小学校以降の成長のベースとなる「我慢をする力」は家庭で伸ばす!【前編】

我慢をする力は、生涯にわたって健全な社会生活を送るために不可欠な力です。適切に我慢ができないと、小学校以降、学習や人間関係など、さまざまな面で支障が生じます。幼児期に家庭での生活や遊びの中で我慢する力を育む方法について、文京学院大学大学院特任教授の平山許江先生にお話を伺いました。


子どもの心の動きは「アクセル」と「ブレーキ」に置き換えて考えよう

 「うちの子は我慢ができない」という悩みをよく耳にします。もともと子どもに我慢する力は備わっていませんから、小さいうちは我慢ができなくても当然です。しかし、ほうっておいて伸びる力ではありませんので、保護者のかたが徐々に教えていかなくてはなりません。

 

子どもに我慢のしかたを覚えさせるために、まず我慢とはどのような心の動きであるかを理解しましょう。我慢は、自動車の「アクセル」と「ブレーキ」に置き換えて考えるとわかりやすくなります。もともと子どもはアクセルしか持たない車のような存在です。「やりたい」「欲しい」「知りたい」といった欲求に沿って、どんどん行動を加速させていきます。しかし、そのままではすぐに衝突してしまいますから、ブレーキの使い方、すなわち適切に我慢することを覚えなくてはなりません。欲しいものを手に入れるために待つ、ブランコに乗りたいから順番を守る、明日も遊びたいから片付ける……などがブレーキの例です。

 

 

ブレーキをかけすぎて子どものやる気を失わせないように要注意!

 ここで注意したいのは、過度にブレーキをかけ続けると、しだいに子どもがアクセルを踏んで加速する力が失われていくことです。本来、子どもが持っている「やりたい」といった気持ちや意欲は、成長を支える原動力であり、どんどん伸ばしていくべきです。

 

ところが、子どもが言うことを聞かない時に、「だめ!」「やめなさい!」などと、急ブレーキをかけるように一喝することを続けていると、子どもの気持ちや意欲は減退してしまいます。やりたがる子どもに「やめなさい」というのは簡単ですが、やりたがらなくなってしまった子どもに「やりなさい」と言うのは難しく、そうした状態になると成長に支障が生じる恐れもあります。子どもが理解するまで、我慢しなくてはならない理由をくり返し説明するのは、時間や根気を要しますが、そもそも我慢する力は容易には身につかないものだとお考えください。

 

 

きちんと理由を説明してから我慢させる習慣をつけよう

 子どもにブレーキの使い方を覚えさせるために、まずは子どものアクセルを十分に認めることから始めましょう。前述したように、アクセル自体はよいものですから、場合によっては子どもの気持ちや意欲を高めるために、保護者のかたからアクセルにガソリンを注入するような言葉をかけます。

 

たとえば、公園での遊びに夢中で帰りたがらない時には、「公園は楽しいよね。また明日も遊ぼうね」と、最初に子どもの気持ちを受け止め、遊ぶこと自体は好ましいものであることを伝えます。そのうえで、「でも今日は、そろそろ暗くなるから帰ろうか」などと、我慢をする理由をきちんと説明します。それでも、「イヤだ。まだ帰りたくない!」と、すぐに従わないこともあるでしょう。しかし、理由を説明せず、「もう帰るよ」と手を引っ張るだけのやり方に比べ、はるかに子どもに納得させやすくなりますし、しだいに「暗くなる前に遊ぶのをやめて帰らなくてはいけない」と学習し、我慢をする力が高まっていきます。

 

ただし、まだ理屈を理解できない年齢の子どもは、保護者のかたが理由を説明しても、我慢する力にはあまりつながりません。たとえば、3歳くらいなら、おもちゃ屋さんに連れて行って、「初めから今日は買わないと言ったよね」「次の誕生日に買おうね」などと言って、我慢をさせることは問題ありません。しかし、理由が理解できない子どもに散々おもしろそうな物を見せたあとに何も買わずに帰るのは少々酷な話で、駄々をこねられてもしかたない面があります。そういう場合は、そもそも買わないのならお店に連れて行くことを控えたほうがいいでしょう。

 

 

【後編】では、引き続き、我慢をする力を伸ばす具体的な方法を説明します。

 

 

プロフィール

平山許江(ひらやま・もとえ)

育児のための退職や大学院通学を挟みながら、私立・国立幼稚園に断続的に20年間勤務。その後、文京女子短期大学を経て、文京学院大学院特任教授に就任。主に大学院人間学専攻保育コースの指導に当たる一方で、子育てフォーラムなどを通じて保護者に向けて子育ての楽しさを発信している。著書に、『幼児の「ことば」の力を育てる』『幼児の「かず」の力を育てる』(いずれも世界文化社)など。

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