小学校受験のために必要な力とは?

近年、増加傾向にある小学校受験。
小学校受験を考えた場合、どんな力が必要となるのでしょうか。
近年の小学校受験事情に詳しい、1979年発足の幼児教室「富士チャイルドアカデミー」校長の前宏美氏に伺いました。

「聞く」「話す」力の重要性

小学校受験では、ペーパーテスト、制作課題、運動、行動観察、面接などが行われますが、いずれの課題でも必要となるのが、相手の話を「聞く」力です。
ペーパーテストでは、文字や数字を書くことは求められませんが、先生のお話を耳で聞いて自分で理解し、その答えを線や印で表現するものが多いのです。お絵描きや工作、運動でも、まず指示を聞き取り、それを理解したうえで、作品や自分の体で自分なりに表現することが求められます。「聞く」「話す」といった基本的な言語能力は非常に大切です。

図形や数の問題を直感的に解く力や、画像を記憶する力は素晴らしいのに、言葉を使うのが苦手というお子さまは、特に男の子に多いですね。これは個性ではありますが、受験では総合力が問われますので、言語の力をある程度までは伸ばす必要があると思います。

子どもたちが「言葉」を使う機会が減っている?

ところが、近年子どもたちと接していて「昔より言語能力が落ちているのでは」と感じることが増えてきました。おそらく、携帯メールなどの普及により、家庭の中でさまざまな言葉を聞く機会が減っているためではないかと思います。
保護者のかたが、お友達やご近所のかたとおしゃべりしたり、電話で話したりするのをよく聞いていれば、子どもの語彙(ごい)は自然に増えます。どんな言葉を使えば相手に伝わるか、感覚でつかめるようになるんですね。でも、言葉を耳で聞かなければ語彙は増えません。

先日、年長さんの子どもたちに「お食事の時のごあいさつは?」と質問したら、そもそも「食事」という言葉の意味を知らない子がいてびっくりしました。「家族旅行に行ったことがありますか」と尋ねたら「旅行」の意味がわからない。これは、大人がコミュニケーションをメールなどで済ませていて、家で言葉を使っていないことに原因があると思います。
また、お友達のおもちゃを奪い取ってから「貸して」というなど、言葉の基本的な使い方がわかっていないお子さまも増えています。
お子さまの顔を見てしっかりお話ししてください、ご家族の中で会話を増やしてくださいと折に触れてお話ししているのですが、そうすると子どもたちはすぐに変わってきます。語彙が増え、表現力も思考力も上がってくるんですね。ご家族の「会話」は、本当に大切です。

無理はさせず、「一歩ずつ」前へ

子どもたちの思考力や表現力は、遊びに夢中になり、集中している時に伸びていきます。まだハイハイしている子に「跳べ!」というのは「無理」であり、無理を強いることはやってはいけないことです。しかし、歩くのを楽しみ始めた子に「あと一歩」がんばってみよう、次の曲がり角まで歩くと良い景色が見えるよ、と声をかけるのはとてもよいこと。「あと一歩先に進めた」「できなかったことができた」という実感は、子どもの自信につながり、遊びをさらに発展させていくのです。幼児教育では特に、どこがその「あと一歩」なのか、見極めることが非常に大事です。

「わが子をどう育てたいか」保護者の判断が問われる場

一昔前は、小学校受験といえばお母さまのほうが熱心なケースがほとんどだったのですが、近年はお父さまが積極的に関わり、むしろ主導されるご家庭が増えています。「合格実績」や「対費用効果」といった数値で語ることに慣れていらっしゃる方が多いので、説明会などには目安となる数値はある程度用意していきます。しかし、教育は数値だけでは決して語れません。

小学校受験を決断すること、志望校を決定することは、お子さまの年齢が低い分、保護者の判断が重い意味をもつといえます。ある意味、お子さまの「生き方を選ぶ」ような行為となるからです。
小学校受験のよさは、この時期に子どもの育て方、わが家の教育方針についてご家族で真剣に考える機会が得られるところにあります。「小学校受験をしなければ、きっとこんなに子どもの将来について真剣に考えることはなかった。やってよかったと思います。」と多くの保護者のかたが言ってくださいます。
お子さまの可能性を伸ばすひとつの選択肢として、小学校受験を考えてみていただければと思います。

プロフィール


前 宏美

幼児教育のエキスパート。現在、富士チャイルドアカデミー(1979年設立)の校長。
幼稚園・小学校受験の幼児教室として8教室を展開、毎年多くの在籍生を志望校合格へ導いている。
自ら幼稚園・小学校に足を運んで常に正確な学校情報を保護者に提供し、各校からの信頼も篤い。
富士チャイルドアカデミー
http://fujichild.jp

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