日本の幼児教育・保育、「子ども目線」が強み

幼児教育・保育の無償化が2019年10月からスタートし、今は待機児童の解消など「量」の整備に追われていますが、今後は「質」も問われます。一方で日本の幼児教育・保育は、国際的にも高く評価されてきました。質の向上のためには、強みを失っては何にもなりません。日本の幼児教育・保育の強みは、どこにあるのでしょうか。

「姿」から心情察し育ちを見取る

国立教育政策研究所は2020年2月、「幼児教育・保育の国際比較」と題する国際シンポジウムを開催しました。19年10月に経済協力開発機構(OECD)が公表した「国際幼児教育・保育従事者調査2018」の結果を基に、そこから何が見えてくるのかを検討しようというものです。

秋田喜代美・東京大学大学院教授は、日本の幼児教育・保育の特徴として、(1)育てたい資質・能力(コンピテンシー)が「10の姿」(健康な心と体▽自立心▽協同性▽道徳性・規範意識の芽生え▽社会生活と関わり▽思考力の芽生え▽自然との関わり・生命尊重▽数量・図形、標識や文字などへの関心・感覚▽言葉による伝え合い▽豊かな感性と表現)として示され、全人的な教育として大綱化されている(2)カリキュラムは5領域(健康▽人間関係▽環境▽言葉▽表現)を基に、知・徳・体や心情を大事にしている(3)「遊び」を教育方法とし、自然や四季の行事を大切にしながら、環境を通して教育・保育が行われている(4)観察と記録、振り返りと対話を重視して、育ちを捉える評価と研修が行われている……を挙げました。

小さい子どもに、テストはできません。教師や保育士が、子どもの様子を見て、その心情を察し、どう育っているのかのプロセスを見取ろうとする努力が、伝統的に重ねられてきました。子ども目線で寄り添う、というのが、日本の幼児教育・保育の強みだというわけです。

実は「幼小接続」も

小学校との関係が重視されているのも、強みだといいます。遊びを通して教育を行う幼児教育・保育と、教科の授業を基本とする小学校とは、ずいぶん違う印象を持つことでしょう。しかしOECDの調査でも、教師や保育士が1年間に受けた研修に含まれていた内容として「幼小接続での支援」を挙げたのが53.0%と、参加した9か国(日本、チリ、デンマーク、ドイツ、イスラエル、アイスランド、韓国、ノルウェー、トルコ)のうち最も高かったのです。

2018年度から全面実施になっている幼稚園教育要領や保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領と、20年度から全面実施となる小学校の学習指導要領は、幼小間の接続をいっそう意識して改訂されました。幼児期の豊富な体験によって身に付けた学びの基礎が、グラデーションのように小学校の各教科へとつながっていく……というイメージです。

国際シンポでも、ノルウェー教育研究省のトーべ・スリンデ学校・幼稚園部門上級顧問が調査結果を踏まえて「遊びと子ども目線という点では私たちも同じレベルだと思っていたが、日本は圧倒的だった」と評価していました。

日本の教育を考える上では、第三者の目も含め、何が強みで、何が課題なのかを冷静に見つめ、強みの部分をさらに伸ばすようにしたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※教育改革国際シンポジウム「幼児教育・保育の国際比較-OECD国際幼児教育・保育従事者調査2018の結果から-」
https://www.nier.go.jp/youji_kyouiku_kenkyuu_center/symposium/sympo_r01/

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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