茂木健一郎先生(脳科学者)が語る、「読書が脳に与える いい影響」とは【第1回】

本を読むと頭がよくなる……。よく言われることですが、それは単に知識が増えるからだけではありません。脳科学者の茂木健一郎先生に、ご自身の経験を踏まえて、読書という行為が脳に与える効果について語っていただきました。

読書のワクワクで頭がよくなる

学力が高い子はだいたい読書好きが多く、勉強が苦手な子は読書の喜びや楽しみを知らないことが多いですよね。脳にとって読書は、総合的かつ抽象的な刺激なんです。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚という五感の記憶が総合されて、それが言葉になるので、言葉をとおして世界を知る、整理するというのは、脳のいちばん高度な働き。読書は、言葉をとおして想像力をはぐくんだり、遠い世界に思いを馳せたりしますから、抽象的な思考能力を高めるには非常にいいんです。
何かをしていてうれしいことがあると、脳の中にドーパミンという物質が出て、そのときに活動していた神経細胞のつながりが強化されます。これを「強化学習」といいます。これが、脳の学びの基本ですね。そして、その回路は使えば使うほど強化されます。
では、どういうときにドーパミンが出るか。それは、ワクワク・ドキドキしたり、感動したりしたときです。



子どものころの感動で読書の達人に

たとえば僕は子どものころに『こちらアポロ』というマンガを読んだのですが、その中の「月に行くロケットは、いつも回転していないといけない。それは、太陽が当たる側と当たらない側でとても温度差があるので、止まっていると宇宙飛行士が焼け焦げてしまうからだ」という部分に、当時、「すごいなあ」と心が震えたことを今でもしっかり覚えています。そんな経験がいくつも重なって、僕を本好きにしたのでしょう。大人になった今でも、いろいろなジャンルの本をバランスよくたくさん読んでいます。「読書のマエストロ」ですね(笑)。本をたくさん読んだことが、思考のひらめきの元になっているのは間違いありません。あと、夏目漱石の作品や『赤毛のアン』などの、僕にとってスタンダードな本というのは、繰り返し読むたびに自分の中に何かを育ててくれる、大切な存在です。大好きな夏目漱石などは、出先で読みたくなるたびに買っているので、全作品を数冊ずつ持っていますよ。

また、脳科学の観点から言うと、本を読んで何かに感動したり、興味を持ったりして、その後、読書体験を重ねてその感動や興味がさらに深まることを繰り返すと、読書に関係する回路が強化されます。その結果、論理的思考力やコミュニケーション能力が高い「地頭(じあたま)」の強い子になるんですよ。



集中力を鍛えて本番に強い子に

地頭の発達のカギになるのが、脳の前頭葉の前側にあるDLPFC (前頭前皮質背外側部)という部位。集中力を発揮するときに使われる回路、いわば脳の司令塔で、IQ(知能指数)とも関係が深いと言われています。読書に集中している状態が、DLPFCが活動している状態だと思ってください。この部位を鍛えるいい方法は、ちょっとややこしいことに集中すること。なので、少し難しい本をがまんして集中して読める子が伸びる子なんですよ。読書中に母親が話しかけても集中しすぎて返事をしないなど、そういう子は大いに将来の伸びを期待できます。読書で鍛えた脳の回路は、ほかのことにも応用がきくようになりますよ。

実は、できる子は居間で勉強していることが多いんです。ふだんから雑音があるところで集中できるようにしておくとDLPFCが鍛えられて、本番に強い子になる。試験会場って意外とざわざわしているでしょう。そういう場所で力が出せるんです。勉強のために子どもに静かな環境を与えるという教育方針は、必ずしも正しくないかもしれませんね。

次回は、さまざまなジャンルの本をまんべんなく、しかもたくさん読むことで生まれる効果について語っていただきます。


『脳を鍛える読書のしかた。』
<マガジンハウス/茂木健一郎(著)/840円=税込>


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プロフィール

茂木健一郎先生

脳科学者。東京大学卒業、同大学院修了後、ケンブリッジ大学を経て、現在ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。専門の脳科学、認知科学を生かして各種メディアで活躍。著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)など。

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