高校生の4割が「メールやLINEを書きながら」勉強

ベネッセ教育総合研究所では、2014(平成26)年2月~3月に、全国28の中学校・高校に協力いただき、中学1年生~高校2年生9,468人(中学生:3,203名<13校>、高校生:6,265名<15校>)を対象にしたICTメディアの利用実態・意識に関する調査を実施しました。現在、多くの中学生・高校生がICTメディアを利用しています。そうした状況は、子どもたちの生活や文化にどのような影響を与えているのでしょうか。できる限り子どもたちの目線で、ICT利用の現状と彼らの本音を明らかにしました。



スマホなしでもインターネットにつながる中学生

中学生87%、高校生97%がインターネットを利用。中学生のアクセスデバイスは多様になっていることがわかりました。

中学生の87.3%、高校生の96.9%が、普段インターネットやメールを使っていると回答(「使っている」と「ときどき使っている」の合計)。中学生でも9割近くがインターネットを利用しています。また、インターネット利用者にアクセスツールをたずねたところ、「スマートフォン」は高校生で86.1%と高いものの、中学生は42.1%にとどまっています。中学生は「パソコン」(54.6%)、「携帯型音楽プレーヤー」(28.5%)、「ゲーム機」(23.8%)、「タブレット端末」(18.7%)など、いろいろな方法でアクセスしているようです(複数回答)。

インターネットやメールの利用状況[中高生全体]

アクセスデバイス(学年別・中高別)[インターネット利用者]


インターネットがコミュニケーションに不可欠に

ネット上でコミュニケーションをしている中学生の63%、高校生の60%が、「メールがきたらすぐに返事」をする姿も浮き彫りになりました。

中学生の64.8%、高校生の92.1%が、コミュニケーションを目的にインターネットを利用しています(メール、チャット)、Twitter、SNSのいずれかを週1回以上行っている比率)。1日のコミュニケーション目的での利用時間(平均)は1時間を超え、仲間とのやりとりに欠かせないツールになっています。インターネット利用者のうち、「メールがきたらすぐに返事を出す」のは中学生で63.3%、高校生で59.8%。コミュニケーションを大切にしている様子がうかがえます。しかし、「メールのやりとりが嫌になることがある」(中学生28.2%、高校生51.6%)、「メールやチャットを終えるタイミングが難しい」(中学生31.6%、高校生40.4%)といった煩わしさを感じている中高生も多いのが実情です。

コミュニケーション利用時間(1日あたり)[インターネット利用者]
メールなどのオンライン上のコミュニケーションに対する意識[インターネット利用者]



オンライン上で広がる「趣味」のつながり

中高生の5人に1人はオンライン上で趣味の発信やコミュニティへの参加をしているようです。

インターネット利用者のうち、オンライン上で知り合った人がいる比率は、中学生で24.7%、高校生で24.3%。およそ4分の1が、本来ならば知り合いにはなりにくかった人とのつながりを持っています。また、中学生の21.8%、高校生の22.4%が、オンライン上で趣味のつながり(情報発信やコミュニティ参加)があると回答。インターネットが共通の趣味を持つ人とつながるツールになっているのです。

オンライン上で知り合った人のいる割合とそのうち会った経験の有無[インターネット利用者]

趣味の情報発信やコミュニティへの参加の有無[中高生全体]



情報の入手にもインターネットが欠かせない

中学生の50%、高校生の68%がインターネット経由で社会のできごとに関する情報を入手していました。

社会のできごとに関する情報(ニュース)の入手にインターネットを使う比率*は、中学生で50.2%、高校生で68.3%と半数を超えています。特に「Twitter」の利用率が高く、高校生では39.6%で、「家族との会話」(35.1%)や「友だちからの口コミ情報」(21.9%)を上回りました(注:「新聞社のニュースサイト」「ポータルサイトの運営するニュースサイト」「LINE」「Twitter」「SNSサイト」「インターネットの掲示板」「インターネットのまとめサイト」のいずれかを選択した比率)。ただし、「インターネット上の情報について、正しさを確認する方法がわからない」と不安を感じている子どもも多く、中学生の38.9%、高校生の49.2%が「あてはまる」(とても+まあ)と回答しています。

社会のできごとに関する情報入手経路[中高生全体]

情報リテラシー[インターネット利用者]



勉強の時も「デバイス片手に」が普通に

高校生の4割が、勉強中にもメールやチャットしています。友達への質問に使う割合も、5割近くいることが判明しました。

「メールやチャット(LINEなど)を書きながら(返事を出す場合も含む)」勉強することがある比率は、中学生で24.3%、高校生で37.5%。一定の割合の中高生が、勉強の時にもコミュニケーションで使用しています。また、勉強への利用も進んでいます。「英語や国語、古典の辞書を使う」(中学生45.6%、高校生48.3%)、「メールやチャットで友だちにわからないところを質問する」(中学生26.4%、高校生48.3%)、「調べ学習やレポートをまとめるために情報収集」(中学生30.2%、高校生45.0%)などで高い割合を占めています。


学習時のながら行動[中高生全体]

ICTメディアの学習利用[中高生全体]



どこでも使えるようになる一方、「嫌になる」ことも。社会全体でのサポートを

本調査では、中学生の9割、高校生はほとんどが普段インターネットを利用しており、そのアクセスツールも多様になってきていることが明らかになりました。特に高校生と比べスマートフォンの保有率の低い中学生は、スマートフォンやパソコン以外に「携帯型音楽プレーヤー」や「タブレット端末」、「ゲーム機」からもインターネットにアクセスをしています。特定のツールに限定されず、さまざまな形でインターネット利用できる環境が中高生の間でも広がってきているようです。

こうしたICTメディアによるいつでもどこでもネットにアクセス可能な環境への変化は、中高生の時間の使い方だけでなく、ネット経由の手軽な情報収集や、趣味に関する活動の活発化や、ネットワークの広がり、学習での積極的な活用など日常のさまざまな行動に影響を与えていることがわかりました。しかしメディア利用すべてがポジティブで楽しいものというわけでもないようです。「メールのやりとりが嫌になることがある」といった煩わしさや「インターネット上の情報について、正しさを確認する方法がわからない」といった不安を抱えながら利用している子どもも相当数存在することも明らかになりました。

将来、デジタル社会を生き抜いていかなければならない子どもたちは、ICTメディアを、そのメリットも享受しながら自律的に使いこなす力を身に付けていくことが求められます。そのために、周りの大人は、ICT環境の変化に合わせた情報リテラシー教育や生活習慣の大切さを啓発するなど、社会全体としてサポートをしていく必要があるでしょう。


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