小学校の成績や通知表の付け方は?知っておきたい読み解き方とコメント欄の書き方

  • 教育動向

学期の終わりに先生から渡される通知表。きちんと読み解くには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。保護者コメント欄は先生とのコミュニケーションツールでもあります。

そこで、小学校教員経験者の方や、現役小学校教員の方に公立小学校での成績のつけ方についてお伺いしました。その内容とともに、通知表の基礎から成績の伸ばし方まで詳しくお伝えします。

この記事のポイント

通知表の種類と基礎知識

通知表・通信簿は、児童・生徒の学校での学習や生活の状況を保護者に連絡するためのもの。教科の成績や生活の記録などが記され、学校と家庭が連携して教育にあたるために作成されています。学年や学校によって様式はさまざまです。

2020年度からの変更点

2020年度から始まった新学習指導要領により、通知表の内容も変わっています。保護者のかたの中にも「自分のころとは違うな」「上の子のときと違うな」などと気づかれているかたもいらっしゃるかもしれませんね。

新学習指導要領により、小中学校における通知表の成績は各教科で「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という観点別評価で行われるようになりました。

特に、通知表の元となる「指導要録」では、観点別学習状況の3段階評価とそこから導かれた5段階の評定が記されています。

通知表の読み解き方

まずは「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」がそれぞれどんなことを表すかを確認しておきましょう。

通知表の3つの観点が表すもの

「知識・技能」では、各教科の必要な知識を理解しているか、学んだ内容を活用できるかが評価されます。算数であれば、九九を理解して、計算ができるといったものですね。

「思考・判断・表現」は、学んで理解したことやできるようになったことを使って、どう応用できるかが評価されます。知識があるだけでなく、それを使って考えを深めたり、わかりやすく伝えられるかが問われます。

「主体的に学習に取り組む態度」は、学習に取り組む姿勢が評価されます。授業に積極的に参加しているか、提出物にしっかり取り組んでいるか、粘り強く取り組んでいるかといったものが挙げられます。

通知表をどう読み解く?

通知表を読み解くには、「どの観点にどんな評価がついているか」「学校でどのような活動をしてきたか」に注目しましょう。

「知識・技能」に良い評価がついているなら用語や器具などの使い方がよく習得できた、「主体的に学習に取り組む態度」についているなら、授業中に協力しつつ実験や観察に取り組めたり、意欲的に観察や調べ物ができたりした、といった見方ができます。

「ここがよくできているね、何が一番面白かった?」など、お子さまに話を聞くと、どのような点が評価されたのかわかりやすくなるでしょう。

学校における生活の記録などでは、「思いやりがある」「責任感がある」「公平である」といったお子さまの性格や考え方の特徴などが見えてきます。

先生による所見欄からは、お子さまが大きく成長した点や、より大きく成長するためのポイントを知ることができるでしょう。

公立の成績のつけ方は全国で同じ? 絶対評価・相対評価は?

では、実際に先生方はどのように成績を付けているのでしょうか? 小学校教員経験者の方や、現役小学校教員の方にヒアリングを行いました。

【Q】公立での成績のつけ方は全国的に決まった基準や方法がありますか?

(A)原則は決まっていますが、細かい部分は学校ごとに異なります。

評価する項目は全国共通の原則がありますが、テストの点数や普段の授業の提出物、様子などをどのくらい重視するかは学校ごとに異なります。そのため、細かい部分で共通するマニュアルがあるわけではありません。

【Q】成績は絶対評価と相対評価のどちらですか?

(A)基本的に絶対評価です。

現在、小学校の成績は絶対評価でつけるのが原則です。そのような形で運用されています。ただ、現場の実態に合わせて微妙な調整が入る場合がある。こういった話を現場の先生から耳にすることはあります。いずれにせよ、少なくとも同学年のクラス間で相談し、評価基準を揃え、ご家庭に説明可能な状態で出すよう配慮しながら付けられています。

【Q】「1学期より3学期のほうが成績が良くなる」のは本当ですか?

