「アクティブ・ラーニング」指導する教員の支援が課題に‐渡辺敦司‐

中央教育審議会で検討が始まった学習指導要領の改訂(2020<平成32>年度の小学校から順次、全面実施の見通し)で「アクティブ・ラーニング」(課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習)の導入が目玉の一つであることは、先の記事で紹介しました。グローバル化がますます進む21世紀に活躍できる子どもを育てるには是非とも必要な学習・指導方法だと思われますが、導入までのハードルは相当高そうです。指導要領上、各教科にどう位置付けるのかもそうですが、新しい指導要領に基づいた授業の抜本的改革を担う、教員の支援をどうするかといった問題もあります。

中央教育審議会の教員養成部会は先頃、「これからの学校教育を担う教員の在り方について」(外部のPDFにリンク)と題する報告をまとめました。2014(平成26)年7月に下村博文文部科学相から諮問のあった中高一貫教育制度に伴う教員免許制度の在り方について早急にまとめたものですが、この中でも、今後、教員養成から採用、研修を通じて、

(1)主体的・協働的に学ぶ授業を展開できる力
(2)各教科横断的な視野で指導できる力
(3)学校段階間の円滑な移行を実現する力

が必要だとしています。次期の指導要領では、こうした指導力をフル活用して授業に当たってもらうことが想定されていると見られます。指導要領の実施は5年以上も先の話ですが、大きな授業改革でもあり、研修などの充実は今から同時並行的に準備を進めておかないと、全面実施の初年度から教育効果を上げることは難しいでしょう。

ここで思い起こされるのが、経済協力開発機構(OECD)が2014(平成26)年6月に発表した「国際教員指導環境調査」(TALIS)(外部のPDFにリンク)の結果です。中学校教員を対象にした調査ですが、「教員としての私の役割は、生徒自身の探求を促すことである」「生徒は、問題に対する解決策を自ら見いだすことで、最も効果的に学習する」「生徒は、現実的な問題に対する解決策について、教員が解決策を教える前に、自分で考える機会が与えられるべきである」と、授業革新への意欲の高さは国際平均と同等以上に高くなっています。
しかし、それが実際にできているかというと、生徒が「少なくとも一週間を必要とする課題を行う」「少人数のグループで、問題や課題に対する共同の解決策を考え出す」「課題や学級での活動にICT(情報通信技術)を用いる」などの項目で、むしろ国際的に見て低いのが現状で、主体的な学びを引き出す授業にも自信は軒並み低くなっています。そうした原因の一つが、研修意欲は高いのに、「世界一」といわれる多忙さのため、研修を受けたくても受けられないことにあるのが、TALISの結果から明らかです。

現状でもそうなのですから、今後の指導要領で授業を抜本的に変えなければならないとしたら、すべての先生に計画的な研修を行い、じっくりと授業の方法を研究してもらう必要があります。こうしたことを視野に入れて2015(平成27)年度予算(外部のPDFにリンク)で文部科学省は10年計画で教員の増員を要求していますが、消費増税の先送りで政府全体の予算も厳しいなか、果たして実現するのかが注目されます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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