習慣化するためには「脳」のクセを利用! 賢い勉強法とは?

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どうすれば勉強を習慣化し、また効率よく学習できるのでしょうか。
『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』(日経BP)の著者で、東北大学 加齢医学研究所 教授の瀧靖之先生に「脳のクセを生かした勉強法」について、お話を伺いました。

この記事のポイント

「脳」の現状維持バイアスを上手に使う

脳には「現状維持バイアス」というものがあり、新しいことは、反射的に避けようとします。これは、脳のエネルギー消費を抑えるために人間に備わっている機能と考えられています。「1日の行動のうち、約45%は習慣で成り立っている」という研究結果もあるのですが、私たちの行動の半数近くは、無意識で行っている習慣なのです。
反対に考えれば、いつも行っていることであれば、それは無意識であっても、反射的に行動できてしまうはずです。ですから、勉強を習慣化したいのであれば、まずはこの脳のクセを利用して、勉強することを「新しいこと」から「いつも行っていること」に変えてしまうとよいのです。
そうはいっても、無意識レベルに習慣化するというのは、なかなか難しいものですよね。

習慣化のコツは、「ハードルをぐんと下げること」

習慣化するためのコツは、まず「ハードルをぐんと下げること」だと思います。
最初から「1時間机に向かう」といった目標では、1日目はできたとしても、次の日にまた同じことをするのはハードルが高いでしょう。ですから、たとえば「5分」。それも難しければ、「机の前に座るだけ」でもいいと思います。極限までハードルを下げて、その代わり、「それだけは必ずやる」というものを決めます。そうすると、個人差はありますが、1週間もすれば、座ることが定着し始めます。そうなったら、その時間を5分、10分と少しずつ伸ばしていきます。
これも個人差はありますが、大体2か月ほどすれば、やらないと落ち着かなくなり、無意識に行えるようになっていきます。

最初は大変ですが、脳の現状維持バイアスを上手に使って、ゆっくり習慣化していくのがよいでしょう。また習慣化は、すでに習慣化されていることと組み合わせるとなお強固なものになる傾向があるので、たとえば「夕飯のあとに宿題」「お風呂のあとに暗記」など、上手に生活に組み込んでいくと、習慣化しやすいと思います。

効率よく勉強するための「ポモドーロ法」とは

机に向かう習慣がついたあとは、「ポモドーロ法」のようなテクニックを使うのもよいと思います。ポモドーロとは、イタリア語で「トマト」の意味です。1980年代にイタリア人のフランチェスコ・シリロさんが考案した時間管理のテクニックで、タイマーを使って25分の作業と5分の休憩を交互に挟んでいくという方法です。シリロさんが使っていたタイマーがトマトの形をしていたので、この名前が付いたと言われています(笑)。
この方法は、脳の仕組みから考えても理にかなっていて、集中と短時間の休息を繰り返すことで、記憶の定着を促進させます。私自身も学生時代にこの方法に近いやり方で受験勉強をしていました。今でも仕事や研究をする時には、この方法を使っています。

この集中する時間には個人差がありますが、人が集中できる時間は20~30分という場合が多く、そのあとは低下する傾向にあるので、長くやり続けるよりも、いったん25分と時間を区切ってやったほうが、結果的に効率がよいと思います。

ポモドーロ法と組み合わせればさらに効果的な「反復学習法」

ポモドーロ法で、「集中」と「休憩」をセットで繰り返すことが、脳の仕組みからいっても効率がよいと思われますが、さらに記憶を固定するためには、この集中する時間(25分)の使い方についてもコツがあります。

私たちが脳で記憶したものは、個人差はありますが、時間とともに「忘れていくもの」です。
とはいえ、せっかく勉強したからには、なるべく忘れたくないですよね。
そのためにこの25分のうち、最初の1~2分は前日やったことを見直す時間にします。ざっとでもいいので、前日の勉強をこの時間に振り返ることで、きゅっと思い出すことができます。さらにその前の1~2分を使って、2日前のこともやります。2日前、1日前、今日……と3回ぐらい繰り返すことで、記憶の定着がぐんと深まります。

そして、さらにおすすめなのは、最後の1~2分は明日のことを少しだけやる時間にします。最初にお話ししましたが、脳は「新しいこと」を反射的に避けようとするので、先に少しだけでも見ておくことで、次の日の心理的ハードルが下がり、ぐっと取りかかりやすくなります。

まとめると、最初は前日と前々日の復習をする。最後の1~2分は次の日の予習をする。この復習と予習を繰り返すことで、勉強はできるようになるのではないかと思います。

勉強を習慣化し、さらに効率的に勉強するために、まずは自分の「勉強法」を確立していくことがよいですね。

まとめ & 実践 TIPS

勉強を習慣化するためには、脳のクセを利用して、勉強を「いつものこと」に変えていくことが大事だとわかりました。また習慣化できたあとも、脳のクセを利用すれば、効率よく勉強ができそうです。

プロフィール


瀧靖之

東北大学 加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授
医師。医学博士。東北大学理学部の生物学科で、ヒトの血液の赤血球について研究している中で、研究だけでなく「世の中にもっと役立ちたい」と思い、受験勉強をし直して、理学部を卒業後、同大学医学部に再入学。卒業後、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。

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