【幣】原喜重郎→【幅】のあるお札
「【へい】害」「紙【へい】」の【へい】は、下半分の形が違う漢字です。漢和辞典によると、【弊】は「やぶれる、つかれる、よくない」、【幣】は「神をまつるときにつかうもの、おかね」という意味です。このように漢和辞典で調べてその意味を理解するのが理想ですが、そうでなくても同じ漢字を使う熟語を連想することで、「【弊】はなんとなくマイナスのイメージだな。お札の紙【へい】に使うには違和感があるかも?」と気づくことが、間違えずに使い分ける第一歩となります。
- 似た形の漢字は、形の違う部分を「こじつけ」
- 似た形の漢字は、複数の熟語から意味を連想
「追求」と「追及」、読みが同じの誤変換に注意!
編集に限らずパソコンやスマートフォンなどの日本語入力では、漢字の変換ミスを避けて通れません。社会科でよく目にする誤変換として『与党の責任を追求する(正しくは【追及】)』というものがありますが、このような「読みが同じの誤変換」を間違えないコツが3つあります。
<音読みを訓読みに置きかえる>
理想を追【求】→理想を追い【求める】
責任を追【及】→責任が【及ぶ】
<訓読みは熟語に置きかえる>
税金を【納める】→税金を【納】付する
事態を【収める】→事態を【収】拾する
誤変換されやすい読みが同じ漢字は、「音読みは訓読みに置きかえる」「訓読みは熟語に置きかえる」ことで見分けやすくなることがあります。ただこの方法を使うためには、ある程度の語彙の知識・理解が前提となるため、中学生・高校生であれば誤変換の例を覚えたほうが早いかもしれません。
<部首の意味から考える>
稲の収【穫】→「のぎへん」、【稲穂】は農作物
獣の収【獲】→「けものへん」、【狩猟】は動物
収【かく】は農作物を得るか動物を得るかで、「のぎへん」と「けものへん」を使い分けています。「のぎへん」は「木」のうえに穀物が実る様子、「けものへん」はその名の通り動物に関係しているので、「稲は収【穫】」「獣は収【獲】」になります。このように読みが同じでも、部首の意味を意識することで正しく使い分けられるようになります。
- 音読みは訓読みに、訓読みは熟語に置きかえる
- 読みが同じで部首が異なる漢字は、部首の意味に注目
まとめ & 実践 TIPS
編集者は原稿をチェックする際、間違えやすい漢字に注意を払います。間違えやすい漢字を見分けるコツは、社会科以外の教科学習にも役立ちますので、ぜひ参考にしてみてください。
株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。
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