ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】
意識と無意識が異なる方向を見ていることが、なかなか集中できない原因となるということを前編でご説明しました。それでは具体的には、どのようなことを心がけると集中力を発揮しやすくなるのでしょうか。引き続き、メンタルトレーナーの岡本正善さんにお聞きしました。
潜在意識に働きかける4つのポイントとは?
ここまでご説明した通り、集中力をコントロールするためのカギは、潜在意識に働きかけることです。そのためには、日々の勉強やスポーツの中で、次のようなポイントを心がけてください。
【POINT1】成功パターンをイメージする
潜在意識に働きかける方法として最も効果的なのは、自分が成功する「イメージ」をもつことです。プロスポーツ界では「イメージトレーニング」は一般的ですが、みなさんにはあまりなじみがないかもしれません。
大学受験を例にして考えてみましょう。受験では極度の緊張により頭の中が真っ白になって失敗してしまう例をよく耳にします。そこで、実力通り、いや、実力以上の力を発揮できるようにイメージトレーニングをしてみましょう。家で勉強をする前に、例えば、次のように大学入試の受験会場にいる自分を想像してください。もちろん、ディテールは違っても構いません。思わず手に汗を握るほど、できるだけリアルにイメージするのがポイントです。
「シーンと静まり返る中、チャイムの音が鳴り響き、周囲の生徒がスラスラと鉛筆を走らせる音だけが聞こえてくる。あなたは深呼吸をして、心の中で『よしっ!』と気合いを入れると、1問目から落ち着いた気持ちで丁寧に問題を解き進める。そして解答欄を見直す時間を十分に残し、気持ちに余裕をもって最後の問題を解き終える——」
「これだけでいいの?」と思われるかもしれません。そうなのです。潜在意識に働きかけるには、成功パターンをイメージするだけでいいのです。ただし、何度も繰り返して、潜在意識にイメージを刷り込む必要があります。そうすると、本番では潜在意識がイメージに沿って動き出し、「失敗するかもしれない」といったマイナスのメンタルに惑わされず、集中力を発揮する状態に入りやすくなります。
【POINT2】目標を明確にする
夢や目標を明確にすると、潜在意識はそれに向かって力を発揮し始めます。言ってみれば、夢や目標をもった瞬間、潜在意識のスイッチが入るのです。
例えば、サッカー部のあなたが「全国大会出場」という目標をもったとしましょう。そのためには、下位の目標である「県大会の決勝進出」を果たさなくてはなりません。同じように考えていくと、「初戦でゴールを決める」「シュート力を高める」「筋力をつける」……などと、しだいに近くの目標が見えてきます。すると、今日の練習の走り込みが全国大会につながっていることが明確にイメージできて、それが潜在意識にも伝わります。
【POINT3】「ルーティンワーク」を身につける
イチロー選手は、バッターボックスでバットを構えるまでに、毎回同じ動作を繰り返します。いちいち意識してあの動作をしているのではなく、心を無にして自然の流れの中で繰り返しているのでしょう。そうすることで余計なことを考えずに打席に集中できるのです。
毎日の生活の中に、こうしたルーティンワークを取り入れると、スッと集中状態に入れるようになります。例えば、勉強前には「1回深呼吸をして書棚の一番左に並べてある数学の問題集を取る」「試験開始の合図が聞こえた瞬間、筆箱を開いて使い慣れた鉛筆を取り出す」など、何でも構いません。毎回徹底することで、潜在意識は素直に目標に向かって動き出すようになります。
【POINT4】「緊張」をプラスの力に変える
「緊張」に対してマイナスイメージをもつ人が多いのですが、これは緊張と失敗を結びつけて考えるからでしょう。確かに極度の緊張は失敗を招きますが、成功するためには適度の緊張が不可欠なのもまた事実です。大切なのは、緊張しないことではなく、緊張をコントロールすることです。
適度な緊張を保つためにはどうすればいいか。これは前述したようなイメージトレーニングやルーティンワークを繰り返すことです。経験を積むことで、「自分はできる」という正しいイメージが潜在意識に刷り込まれて、過度な緊張をしなくなるのです。
コツがつかめると、見違えるほど集中力を発揮できる
集中力はトレーニングを積み重ねるうちに、徐々にコントロールできるようになります。ある程度、経験を重ねて「コツ」のような感覚をつかめると、トレーニングを始める前と比べて、見違えるほど実力を発揮しやすくなるはずです。ご紹介したトレーニングは、どれも多くの時間を要するものではありませんから、ぜひ日常の中に取り入れてみてください。