今なぜ「教育基本法」改正なの? 文部科学省に聞く【1】

6月18日まで開かれた第164回国会では、「教育基本法」の改正案が政府から提出され、約50時間の審議が行われました(次期国会で継続審議)。1947年に制定されて以来、約60年間一度も改正されることのなかった「教育の憲法」を、今なぜ変えようとするのでしょうか。文部科学省大臣官房審議官(大臣官房担当)の板東久美子さんへのインタビューを3回にわたってお届けします。

「国民の共通理解」のために

——今回の改正案は全面改正ということですが、今なぜ「教育基本法」を変える必要があるのでしょうか。

現行の「教育基本法」は終戦直後、民主的で、個人が尊重される国家・社会を建設するためには「教育の力」(前文)が大きいということで作られたものです。しかし、戦後60年近くが経ち、いろいろな意味で社会は大きく変わりました。そのなかでの子どもたちの問題を一言で言えば、基礎的な「人間力」が総合的に落ちている、ということです。

今、子どもたちの学力低下や学習意欲、体力の低下をはじめとして、規範意識の希薄化、対人関係能力の低下、生活習慣の乱れなど、さまざまな問題が指摘されています。これまでは個々の問題を、もぐらたたきのように対症療法で解決しようとしてきたのではなかったでしょうか。それが最近、これらが決してバラバラの問題ではなく、互いに関連しており、教育の土台をしっかりすべきだという認識が高まってきました。

他方、学校、家庭、地域社会が全体的に教育力を低下させるなかで、本来は家庭や地域社会で行われるべき子どもの育成までもが、学校に期待されるようになってしまいました。過剰な課題を抱えた学校がその役割を果たし切れなくなり、それがまた社会全体の教育力低下を生む、という悪循環に陥っているのです。

そこで今一度、基本に立ち返って、教育の理念として何を大切にしようとするのか、幅広く議論をして、これからの時代にふさわしい教育理念を国民の共通理解として打ち立てるために、国民全体による教育改革を進め、「教育基本法」を全面改正しようということになったのです。
改正案には、学校だけでなく家庭や地域社会など、いろいろな分野の教育力が重要だという考えを盛り込んでいます。さまざまな人たちがそれぞれの役割を果たしながら、社会全体で教育をしていこう、という機運を高めることが重要であり、「教育基本法」の改正論議はそのためのスタートラインだと考えています。

全体から考えを読み取って

——改正案をめぐっては、「愛国心」の表記(伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する)が注目されています。

国を愛することは確かに重要なことですが、改正案の焦点はそれだけではありません。教育の目標(第2条)には5本の柱を掲げ、豊かな情操と道徳心、公共の精神なども盛り込んでいます。また、「生涯学習の理念」(第3条)も新たに規定することにしました。これらは一見、当たり前のことばかりですが、当たり前のことが当たり前にできなくなっている、というのが、ここ最近ますます深刻化している問題ではなかったでしょうか。

ですから個々の条文だけを取り上げるのではなく、全体を読んで、何を国民の共通理解として持つべきか、という考えを読み取っていただきたいと思っています。

(参考)
「教育基本法」改正案と現行法の比較

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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