「国語」を思考力育成の重要な核に 次期学習指導要領

教科書や授業のもとになる「学習指導要領」を改訂しようとする作業が、本格化しつつあります。小学校は2020(平成32)年度から、中学校は21(同33)年度から、高校は22(同34)年度入学生から、全面実施に入る見通しです。今回の改訂では、小学校英語の教科化や、高校の新科目創設などが話題になっていますが、最大の眼目は、教科や学校段階を超えた「育成すべき資質・能力」を定めることで、「社会に開かれた教育課程」を目指すことです。そうしたなかで注目されるのが、国語科の役割です。

国語科をめぐっては、既に、高校の必履修科目(現在は「国語総合」1科目)を「現代の国語」「言語文化」に分け、選択科目として「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」(同「国語表現」「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」)を設置する方針であることが報じられています(新科目案はいずれも仮称)。これらは単に、高校の科目がどうなるかという問題にとどまりません。次期の指導要領が、先に指摘した改訂の大方針とともに、高校という「出口」から逆算して、幼児教育までの学びや教科の在り方を見直そうとしているからです。さらに注意したいのが、必履修科目を二つに分けていること、選択科目の中に「論理国語」を置いていることです。これは国語科のみならず、他教科にも影響する次期改訂の象徴と言っても過言ではありません。

国語の教科書というと、保護者世代にとっては、文学作品や評論文の読み取りが中心という印象が、どうしても強いのではないでしょうか。一方で今の子たちには、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の国語B問題のように、図やグラフから必要な情報を読み取ることは当たり前になっています。現在の指導要領でも、「言語活動」を全教科・領域等で実施することになっています。

次期指導要領では、そうした方向性を継承・発展させ、国語科はもとより、全教科等を大幅に見直すことにしています。数学や体育などすべての教科等は、国語を使って授業を行うものですから、各教科等なりに思考力・判断力・表現力や学習意欲を育てるにも、まずは国語科で育まれる言語能力が核になるからです。

高校の新科目案で見てみましょう。「現代の国語」は「実社会・実生活に生きて働く国語の能力を育成する科目」であり、そこでは、▽根拠に基づいて論述したり議論したりするために必要な能力 ▽多様な資料等を収集して解釈する能力 などを育成することを目指しています。また、「論理国語」は、「多様な文章等を、多角的な視点から理解し、創造的に思考して自分の考えを形成し、論理的に表現する能力を育成する科目」だといいます。このように、すべての教科等に共通する思考力・判断力・表現力のもととなる言語能力を、幼児教育から高校まで、徐々に育成することを狙っているのです。

実施はまだまだ先の話ですが、ご家庭での準備としては、お子さんの読書量を増やすことはもとより、さまざまな話題を取り上げて親子の会話を豊富にすることが考えられます。実はそれが、子どもの言語能力を向上させる、重要な土台となるのです。

※中央教育審議会 教育課程部会 言語能力の向上に関する特別チーム
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/056/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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