幼児期に始めたい健康教育【後編】子どもに健康の大切さを教えるポイント

家庭で健康教育を行う際には、どのような点が重要なのでしょうか。引き続き、帝京短期大学教授の宍戸洲美先生に伺いました。



生活リズムを整えられるように環境整備を

私が保護者のかたがたにお話するときに、大切なこととしてお伝えしているのは、
  ●しっかり食べる
  ●たっぷり眠る
  ●外で群れて遊ぶ
  ●安心してかかわれる大人がいる
の4つのことです。

これらの重要性を多くの方が理解されていますが、環境的に厳しくて、やりたくでも出来ないという場合があると思います。朝は忙しく、子どもの朝食を菓子パンやクッキーなどで済ませてしまう。子どもは塾や習い事で帰宅が9時くらいになり、それから夕食、入浴と就寝時刻が遅くなってしまう。そのような事情があることはわかりますが、前編でお話したとおり、せめて小学校卒業までは、子どもの生活リズムを整えることの大切さを、保護者の方も理解していただければと思うのです。

朝食はバランスのよいメニューにして家族そろって食べる。夕食は7時頃までに食べて、9時頃には寝る。運動についても、サッカー教室や水泳教室に通っているから、体を動かしているので安心というものではありません。子どもにとって大切なのは「自分で考えて、自分のしたいことで遊ぶ」という経験です。毎日習い事を入れて、子どもの時間を管理してしまっては、友だちと自由に遊ぶ時間もありません。そうしたことは健康教育だけでなく、今の生活にももちろん重要です。お子さまが毎日生き生き元気に過ごせているかを今一度見つめていただければと思います。



大切さがわかってこそ「できる」につながる

幼児期や小学校低学年では、子どもは保護者の様子を見てまねますから、行動で示すことも大切です。お母さんが帰宅後に手洗いうがいをすれば、子どももしますし、お父さんが食後に歯を磨けば、子どももそれが普通なのだと認識します。そのように行動で示すことをベースにしながら、「なぜそれをするのか」を説明し、その行動の大切さを理解させるようにしましょう。単に「早く寝なさい」「好き嫌いせずに食べなさい」と言っても、なぜだからわからなければ、子どもはその大切さを理解できません。

たとえば、「夜にたくさん寝ると体や脳の疲れが取れるからだよ。早く寝ると体が成長するホルモンがたくさん出てきて、体が大きくなるからだよ」ということを教え、早寝早起きをした時には「体の調子はどう? いいかな?」と子どもに聞いて、自身の感覚を確認させてみる。そこで体の調子がよければ、たくさん寝ることは自分にとっていいことだという経験になります。

小学校中学年にもなると、だんだんと保護者の手を離れ、自分でできることが多くなっていきます。そうしたときにいきなり子ども任せにするのではなく、「今日はうんち出た?」「つめは切っている?」など声をかけて、時々、様子を確認しましょう。中学年以上の保護者の方と話をしていると、子どもが排便をしているかどうかを把握している保護者は少ないと感じます。子どもの調子が悪くて、話を聞いたら便秘だったということも珍しくありません。

また、子どもに科学的に説明するためにも、保護者の方もぜひ健康について学んでいただきたいと思います。なぜ朝ご飯をしっかり食べたほうがよいのか、たばこにはどのような害があるのか。体に悪いと分かっていても、子どもが理解できるように説明できるという人は少ないと思います。

夜更かしにしても同じです。最近、夜9時、10時と夜遅くまで子どもと外出している家族を見かけます。子どもに夜更かしをさせていることにうしろめたさを感じているとは思いますが、そのような行為がのちのち、子どもにどのような影響があるのかを十分理解していれば、もう少し少なくなるのではないのでしょうか。



健康診断を子どもが自身の体と向き合う機会に

学校での教育活動も、保護者の声掛けによって、健康について学ぶ機会になります。たとえば、健康診断は毎年行われますから、子どもが自分の成長を実感できる絶好のチャンスです。1年間の生活の仕方が健康診断の結果に表れ、次の1年間の成長につながるととらえて見てください。歯の検査でむし歯がなかったら、「1年間、がんばって歯磨きをした成果が出ているね」と褒めてあげてください。もしむし歯があれば、「上手に磨けていなかったかな」と次の改善につなげていけばよいでしょう。

もう一つ気を付けていただきたいのは、保護者の生活習慣です。たとえば、子どもだけで食べさせるというご家庭があると思いますが、そうした子どもは食事を通して学ぶべき大切なことが学べません。食事はコミュニケーションの場でもあります。家族みんなで食事をすることで、子どもはよくかんで食べることや好き嫌いをせず食べることの大切さを学びます。1日1回は家族そろって食卓につき、雰囲気づくりをすることも大切です。

また、喫煙についても、子どもの前で吸わないというのは常識になりました。それは副流煙の影響を考慮しているからだと思いますが、それだけではありません。子どもの前で吸わないことで、たばこには害があるという教育をするという二つの側面があります。保護者自身が生活習慣を見直すことで、子どもの健康に影響を与えていくことがたくさんあります。ぜひ見直していただければと思います。


プロフィール

宍戸洲美

宍戸洲美

帝京短期大学 生活科学科 学科長・教授。看護師、保健師を経て、3つの小学校で27年間にわたって養護教諭として勤務した経験をもつ。現在は大学で養護教諭をめざす学生たちの指導にあたると共に、NPO法人子育てアドバイザー協会の講師なども務めている。

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