次期指導要領、「海洋教育」が急浮上

授業の在り方を大きく変える、次期学習指導要領の論議が、中央教育審議会で年内の答申を目指して、大詰めを迎えています。そんななか、終盤になって急浮上した課題があります。
「海洋教育」です。

パブコメの提案を受けて

次期指導要領をめぐっては、「アクティブ・ラーニング」(主体的・対話的で深い学び、AL)という言葉が、教育界での流行語大賞と言ってよいほど話題を集めています。ただ、それも「資質・能力の三つの柱」(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)を育成するという大方針の下、「何を学ぶか」にとどまらず、「何ができるようになるか」、さらには、そのために「どのように学ぶか」までを見据え、「社会に開かれた教育課程」を実現する……というのが今回の改訂の肝です。

そうした「育成すべき資質・能力」を確定するため、中教審は今回、従来と違う審議の手法を取りました。これまでのように、各教科等の「専門部会」で議論してから全体をまとめるボトムアップ方式ではなく、「教育課程企画特別部会」で大方針を確定し、その後はじめて各教科等の「ワーキンググループ」(WG)を設け、大方針に基づいた各教科等で育成を担う資質・能力を確定させる……というトップダウン方式です。

WGなどからの報告を受けて、特別部会や、その上の教育課程部会で審議し、答申のもとになる「審議のまとめ」を8月26日に公表。審議まとめは、一般からの意見を聴くパブリックコメント(意見公募手続、パブコメ)に掛けられた一方、関係団体からのヒアリング(意見聴取)も行われました。

パブコメには2,974件もの意見が寄せられ、その概要が、中教審事務局である文部科学省担当課により、10月26日の教育課程部会などに報告されました。概要資料によると、個別の項目として「海洋教育、主権者として求められる力、特別支援教育、多様性と教育等に関する御意見が寄せられた」といいます。

このうち海洋教育は、11月14日の企画特別部会に「答申に向けて記述の充実を図る事項(案)」の1項目として取り上げられました。異論が出なければ、答申を経て、次期指導要領に盛り込まれる見通しです。

政府計画でも「充実」を規定

海洋教育は、現行の政府「海洋基本計画」(2013<平成25>年4月閣議決定)にも、海洋立国を担う人材を育成するためにも、小中高で「海洋に関する教育を充実する」としています。東京大学には「海洋教育促進研究センター」が設けられ、他の大学とも連携しながら、各地の拠点校などで、教育実践を行っています。

確かに、同計画でも「関係する教科や総合的な学習の時間を通じて体系的に行われるよう、必要に応じ学習指導要領における取扱いも含め、有効な方策を検討する」としていましたから、パブコメの指摘を受け入れる素地は十分にありました。

新しい教育課題に関しては、政府の方針を受けて、途中から小学校にも「プログラミング教育」が急きょ審議まとめに盛り込まれた経緯もあります。海洋教育も、各学校でカリキュラム・マネジメントを工夫することによって、各教科や総合学習を有機的に結び付けながら展開していくことが求められそうです。

※教育課程部会 教育課程企画特別部会(第25回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/1379499.htm

※海洋基本計画について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/kihonkeikaku/

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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