(A)小学生が1年間で成長する力を考えると、よくあることだと思います。

中学や高校と異なり、小学校における評価は、子どもたちの成長を認めるためのものという位置付けが強いです。この1年間で伸びてきた部分をできるだけ評価してあげたいという先生の思いもありますし、実際に小学生の子どもたちは1年間で大きく成長します。

学年が変わると成績が落ちたという感覚をもつこともあるかもしれません。それは学年が変わったことで、求められることや必要とされる能力が変わったからということも背景として考えられます。落ち込むのではなく前向きに、3学期に向けて成長していくと良いのだと思います。

【Q】いつ成績を決めていますか?

(A)日々、情報は集めていますが最終的には学期ごとの最後のテストが終わってからつけます。

基本的には日々、ずっと記録を残していて、学期の情報が出そろった段階で総合的に評価します。1学期の成績なら7月上旬から、2学期は12月、3学期は2〜3月です。終業式の2〜3週間前にはテストが終わることが多いので、そこから成績をつけるという流れです。小学校教員の方が口を揃えますが、とても大変な作業です。

成績は何をもとに決めている?

次に、何をもとに成績を決めているのかを伺いました。

【Q】どのような観点から成績をつけていますか?

(A)「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」など、学習指導要領において示されている観点で評価しています。

たとえば「知識・技能」であれば、テストの点数をもとに判断をすることが多いです。ただ、一問一答形式のテストだけではなく、例えば歴史上の出来事であればその背景にある事象であったり、算数であれば単に答えを出すだけではなく、なぜその計算で答えが導けるのかなど、深い理解を伴った知識である必要があります。テストもそのような評価ができるよう設計されています。テストの点数が伸び悩んでいる子の場合でも、「ノートで自分の理解を整理できている」「テストの間違いを見直す姿勢が身についている」などが見られれば、「主体的に学習に取り組む態度」などで評価。文章題や作文、授業の中の自分なりの考えを発揮させる課題などでは「思考・判断・表現」の評価につながります。

【Q】成績を付ける上で最も大切にしていることは何ですか?

(A)一面的に評価しない・説明責任を果たせる・できたことに目を向けることです。

特に説明責任については、今の先生方はとてもしっかり取り組まれています。「なぜこの成績なんですか?」と聞かれた時、お子さまの普段の様子や記録をもとに、しっかり細かく説明できるよう準備している方が多いです。それは単にクレーム対策ということではなく、それだけ丁寧に子ども達の成長を見ているという姿勢のあらわれなのだと思います。

【Q】普段の授業では、どのような点が成績に反映されますか?

(A)教員によって異なります。

たとえば、手を挙げる回数をカウントしている先生もいれば、ノートを授業ごとに回収して思考を整理できているかどうかを見たり、ワークシート に考え方を書かせたりする先生もいます。このように言うと常に監視されているような窮屈さを感じるかもしれませんが、テストの点数だけでなく普段の授業の中でも子どもたちの良いところを認めてあげたいという思いの先生が多く、加点評価をするためにいろいろな点を見ています。

【Q】成績を付ける際に参考にする提出物は何ですか?

(A)全ての提出物を参考にしていると言って良いと思います。

普段の宿題の内容、作文の提出物、ちょっとした課題など、全ての提出物をもとにして、適切な評価を出せるようにしています。

【Q】授業や提出物以外で、成績に影響する要素は?

(A)教科の評価については授業や提出物・テストの点数で評価するのが基本です。

教科以外の部分は生活の様子として別軸で評価します。生活態度に課題があるからといって教科の成績が下がることはありません。ただ、例外があるとすれば国語の「聞く・話す」の評価です。これはテストだけではなく、普段のさまざまな活動の中で、他の人の意見を聞いたり自分の考えを述べたりすることができた場合は、「話す・聞く」に加点する先生もいらっしゃいます。

学習評価の3つの観点と成績の上げ方 短期間で成績を上げるには?

では、短期間で成績を上げるコツは何かあるのでしょうか?

【Q】学習評価の観点のうち「知識・技能」で成績を上げるには?

