日本の教育、「強み」と「弱み」は?

お子さんを学校に通わせたり、かつて学校に通っていたりした身からすると、どうしても日本の教育には辛めの評価をしがちです。それも学校教育のたゆまぬ改善には必要なことですが、時として優れた点まで損なってしまいかねません。
国際的な視点から眺めてみると、日本の学校教育の「強み」と「弱み」は何なのだろう……。そんな研究報告がまとまりました。

「全人的な学び」「授業研究」は世界が注目

報告書は、文部科学省がベネッセコーポレーショに委託してまとめたものです。
第3期教育振興基本計画(2018~22<平成30~34>年度)の策定に向けて、国際的な視点から見た日本の教育の「強み」と「弱み」を踏まえて検討するよう文部科学相から諮問されたことを受けました。

報告書によると、まず挙げられる強みは「全人的な学び」です。欧米などの諸外国では、先生の仕事が授業に特化されているのに対して、教科指導と生徒指導、部活動指導などを一体で行う「日本型学校教育」は、むしろ近年、国際的にも高く評価されているといいます。また、先生が研究授業を行って、先生同士で検討し合う「授業研究」も、授業の質を高める秘訣として、今では50か国以上に広まるなど、注目されています。日本では当たり前のことに思えることが、実は高い水準の教育を支えている要因になっているのです。

しかし、「強み」は「弱み」に転じることもあります。その最たるものが、「世界一忙しい」といわれる教員の労働時間の長さでしょう。報告書は、「教員数の確保が必要」だと指摘する一方、多様な専門職を交えた「チーム学校」や、地域社会とのパートナーシップ(協働関係)を推進することで解決しようとしていることを紹介しています。

高い家庭の教育費負担は解消を

改めて浮き彫りになっているのが、家庭への教育費負担の高さです。経済協力開発機構(OECD)の統計では、公財政教育支出が国内総生産(GDP)の2.9%で、OECD加盟国平均(3.9%)より1ポイント低く、下から2番目です。要するに日本は、国や自治体が教育にお金を掛けていないというのが、国際的視点から見た実情です。

代わりに教育費を出しているのが、家庭です。最も教育費が高いのは中学3年生であり、世帯年収が高いほど教育費が高くなる傾向があるなか、特に大きな差が出ているのが小学6年生と高校3年生です。「中学受験や大学受験にかける教育費が世帯年収によって異なっている可能性」という報告の指摘は、格差が進んでいるといわれる近年の日本社会にとって、真剣に考えるべき課題です。

報告書では、国立社会保障・人口問題研究所が2015(平成27)年に行った調査結果を改めて紹介しています。理想の子ども数を持たない理由は断トツで「子育てや教育にお金がかかりすぎる」で、負担として大きいと思われるもののトップは、大学・短大・専門学校などの教育費でした。

国や自治体が財政難に陥っていることも確かですが、だからこそ納税者でもある家庭の高い教育費負担を放置してはいられません。「教育政策としてのみならず少子化対策としても教育費負担の軽減が課題となっている」という報告書の指摘を、ぜひとも生かしてほしいものです。

※教育改革の総合的推進に関する調査研究~国際的な視点から見た日本の教育に関する調査研究~
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/chousa/1386243.htm

※教育振興基本計画
http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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