次期指導要領、高校の科目は新テストも意識‐渡辺敦司‐

2020(平成32)年度から順次、全面実施に入る次期の学習指導要領の基本方針(外部のPDFにリンク)が、いよいよ固まってきました。最も大きなポイントは、これまでにお伝えしてきたように、教育の重点を、教師が「何を教えるか」から、児童生徒が「何ができるようになるか」にシフトすることです。そして、この大方針のもと、幼・小・中・高の各学校段階に縦串を、各教科等に横串を刺すことによって、指導要領全体を「構造改革」しようというのです。そうはいっても、多くの保護者や子どもが気になるのは、具体的な教科の内容がどうなるか、とりわけ大学入学者選抜の改革と相まって、改訂の目玉とされる高校の教科・科目がどうなるかでしょう。

中央教育審議会の部会の論点整理では、高校の必履修教科・科目のうち、特に国語科・地理歴史科・公民科・外国語科・情報科で「抜本的な検討」を行うとしています。数学科や理科は入っていませんが、選択科目として、数学と理科を合わせた「数理探究(仮称、以下同じ)」を新設するとしています。諮問で下村博文文部科学相が検討を求めていた「より高度な思考力・判断力・表現力等を育成するための新たな教科・科目」に当たるもので、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)を参考にするといいますから、単に知識を覚えるだけでは太刀打ちできそうにありません。大学入試センターに代わる新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の合教科・科目型出題としても有力視されています。

地理歴史科の「歴史総合」は、単に近現代を中心に世界史と日本史を統合するだけでなく、調べ学習や課題解決学習を採り入れて、自国とグローバルな状況が影響しながら展開していく歴史を考察する力を付けさせることを目指しています。年号や名称をひたすら覚えるだけでは通用しないでしょう。歴史がどう転換し、つながっていっているのかを考察することで、現在や未来を考える力にまで高める必要があります。
公民科では、18歳選挙権も意識して「公共」を新設しますが、家庭科や情報科などとも連携して、社会保障や消費行動、家族など、さまざまな社会の課題にどう関わるのかを、討論や模擬投票、模擬裁判、新聞学習、インターンシップ(就業体験)などを通じて考えることを目指します。キャリア教育の中核としても期待されています。
抜本的な改革の対象に「情報科」が入っているのは、意外に思うでしょうか。科学的理解に裏打ちされた情報活用能力は、今後の社会に不可欠なものです。新テストでも出題の対象となれば、名実共に<主要教科> となることでしょう。

いずれの教科も、「実社会との関わり」が重視されています。社会と隔絶した学問体系の入門編を学べばよいわけではありません。進学にせよ就職にせよ、社会への入り口に立つ高校卒業生にふさわしい資質・能力を身に付けさせることが眼目です。それに伴って小・中学校や幼稚園の教育も見直していこうというのが指導要領の「構造改革」であり、それを大学にもつなげて質の高い人材を社会に送り出そうというのが、高校教育・大学入学者選抜・大学教育を一体で変える「高大接続改革」なのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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