高まる「体験活動」の重要性 意識しないと不足しがちに

文部科学省は先頃、「青少年の体験活動の推進方策に関する検討委員会」を発足させました。2013(平成25)年1月の中央教育審議会答申を受けた取り組みを検証するとともに、第3期の教育振興基本計画(2018~22<平成30~34>年度)にもつなげたい考えです。今なぜ、体験活動が注目されるのでしょうか。

コミュニケーションや課題解決のスキルも身に付く

諸外国に比べて、日本の子どもの自己肯定感が低いことは、各方面から問題視されています。そうしたなかで、自然体験や生活体験を多く行った子ほど、自己肯定感が高くなり、道徳観や正義感を持てる傾向にあることが、独立行政法人国立青少年教育振興機構の調査から明らかになっています。

また、自然の中での遊びを豊富に行うほど、コミュニケーションスキルや礼儀・マナー、課題解決スキルも備わることもわかってきました。

こうしたスキルや態度は、これからの社会にますます求められる力です。それも昔なら、小さいころからの自然な生活や遊びを通じて、意識しなくても、ある程度は身に付けられた力でした。

しかし、検討委でも紹介されたベネッセ教育総合研究所の調査結果を見ても、放課後の過ごし方は、勉強時間が増えたのはよいものの、屋内外での遊びや、家族・友人と過ごす時間は減り気味です。

体験活動は、勉強とも無縁ではありません。2015(平成27)年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では、理科が出題されましたが、自然の中で遊んだことや、自然観察をしたことがある子ほど、理科の平均正答率が高くなる傾向が見られました。

特に、現在検討されている次期学習指導要領では、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……という幅広い資質・能力を育成するため、授業をアクティブ・ラーニング(AL)によって「主体的・対話的で深い学び」にしようとしています。それには、教科の内容と、体験活動を有機的に結び付けることも、ますます求められます。

長期の宿泊、学校は計画しづらく

実は、現行の指導要領でも、集団宿泊活動やボランティア活動、自然体験活動、地域の行事への参加などの豊かな体験を充実することとされており、家庭や地域とも連携して、学校で、計画的・効果的な体験活動を充実させることになっています。

しかし学校も、授業をこなすのに精いっぱいで、先生にとっても負担の多い体験活動を、なかなか十分に組み込めない悩みがあります。小学校で、宿泊を伴う体験活動の実施率は9割に上りますが、3校に2校は1泊2日にとどまり、多くても2泊3日まで。3泊以上の実施率は、1割にも届きません。これに対して、検討委の委員からは、2泊3日ならスケジュールをこなすだけですが、3泊以上になると、自分で考えて行動しなければならなくなり、体験の質が全然違ってくるという指摘もありました。

子どもに応分の「負荷」をかけて、自ら考え、行動する力を引き出す……。そんな機会を、学校・地域・家庭が協力して、意識的に生み出していくことが、これからの時代には、ますます必要になっているのです。

※青少年の体験活動の推進方策に関する検討委員会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/036/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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