(A) 学校で学習した内容をしっかり身につけていきましょう。

「漢字をしっかり覚える」「計算がしっかりできる」などはもちろん、表面的に問題が解けるだけではなく、なぜこのような計算で答えが出るのかなど、学年が上がるに従い「深い理解を伴った知識」が重要になります。基本的には授業でしっかり学び、理解が不十分な点についておさらいすることで伸びると思います。

【Q】学習評価の観点のうち「思考・判断・表現」で高評価を得るのは、どんな時ですか?

(A)グループワークや発表、作文などの提出物において自分なりの考えを表現できている場合に評価につながることが多いです。

テストによる評価だけで評価しきれない観点です。自分の考えをもつ、そしてそれを表現する機会において、どのように取り組んでいるのかを見ていることが多いです。様々な発表機会や提出物なども評価の対象になります。

【Q】学習評価の観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」について、具体的にはどのように取り組むと評価されやすいですか?

(A)日頃の学習上の姿勢を見ることが多いです。

例えば算数において新しい単元に入り、解き方を考える際に、分からないなりに頭をひねって考えようとしているか。テストで間違えたで終わらせずに、見直しをしてどうして間違えたのか考えようとしているか。ノートに学んだことをまとめようとする姿勢があるかなど、もちろん子どもそれぞれの個性があるので、授業で積極的に発表していないけれども学ぶ姿勢が十分にある子もいます。教員はそれぞれ、様々な観点で評価して一面的な評価にならないように取り組んでいます。

【Q】短期間(1学期分)で成績を大きく上げるコツはありますか?

(A)普段の授業をしっかり受けて、日頃から復習を行いましょう。

小学生は特にテスト勉強などをせず、出たとこ勝負でテストを受ける子が多く見られます。そのため、「テストがあるよ」と言われた時に少しでもおさらいをしておくだけでも点数は上がりやすくなります。

また、ケアレスミスで少しずつ減点されてしまうようなケースも見られます。たとえば算数の単位のつけ忘れなどです。地味なケアレスミスですが、とても「もったいない」と思います。テストがある日に「単位のつけ忘れに気をつけよう」などと気をつけておくだけでも、点数は変わると思います。

通知表は教科の成績以外も大切 所見欄は「親御さんへのラブレター」

通知表には教科の成績以外も書かれています。先生は、どのようなことを書いているのでしょうか?

【Q】教科の成績以外で通知表に反映される内容は?

(A)生活の様子、クラブ活動、委員会活動などをどのくらい頑張っているかなどが反映されてきます。

教室内での普段の様子で分かることと分からないことがありますが、担任の先生だけでは分からない場合は、クラブ活動や委員会活動でクラスの子と接している他の先生に聞いて判断することもあります。

【Q】通知表の所見欄には、どのようなことを書いていますか?

(A)子どもたちの成長が見られた場面を具体的に書きます。

所見欄には、「その子でしかない文章」を書くようにしています。たとえば、学校生活において「こういう時にこういう発言があって、クラスの活動がこのように盛り上がりました」「そういった姿勢から、こういった力が伸びてきています」のような記述です。

所見欄の文章は、ある教員の方は「親御さんへのラブレター」と言っていました。その子の成長を親御さんと一緒に喜ぶために書いています。もちろん、その子の成長のために課題を書くこともあります。さまざまな記録を全部見て、かつ限られた文章量におさめるべく何度も文章を見直しながら書きます。

絶対に良い部分はありますので、それをしっかり認めつつ、その子の今後の成長を応援するのが所見欄。多くの教員の方が親御さんに一番見ていただきたいと考えている部分と言っていました。

ただ、現在は教員の多忙化が社会的に問題になっていることもあり、所見欄の記入を「個人面談でのお話に代えさせていただきます。」という形にする学校も増えています。所見欄を楽しみにされている保護者のかたとしては、残念かもしれませんが、教員の働き方改革の一環としてご理解いただければと思います。

先生が子どもたち・保護者に一番伝えたいこと

最後に、通知表を通して先生が子どもたちや保護者に最も伝えたいことを伺いました。

【Q】通知表を渡す際に先生が一番伝えたいことは何ですか?

