大学合格はゴールじゃない! 「三つのP」で教育が激変

国立大学の合格発表も終わり、ほとんどの受験生が進路を決めたことと思います。今どきの大学が、保護者の方々の学生時代と比べて、入学してからの勉強が大変になっていることはご存じでしょう。しかし、これからは、もっと大変になります。「三つのポリシー(P)」による大学改革が、着々と進行しているからです。

  • ※三つのポリシーに関する参考資料
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2016/03/03/1367444_10.pdf

「アドミッション・ポリシー」という言葉は、受験生をお持ちのご家庭なら、願書などに書いてあるのをご覧になったことがあるかもしれません。「入学者受け入れ方針」のことで、APと略されます。その大学や学部で、どんな学生を求めているのかを明示するものです。単なる理想論ではなく、入試方法も左右します。APに沿った学生を選抜するのにふさわしい方法で入試を行うためです。

重要なのは、APは単独で存在するものではないことです。残り二つのPは、「教育課程編成・実施方針」(カリキュラム・ポリシー、CP)と、「学位授与方針」(ディプロマ・ポリシー、DP)で、学位とは、学部でいえば「学士」のことです。

順番からいえば、三つのPの在り方を大きく規定するのが、DPです。もともと「三つのP改革」が求められた背景には、これまでの大学が、社会から評価されるような「汎用的能力」を持った卒業生を十分に送り出していないじゃないか……という反省がありました。そこで、各大学がどんな卒業生を送り出したいのかをDPという形で明確化し、そうした卒業生を育成する具体的なカリキュラムの基盤として、CPを定めようというわけです。APは、そうした教育に耐え得る学生に入学してもらうための規定と位置付けられます。

三つのPの必要性が指摘されて、既に10年が過ぎました。現在では、多くの大学が各ポリシーを策定しています。とりわけAPの策定率は、ほぼ100%です。しかし本来なら、DPやCPなきAPというのは、あり得ないはずです。まだまだ三つのPは徹底されていないというわけです。

そこで文部科学省は、法令を改正して、三つのPを一体的に策定するよう各大学に義務付けるとともに、その運用指針となるガイドラインを作成。各大学では、2016(平成28)年度中に対応を済ませることが求められます(改正法令の施行は17<同29>年度から)。これにより、APおよび入学者選抜の方法も、大幅に見直す大学が増えてくることでしょう。2016(平成28)年度入試では、東京大学が推薦入試を、京都大学が特色入試を導入したことで注目されましたが、三つのP改革により、そうした動きが他大学でも、一気に加速するかもしれません。

重要なのは、単に入試方法が変わるだけでなく、入学後の教育のあり方も大きく変わるということです。一つひとつの授業でも、多様な活動を取り入れたアクティブ・ラーニング(能動的学修、AL)が強化されることでしょう。高校生のうちから、知識はもとより、主体的・協働的な学びの姿勢を身に付けることが、ますます求められます。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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