小学生の読書量と国語の学力、どれくらい関係する? 学力を伸ばすだけでなく、心の安定にも効果あり?!

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昔から、「読書=よいもの」というイメージがありますが、具体的に小学生にはどのような効果があるのでしょうか。ベネッセ教育総合研究所は、進研ゼミの会員向けサービス「電子図書館まなびライブラリー」の読書履歴と進研ゼミの実力診断テスト、アンケート調査の結果をもとに、読書が子どもの国語の学力や学びの姿勢、気持ちに与える影響を分析し、発表しました。その分析から、読書は子どもの学力だけでなく、感情面にもよい影響があることがわかってきました。ベネッセ教育総合研究所の邵勤風と野﨑友花から調査結果をお届けします。

この記事のポイント

読書量の多さと国語の学力の関係性とは?

「読書はよいもの」とよく耳にしますが、具体的にどのような効果があるのでしょう。調査からは、子どもの国語の学習、感情それぞれへの効果があることがわかってきました。自宅で過ごす時間が増えた今こそ、改めて読書の価値を見直してみてはいかがでしょうか。

まずは、読書量と国語の学力の関係性について見ていきましょう。
実力テストの成績に読書の効果が見られました。国語の語句や漢字などを問う「知識問題」では、「偏差値の1年間の変化」を見ると 、学力の高いグループでは読書量が多い子どもと読書量が少ない子どもとで1.7ポイントの差がつきました。また、学力の低いグループでは読書量が多い子どもは、読書量が少ない子どもより、1年間で3.2ポイント偏差値を大きく伸ばしました(【図1】)。
さらに、図や話し合いといった日常生活に関する題材を使って思考力を問う「挑戦問題」は、学力の高いグループでは2.0ポイントの差があり、低いグループでは1.9ポイントの差が出ました。読書は、国語の基礎力・思考力と密接に関連していることがわかったのです。

【図1】読書の量(冊数)が「知識問題」へ及ぼす影響

▼学力の低い子ども

▼学力の高い子ども

*もともとの学力が低いと偏差値が上がる確率が高く、もともとの学力が高いと偏差値が下がる確率が高いため、5年生8月の実力テストで平均点未満のグループを「学力の低い子ども」、平均点以上のグループを「学力の高い子ども」とに分けて、数値を算出した。
*偏差値は、『進研ゼミ』の「実力テスト」の国語の結果。1年前(5年生8月)の偏差値の高低ごとに、【5年生8月】(2019年)の偏差値から【6年生8月】(2020年)の偏差値への変化を、「読書をしなかった子ども」(読書「無」)の変化を「0」(基準)として差を示した。
*いずれも、p<0.001(分散分析)。

読書は夢中になる体験や心理的な安定につながる

2020年の夏にベネッセ教育総合研究所が実施した別の調査から、2019年と比較し2020年には小学校4年生から6年生まですべての学年で「勉強しようという気持ちがわかない」と答える子どもが増加したことがわかりました(【図2】)。新型コロナウイルス感染症の影響により、不安定な社会の中で、子どもの心が落ち着かず、学習意欲が下がっていると考えられます。

【図2】「勉強しようという気持ちがわかない」子どもの増加

出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2019-2020」
*「あなた自身のことについて、次のようなことはどれくらいあてはまりますか」とたずねた結果。「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の%。

学習意欲を底上げするには、「夢中体験」が効果的です。何かに没頭することが心の栄養となり、関心や意欲を育んでくれます。そして、読書は本で描かれている世界に夢中になる体験の1つです。【図3】からも読書冊数が多いほど、本を読んでいて「時間がたつのを忘れるくらい夢中になる」と回答する子どもが多いという結果となりました。
さらに、読書量が多いほど「心が落ち着く」傾向があることがわかっています。コロナ禍で大人も心が不安定になっている現在、読書時間を設け、子どもの心を安心させてあげたいですね。

【図3】子どもが感じている読書の心理的効果(読書量別)

*「あなたが本を読むとき、次のことはどれくらいあてはまりますか」とたずねた結果。「とてもあてはまる」の%。
*アンケート調査はまなびライブラリー利用者を対象にしており、「無(0冊)」の回答者が少数であったため、図から省略した。
*読書の量(冊数)は「まなびライブラリー」の1年間の読書履歴データ(2019年8月~2020年7月)を使用している。

たくさん読む子どもほど読書のさまざまな効果を実感

本を多く読んでいる子どもは、【図4】の通り「長い文章を読めるようになった」「新しいことを知ることができた」「知っている漢字や言葉がふえた」「きょうみのあることがふえた」など、自分でも読書の効果を実感していることがわかりました。
このことから、読書体験が国語の学力や学習姿勢に対して、さまざまな好影響を及ぼしていることがわかりました。

【図4】子どもが感じている読書の効果(読書量別)

*「本を読んでいて、次のことをどれくらい感じますか」とたずねた結果。「とても感じる」の%。
*アンケート調査はまなびライブラリー利用者を対象にしており、「無(0冊)」の回答者が少数であったため、図から省略した。
*読書の量(冊数)は「まなびライブラリー」の1年間の読書履歴データ(2019年8月~2020年7月)を使用している。

読書は、子どもの学習面でよい効果があるだけでなく、楽しみを広げ、気持ちの面でもプラスの影響がある大切な存在となっていることがわかりました。自宅時間が増え、また新型コロナにより様々なストレスを感じる今こそ、読書の価値を改めて見直してみてもよいのかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

読書のよさを具体的に分析した、本調査。その結果から、読書量の多さと国語の成績の関係性が見えてきました。学力上位層においても、学力下位層においても、国語の「知識」や「思考力などで好影響があることがわかったのです。
さらに、読書は本で描かれている世界に夢中になる体験や心理的な安定にもつながっています。コロナ禍の今、読書がもつ効果に、より注目が集まっています。ご家庭の中で上手に取り入れられるよう、後半はオススメの読書法をご紹介していきたいと思います。

≪参考≫
・ベネッセ教育総合研究所による読書効果の研究・分析のニュースリリースの関連資料はこちら
https://berd.benesse.jp/special/bigdata/ebookanalysis.php

・ベネッセ教育総合研究所の教育研究知見を元にした子育て・学びに関する記事の一覧はこちら
https://benesse.jp/special/berd.html

・進研ゼミの会員向けサービス「電子図書館まなびライブラリー」
https://benesse.jp/zemi/library/

プロフィール

邵 勤風(しょう きんふう)

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 主任研究員。初等中等教育領域を中心に、子ども、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究に多数携わる。
これまで担当した主な調査は、「学習基本調査・国際6都市調査」(2006年~2007年)、「第3回子育て生活基本調査」(2007年~2008年)、「小学高学年の学びに関する調査2019」など。近年、子どもの主体的な学びを支える学び方や周囲の支援に関心を持ち、学び方に関する理論研究や実証研究に取り組んでいる。

プロフィール

野﨑 友花 (のざき・ゆか)

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 研究員。主に「子どもの生活と学びに関する親子調査」を担当。専門は教育社会学。これまで教師の指導文化に関する質的研究や、子どもの学力・生活実態を把握する量的調査に携わる。近年は、保護者の教育意識・行動や子どもの成長・発達プロセスに関する研究に取り組んでいる。

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株式会社ベネッセコーポレーションの教育、調査、研究機関です。子ども、保護者、先生、学校などを対象に、教育に関連する調査、研究を行い、その研究成果や調査報告書、各種データを無償で公開しています。

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