(A)3段階評価だけでは表せない、お子さまの細かな成長です。

通知表で表せる評価は、「よくできた」などたった3段階です。通知表を渡すと、子どもたちは「よくできた」が何個あるかなどに注目しがちですが、3段階の中にもグラデーションがあります。そのため「よくできた」に同じようにマルがついていたとしても、Aさんの場合は「本当にすごい成長だ」ということがあります。手渡しし、言葉をかける場面は紙の上の評価だけでは表せない、その細かな成長をきちんと伝えたい場面です。

親御さんから質問が出た時もきちんと説明できるようにしています。「まだまだ伸びていける段階です」「この項目はたった1つのマルですが、実はダントツなんです」など。小学生の場合は、お子さんの成長に焦点を当てて通知表も見ていただければと思います。

通知表に対する保護者の心構え

小学校教員経験者の方や、現役小学校教員の方がおっしゃったように、通知表にはより多くの成長が記されています。お子さまの成長につなげるには「何ができたか」「何に課題があるか」を通知表から読み取ることが大切です。

第一に「できていること」に注目。今学期、お子さまがどのような部分で成長したのかを見て、「がんばったね」と褒めてあげてください。

次に、お子さまがどんな努力をしてきたのかを見てあげましょう。どのようなことが評価されて良い成績になったのか、実はお子さま自身もあまりわかっていないかもしれません。「これを頑張ってきたから、良い成績になったんだね」と、一つずつ気づかせてあげてください。

通知表を使って子どもをどう伸ばすか

通知表を見ていると、「なかなか成績が伸びないなあ」と感じる部分もあるでしょう。しかし、ここでいきなり叱らず、一度深呼吸することが大切です。

課題がある教科や行動については、何が原因か、どのようにすればよいかをお子さまと一緒に考えてみてください。保護者のほうが経験豊かですので、お子さまよりも早く原因や対策に気づくかもしれません。それでも、まずはお子さま自身が考えられるよう、質問をする形でサポートしてあげましょう。

「これが原因だ」「こうすれば伸びるかも」という点が見えたら、改善に向けた計画を立ててみて。学習面なら家庭学習習慣を改善する、生活面なら家庭での日常生活でも意識して取り組むなどの方法によって、学校の教育と家庭教育を連携させられます。

通知表のコメント欄について

通知表には、保護者がコメントを記入する部分が設けられている場合があります。「忙しいから印鑑だけ押して学校に返却…」というのは、実はとてももったいない部分です。

普段あまり話せない学校の先生にメッセージを伝えられる欄なので、ぜひ記入して渡しましょう。

先生から保護者へのお手紙である所見欄への返信と考えれば書きやすくなるかもしれません。たとえば、先生がくれた通知表というお手紙をお子さまと一緒に見てどのように感じたり考えたりしたのか、今後お子さまとどのような取り組みをしていこうと考えているのかなどを書いてみてください。

まとめ & 実践 TIPS

ついマルの数ばかり数えてしまいがちな通知表。しかし、成績のつけ方や所見欄に込めた先生の思いを知れば通知表がご家庭へのお手紙であることが分かります。

通知表をもらったら先生からのお手紙としてお子さまとじっくり読み、今後のお子さまの成長に活用していきましょう。


出典:
「通知表」を開いたら、成績がイマイチだったとき 親はどんなリアクションを取るべき?【子どもの心理学】
https://benesse.jp/kosodate/202012/20201222-3.html

親の時代とこんなに違う! 小学生の通信簿の変化を知っていますか?
https://benesse.jp/kyouiku/202012/20201210-2.html

小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)別紙一覧|文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/attach/1415195.htm

※本記事は、小学校教員経験者である監修者を中心に、現役・元小学校教員のかたへのヒアリング内容をもとに構成しています。

監修プロフィール

門川良平

元小学校教員・学習ボードゲームデザイナー。民間企業での教材開発、公立小学校での教員、学習事業のプロデューサーを経て、すなばコーポレーション株式会社を設立。オリジナル開発した小学生からのSDGsゲームや様々な教育コンテンツを通じて、各地の企業・自治体との連携を進める。代表作「子どもと大人のSDGs学習ゲーム Get The Point」「数を楽しむカードゲーム ミーデン 」

プロフィール



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